第50話アイセブンメンバーにバレる
翌日の朝ホテルロビには既に何人かのアイセブンメンバーがロビーのソファに座って集合していた。
「おはよ彰人君……亜梨沙も一緒だったんだ?」
「偶然エレベーターで一緒になってね、彰人君」
「そうなんですよ」
「そう……?」
「それよりも久遠迷惑かけなかったりしませんでした」
「全然、それどころかいい話聞かせて貰ったよ」
「いい話」
「うー。にいにおはよう」
久遠がホテル受付横のトイレからフラフラ歩いて出てくると、こちらに駆け寄ってきた。
「どうした久遠、今にも倒れそうな雰囲気出てるぞ」
「愛刀天花が全然寝かせてくれなくて寝不足なの」
久遠は目をゴシゴシと擦る。
「寝不足ってお前。一体何時間話してたんですか」
「今から一時間前位かな」
「一時間前って天花さん殆ど寝てないんじゃ」
「大丈夫私ショートスリーパーだからいっつも大体二時間寝ればいい方なんだよ」
驚いてしまうショートスリーパーと呼ばれる人間が存在するのは知っていた。
だが聞いてくれ二時間寝ればいい方と愛刀天花は言ったのだ。
「天花さんいっつもどれくらいの睡眠時間を過ごしてるんですか」
「うーん一時間くらい……?」
この世は二十四時間に縛られているしかし愛刀天花はその内の二十三時間を過ごしている事になってしまう、普通ならありえない事だ。
「おはよう」
話してる間に伊藤愛美がロビーへと現れる。
「おはようございます。えっとこれで全員ですかね?」
ロビーには全員集合していたので、撮影所へと向かおうとしたのだが突然久遠が服の匂いを嗅ぎ出した。
「久遠……急にどうした」
「にいにから亜梨沙ちゃんと同じ香水の香りがする!!」
「亜梨沙ちゃん……?」
「久遠ちゃん、そんな訳ないよ……だって朝シャワー浴びたのに」
「久遠ちゃん……? 彰人君一体どういう事?
なんで二人共名前呼びになってるの……?それになんで彰人君から亜梨沙と同じ香水の香りがするのかな?」
まだ、まだ乗り切れるはず誤解を解こうと口にしようとした瞬間に久遠の言葉に阻まれた。
「あれにいに言ってなかったの私と亜梨沙ちゃんはいとこなんだよ」
「いとこ……亜梨沙そんな事一度も言ってなかったよね」
愛刀天花は隣に立つ亜梨沙姉ちゃんを睨む。
「別に天花さんやメンバーには関係ない事だったので黙っておきました」
「私はうすうす気付いてましたよ。同じ苗字で彰人さんと亜梨沙さんなんか距離感が近い感じしてたんで」
ソファに座りスマミフォンを弄っていた湊心愛がこちらの会話に割り込んできた。
「ねぇそれよりも撮影所に移動」
「それで二人がいとこ同士なのは分かったけど香水の件はどういう事……?」
愛刀天花のニッコリと微笑んだままの質問が怖い、ここは亜梨沙姉ちゃんと話を合わせて答えるしか。
「わ、私と彰人君昨日から付き合いだしたんです」
「へー」
その場にいた愛刀天花、久遠、湊心愛が同じタイミングで呟いた。
「にいに」
「彰人君」
「彰人さん」
「今日の撮影が終わったら話があるから」
全く同じ台詞を三人一緒に呟く、久遠は分かる家族で妹だからだ愛刀天花もアイセブンのリーダーとして心配しての事だろう。
だが湊心愛だけは分からなかった。
「……彰人さん」
立花波華が彰人達が話す後ろに三島奏と隣合って立っていた。
「それにしても亜梨沙さんがあんな男と付き合うなんて不思議よね波華」
「うん……奏ちゃんの言う通りだと思う……でも彰人さんならもっと他に相応しい人がいる気がする」
「波華がそんな事言うなんて珍しいね」
「そう……かな」
立花波華は三島奏の疑問に首を傾げて答えた
「二人共撮影所に移動するよー」
愛刀天花が三島奏、立花波華に声をかける。
三島奏は気付いてすぐに移動しようとしていた彰人達を追いかけるが、立花波華はその場に立ち止まりホテル床に落ちていたスマミフォンを拾う。
「これ亜梨沙さんのスマミフォン……?」
スマミフォンカバーに見覚えがある立花波華はそのスマミフォンの持ち主が城田亜梨沙の物だと気付いた、きっと移動する際に落としたのだろう。
普通の人なら落としましたよと伝え返すだろう、立花波華も落とし物を見つけたら交番に届ける。
だが今の立花波華はいつもと違う様子だ。
立花波華は拾った城田亜梨沙のスマミフォンを鞄にそっとしまい、移動しだした彰人達を追いかける。
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