第53話城田彰人は拉致監禁される

 

 気付いた時には椅子に縛りつけられていた周りをよく見るがどこかの学校の教室のようだ。

 だが学校と言ってももう使っている様子は無く埃やクモの巣などでいっぱいである。


 ガラッと教室の扉が勢いよく開き紙袋で顔を隠した人物が現れる。


 そいつが何者か分からず黙っていた。


「城田彰人……」


 どうやら俺の名前を知っているらしい、だが声は変えている為男か女かも分からないけど服の特徴から女である事は確かであろう。


「これ拉致監禁だよな」


 何も喋らずに一体何が目的かも分からないするといきなり目の前に机と椅子を用意して座る。

 床に置かれていた鞄から箱のような物を取り出す。


「まさか」


 こういう映画を見ると脅す時に爆弾なんかを用意する犯人がいるがまさか……


「……は? 弁当」


 綺麗に箱の蓋を開けるとそこには学校のお昼でよく見る弁当のおかずやご飯が敷き詰められていた。


 いきなりこちらに近付くと腕に鎖を嵌めて箸を差し出してくる。


「た……食べて……」


「ええ……」


 いきなりだった為に状況が掴めない、しかしここで反抗などすれば何をされるか分かったもんじゃない。大人しく従い差し出された箸を受け取りおかずを口に運ぶ。


「うっま」


 口に運んだおかずは生まれて初めて一番うまいと錯覚する程のうまさであった。ダメだ食べる速度が尋常じゃなく弁当箱の中身は数分にして全てなくなってしまった。


「お……美味しかった?」


 やべぇ……てか拉致監禁してる奴がだした弁当食べるとか俺普通じゃねぇだろ。普通何か毒とか怪しいもん入ってるか確認する所だろ。


「想像以上のうまさでございました」


 一応味の感想を言うといきなり腕に嵌めてた鎖を外される。次に出てきたのはリードが長い人間用の首輪を首に嵌められる。


「立って」


「いたたた……!! 分かった分かったから。もうちょっと優しく引っ張ってくれ」


「ごめんなさい……」


 そんな正直に謝られると俺が悪者みたいになってしまうじゃないか。


「ここは」


 リードに繋がった首輪を引っ張られ連れて来られた場所は学校の外であった。やっぱり見た目からもうこの学校は廃校したのだろう。

 だが真新しい施設が学校の外に建設されていた。


「入って」


 そのまま施設の扉を開けて入るとそこに広がっていたのは。


「露天風呂?」


 どうやらここは風呂場らしい、そういえば廃校でも宿泊できる施設などがあると聞いた事があった。もしかしたらここはそういう所なのかもしれない。


「脱がすからバンザイして……?」


 さも当然のように言われる。いくらなんでも脱いで裸になるのが恥ずかしいので首を横に振ってそれを拒否する。


「拒否権なんてないの早く脱いで」


 いきなりスタンガンを取り出した犯人に逆らう事ができず服を脱ぐ。


「下はいい……!! これあっち向いてるから」


 差し出されたのは男性用の水着だった。犯人がこちらを見ていない間に周りを探るが武器になりそうな物はない。だが露天風呂に出ればいくらでも逃げる隙はあるはずだ。


「それじゃあ出て」


 露天風呂がある屋外へと出る夏間近と言ってもやはり夜はまだ肌寒いのだが、今回は別だ犯人と片方の手で手錠に繋がれ犯人も水着を着用。そして恋人の如く腕を組み密着してきた。


「背中おっきい」


 背中をベタベタと触ってくる。


「こっち」


 と思ったらいきなりリードを引っ張って方向を変えた。


「座って」


 用意されていたバスチェアに座らされ片方の手を手錠の鍵を使い外す。

 それは当然俺の繋がった手錠ではなく犯人の片方の手に決まっていた。


 後ろに手を組まされかちゃかちゃと後ろから手錠を繋ぎ直す。その後何か後ろで用意し始めると頭をわしゃわしゃと掻き出す。泡のような感じがしてきっと髪を洗ってくれているのだろう。


「流すから下向いてて」


 ちゃんと気遣いもしてくれてシャワーを流して頭の泡を洗い落としてくれる。


「次は体洗うから」


 髪を洗い終わった後すぐに体洗いを始めるタオルなどに泡をつけゴシゴシと背中を洗ってくれる。


「一つ気になってるんだけどなんで紙袋着けたままなの」


 体洗いも終わり犯人とまた片方の手を手錠で繋がり湯船に浸かる。露天風呂の湯船に浸かっている間に質問した。普通風呂に入る時には外す紙袋だが犯人はずっと着けたままだったのだ。


 犯人は答えずに場は沈黙になる。


 その後一切会話する事なく、犯人に露天風呂から連れ出され。バスタオルで体を拭かれ用意された白の半袖を下に青色のジャージを上に着て露天風呂の施設から外へと移動する。

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