第40話椎名胡桃は彰人ともう一度知り合う

 

 中学二年になって半年夏が過ぎて秋から冬に向けて寒くなってきた時期。


「お姉さん引っ越すんですか!?」


 お姉さんに誘われ駅前の喫茶店に二人でお茶しに来た。


「そう東京の国立大学から推薦状もらってね、その国立大学に通う為に」


 お姉さんは注文したブラックコーヒーを一口飲み話を再開する。


「まぁそれでね舞亜も一緒の国立大学に通うことになってね」


 天神舞亜、あの時会話して以降連絡もないし、お姉さんを事故に遭わせて殺すと言っていたのは嘘なのだろうか。


「胡桃ちゃん、聞いてる……?」


「はい、ちゃんと聞いてますよ。それで彰人君はどう言ってるんですか」


「彰人……? 彰人はまぁちょっと反抗期って所かな」


 お姉さんは少し顔が落ち込み気味になる、反抗期って事は彰人君はお姉さんが東京に引っ越す事は反対なのだろう。


「ちょっとごめんね」


 お姉さんの携帯電話が喫茶店に鳴り響く、お姉さんは耳に当て誰かと会話している。


「久遠、え!? もう時間。分かったすぐ行くよ」


 お姉さんは久遠ちゃんの名前を呼ぶ。


「ごめんね胡桃ちゃん、今日久遠と彰人の誕生日プレゼント買いに出かける約束しててさ。また今度お話しよ」


「彰人君の誕生日ですか?」


「あれ胡桃ちゃん知らなかったっけ」


「初耳です」


「そっかじゃあ今度胡桃ちゃんを家に招待してあげるよ。彰人も胡桃ちゃんに久しぶりに会ったら喜ぶと思うし」


 彰人君とはかれこれ四年以上会っていない、性格にいえば私は彰人君の後を付けて隠し撮り写真を撮ったり日記を書いたりしているので隠れて彰人君を観察はしていた。


「それじゃあね胡桃ちゃーん」


 お姉さんとは喫茶店で別れた、去り際に名前を呼び大きく手を振られる、この日が生きたお姉さんを最後に見た日であった。


「本当にやったんですね」


 バンと机を叩いて目の前の座布団に座る天神舞亜を睨む、睨んでいるのにも関わらず優雅にお茶を飲む天神舞亜。


「胡桃ちゃんの方こそなんで冬華に話さなかったの。胡桃ちゃんが話していれば冬華も生きてたし、なんなら私から遠ざける事もできたでしょ」


「それは……」


「胡桃ちゃんも冬華に消えて欲しかったんでしょ」


「ち、ちがっ……」


「そうだ、冬華を消してから彰人君家に帰ってないみたいだけど胡桃ちゃん知らない」


「知りません……!! 失礼します」


 天神舞亜の部屋から立ち去る。


「お嬢さん」


 腕を掴まれ振り返る、あの時の強面のヤクザと再会する。


「今日はよく冷える送っていってやるよ」


 前みたいにリムジンで家まで送ってくれる途中、駅前のゲームセンターを通り過ぎようとした時、彰人君を見つけた。


「止めてください」


 リムジンは急停車、幸いここは一方通行の道に加えて後ろから他の車や飛び出してくる人などもいなかった為事故にはならなかった。


「おい、お嬢さんどこ行くんだ!?」


 扉を開けてゲームセンターの中に入る、彰人君を見かけた場所に行くと、彰人君は無感情になってアーケードゲームをプレイしていた。


 そのアーケードゲームは私が彰人君と遊んでいた対戦格闘ゲームのアーケード版であった。


「あ、あ、彰人君……?」


 彰人君は聞こえてないのか、私の声に振り向いてくれない。


「彰人君!!」


「びっくりした……誰?」


 大きな声で呼んでやっと気付いてくれたが彰人君は私の事を忘れていた。


「私の事忘れちゃったの……?」


「えっとすまん知り合いだったか、ちょっと最近ごたついて記憶が曖昧で」


「わ、私は」


「おう、お前ようやく見つけたぞ」


 話しかけようとした時邪魔してきた人物がいた、その人達は近所の不良高校の生徒だった。


「ちょっとツラ貸してもらおうか」


 彰人君は何も言わずにその人達に付いていく、隠れて付いていくと、ゲームセンターの横の路地で殴り合っていた、不良高校の生徒は彰人君に手も足も出ずに倒れた、彰人君は何もせずにその場から立ち去って行く。


 私はある考えを思いついてその倒れた不良高校の生徒に駆け寄る。


「なんだーお前? 俺達今機嫌悪いからどっか行け」


「ちょっとお話したいなって」


 彰人君が私を忘れたならまた初めから知り合えばいい、そう思って私は芝居をうって彰人君と知り合いになった。

だが彰人君呼びは止めた、私の事を思い出したら呼ぼうと思ったからだ。

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