第39話椎名胡桃は天神舞亜から聞かされる
彰人君の事が好きだって気付いた、今頃気付いても無駄な事なのに。
ウィンドウショッピングを止め家に帰宅する。
帰宅した時家の電話が鳴り響いた、お母さんとお姉ちゃんは出かけていた為私は仕方なく家の電話の受話器を取る。
「もしもし椎名ですけど……?」
「胡桃ちゃん……」
声を聞いただけで分かった、この声は天神舞亜だった。
「ちょっと一緒にお話しようよ」
天神舞亜は場所を指定すると電話を切る。
指定された場所まで来ると、そこは天神組と書かれていた。
私は入っていいかどうか困惑していると天神組の門が自動的に開いた。
「おお!! これがお嬢のお友達ですかい」
「冬華さん以外にお友達がいて俺達は嬉しいです」
それはドラマの世界でしか見たことない怖い人が一杯いた、天神舞亜の家がまさかヤクザだったのは驚きだった。
「ああもううるさい!! 胡桃ちゃんようこそ我が家へ」
「お嬢さんお茶のお代りは?」
天神舞亜の部屋っぽい所へ案内され強面のヤクザの一人にお茶のお代りを頼んでもいないのに勝手に注がれる。
「ねぇそろそろ出ていってくれない……?大事な話したいんだけど」
「こりゃ失礼しました、それじゃあ俺は失礼しやす」
そう言って部屋の襖を開けて、出ていく強面のヤクザ。
部屋の座布団に座っていた私は天神舞亜から話しかけられるのを待つ。
「まぁ胡桃ちゃんに話したかったのは彰人君と冬華についてだけど」
「私、冬華を事故に遭わせて殺そうって考えてるんだよね」
天神舞亜は正面に座る私に対して微笑んだ表情で異常な言葉を述べた。
「まさか冬華と彰人君が付き合うなんて予想外だったけど、さすがに彰人君と付き合うのは私としては許せなかったかな」
「それを私に話して何になるんですか」
「ん……? だって胡桃ちゃん彰人君が好きだって気付いたでしょ」
言われた言葉にドキッとする。
「……どうして」
「だってあの時の胡桃ちゃん、凄く悲しそうな目をしてたからさ、私が冬華に聞かされた時みたいに」
「私前に言ったでしょ、私と胡桃ちゃんは似てるって」
「それは答えたはずです全然似てないって」
「素直じゃないね胡桃ちゃんも」
「これなーんだ」
天神舞亜が机にばら撒いたのは、私が大切にしていた彰人君の隠し撮り写真と日記帳であった。
「どうやって」
「胡桃ちゃんの家の誰もいない時を狙ったら簡単に侵入できちゃった。駄目だよ大切な物は見える所におかず、ちゃんと隠しておかないとそれに」
「これで私と似てないなんて嘘じゃない。胡桃ちゃんも私と同じ
「違う私とあなたは似てなんかいない……!!」
「本当は胡桃ちゃんも冬華が消えた方がいいって思ってるでしょ」
「違う…違う…違う…違う…違う…違う…」
私は頭を抑えてそう答える。
「時間あげるよ胡桃ちゃん。この事は冬華に話しても話さくてもどっちでも胡桃ちゃんの好きな方にして。まぁ胡桃ちゃんが冬華に話す事なんてないと私は思うけどね」
彰人君の隠し撮り写真と日記帳を鞄にしまって襖を開けて部屋から出ていこうとする。
襖を開けるとさっき部屋から出ていった強面のヤクザが聞き耳を立てていた。
「もう遅くなるしこの子の事送っていってあげて」
天神舞亜の気遣いで私は一生乗ることがないだろうリムジンに乗せてもらい、家へと送ってもらった。
「お嬢さん、また何時でも暇な時に組に来てくれよな」
運転手席からリムジンの窓を開けて、強面のヤクザに言われる。
「送ってくれて助かりました。天神舞亜にもそう伝えてください」
強面のヤクザに伝えるとリムジンはそのまま走り出す。
家の玄関を通り、自分の部屋に入って、ベッドに横になる、考えるのは先程天神舞亜に伝えられた事。
「お姉さんに電話しなきゃ」
家の電話からお姉さんの携帯にかけようと番号を押す、数回のコール音の後電話が繋がった。
「お姉さん」
「胡桃ちゃん……? 電話してくるなんてどうしたの」
「そのお姉さんに伝えたい事があって」
「伝えたい事」
「冬華姉さんそろそろ出かけようぜ」
お姉さんの携帯から彰人君の声が聞こえてきた。
「ごめん彰人ちょっと待って……それで胡桃ちゃん私に伝えたい事ってなに」
「その改めておめでとうございますって伝えたくてそれだけです」
「ありがとね胡桃ちゃん」
お姉さんの声は嬉しそうだった電話を切り、私は部屋へと戻ると、着ていた白のワンピースを脱ぎハサミで切った。
この時の私は多分天神舞亜似ていた、だってお姉さんから贈られた、白のワンピースを着れないようにボロボロにしたんだから。
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