第51話問題発生

 

 撮影所に着くとスタッフの方々が慌ただしく動き回っていた。


「あの何かあったんですか……?」


「ちょっとこちらでトラブルがありましてマネージャーさん以外メンバーの方は昨日の室内で待っていてもらってもよろしいですか」


「それじゃあ久遠、皆を昨日の室内に連れて待っててくれ」


「はーい」


 久遠はアイセブンメンバー全員を連れて行く。


「それでなんのトラブルがあったんですか」


「実は昨日スタッフ全員で飲み会を行ったのですが……運が悪い事に監督がその飲み会の時に食べた牡蠣かきに当たったらしくて。今日の朝から病院に入院されたんですよ」


「それってめちゃくちゃ問題じゃ」


「そうなんですよ……!! 全く監督にも困ったものです」


「それでドラマ撮影の方は」


「一応監督不在ですけど監督から撮影の許可は頂いているので。本日予定していた撮影は行う予定なので準備を始めてもらって大丈夫です」


「にいに、にいに大変」


 焦った顔の久遠が小走りに駆け寄ってきた、すぐに久遠に付いて行きアイセブンメンバー達が集まっていた室内に入る。


「あ……彰人君」


 室内では亜梨沙姉ちゃんが着ていた私服が飲み物によって汚されていた。


「ごめんなさい私が飲もうとしたオレンジジュースを誤って零してしまって」


 近くには零れて減ったオレンジジュースのペットボトルが置かれていた。


「これはもうクリーニングに任せるしかありませんね」


 先に来ていた衣装スタッフの女性が服を拡げて色々試すが残念な返答が返ってきた。


「ごめんなさい亜梨沙さん」


「まあ事故なんだし仕方ないよ心愛ちゃん」


 亜梨沙姉ちゃんは泣いて謝る湊心愛の頭をよしよしと撫でる今の亜梨沙姉ちゃんの格好は誰から借りたのか赤色のジャージに着替え終わっていた。


「一応ドラマ撮影用にメンバー全員に衣装を用意していたのでそれに着替えてもらいますが。一旦こちらはクリーニングに出しますので預かってもよろしいでしょうか?」


「はい、大丈夫です」


「それでは急いで衣装も準備致しますのでお待ち下さい」


 衣装スタッフの女性は室内から出ていく。


「……あの心愛さん」


「なぁに久遠ちゃん」


 久遠はいきなり湊心愛に声をかける、久遠の顔は少し怒っているように見える。


「さっきの零し方わざと亜梨沙ちゃんに零れるように見えたのは気の所為でしょうか」


「えー……!! 久遠ちゃんまさか私がわざと亜梨沙さんの私服にオレンジジュースを零したと思ってるの。傷つくなぁ……」


「いや言わせてもらうと私もそう見えたわ」


 三島奏が久遠と湊心愛の会話に参加し久遠を援護する。


「あらら私が悪者みたいになっちゃいました。彰人さんは私がそんな事するなんて思ってませんよね」


「え……俺……?」


 急に話を振られる。しかしその場にいなかった俺にはどちらが正しいのか判断が難しい。


「湊さんも亜梨沙姉ちゃんに謝ったんだしこの話はもう終わりにしよう」


 これなら両者に尊重した返答だと思い答えた、しかし久遠は納得出来ない様子だ。


「むーーーー!!!!」

「にいになんて知らない……にいにの馬鹿ー!!!!!!!!」

 久遠は膨れっ面のまま室内から出ていく。


「おい久遠……!?」


「キャッ!?」


「すみません」


 先程室内から出ていった衣装スタッフの女性と衝突してしまう。


「いえ私の方こそ、こちらアイセブンメンバー全員の衣装になりますので」


「ありがとうございます。言ってくれたら手伝ったのに」


「それじゃあ今度から手伝って欲しい時はお願いしますね」


 二人で微笑み合う、衣装スタッフの女性の服の胸には加藤文香のネームプレートが吊り下げられていた。


「加藤さんって言うんですね」


「はいえっと確か城田彰人さんでしたよね」


「よく覚えてますね。まだ一、二回しか会ってないのに」


「アイセブンの代わりのマネージャーにドラマの出演も決まってましたからね必然的に覚えたんです。撮影の際はよろしくお願いしますね」


「こちらこそよろしくお願いします」


 加藤さんは室内からすぐに出ていく、しかし亜梨沙姉ちゃんがいきなり駆け寄ってきた。


「彰人君」

「亜梨沙姉ちゃん急に何……?」


 いきなり亜梨沙姉ちゃんの顔がずいっと寄ってきたので照れてしまいそっぽを向く。


「……ほ」

「……ほ?」


「他の女子と仲良くしてる所見るの嫌……」


 亜梨沙姉ちゃんはぎゅっと服の裾を掴み上目遣いで見つめてくる、まさか亜梨沙姉ちゃんがこんな露に嫉妬してると思ってもいなかった。


「俺が好きなのは亜梨沙姉ちゃんだけだよ」


 安心させるように亜梨沙姉ちゃんをぎゅっと胸で抱きしめる亜梨沙姉ちゃんもぎゅーっと抱きしめ返してきた。


「彰人君に包まれると安心するね」


 スーハーと亜梨沙姉ちゃんは匂いを嗅ぐ正直ちょっと気恥しいが亜梨沙姉ちゃんを安心させるには仕方ない事だ。


「んーん二人共そろそろ撮影の準備始めようか」


 完全にアイセブンメンバー達がいるのを忘れてしまっていた愛刀天花に注意され衣装スタッフの加藤さんが持ってきた撮影用の衣装に着替える。


「馬子にも衣装ね」


 着替えた俺を見て三島奏が答えた。

 俺も一応ドラマの撮影に参加するので着替えたがまさかこんな高そうなスーツを着ることになるとは。


「彰人君格好いいよ」


「ありがとう亜梨沙姉ちゃん……その亜梨沙姉ちゃんも可愛いよ」


 亜梨沙姉ちゃんに褒められる、亜梨沙姉ちゃんの格好も撮影用衣装に着替え終わっていたがなんというか可愛い……


「あ……ありがと彰人君」


 亜梨沙姉ちゃんも赤く照れた顔になり下に俯く。


「撮影準備出来ましたので移動お願いしまーす」


「あ……はい」


 室内にスタッフの方に声をかけられる。

 照れてる場合じゃない俺も自分の仕事をしないと。


「それじゃあ移動しましょうか」


 アイセブンメンバーを引き連れて室内から出て撮影用に作られたセットへと移動する。

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