第38話椎名胡桃と彰人は疎遠になる
彰人君はあの日から公園に来なくなった、私は心配で家の電話からお姉さんの携帯に電話をかけた。
「そう彰人がね、教えてくれてありがとね胡桃ちゃん」
私は彰人君から君には関係ないと言われたがお姉さんに彰人君から教えてもらった天神舞亜について教えた。
「これは彰人君の為…これは彰人君の為…これは彰人君の為…」
私は自分自身の心に言いかける、これは本当に彰人君の為なのかと私は内心で不安だった。
翌日彰人君は公園にやってきてくれたのだが、その時隣にはお姉さんが立っていた。
「彰人君よかった最近会えなかったから心配して」
「何勝手に冬華姉さんに話してんだよ!!」
「……え」
私は彰人君に怒鳴られた、彰人君の顔はいつも遊ぶときみたいに楽しそうじゃなくて怒っている顔になっていた。
どうやら私の不安は当たっていたらしい、私が彰人君の為と思ってした行動は結果的に彰人君を怒らせてしまった。
「関係ないって言ったのに……」
「彰人……!! 胡桃ちゃんも彰人の為を思って私に知らせてくれたのよ。なのにその言い草はないじゃない」
「ごめんなさい彰人君、私…私…」
お姉さんが私を庇ってくれている、私は涙を流して彰人君に謝ると公園から走り去る。
彰人君に嫌われた、彰人君に嫌われた、彰人君に嫌われた私は走る中でそんな事を考えていた。
「胡桃ちゃん待って!!」
お姉さんが、公園から追いかけてきて、私に追いついた時腕を掴まれた。
「お姉さん」
「彰人は怒ったけど私は胡桃ちゃんに感謝してるからね、それだけは知っておいて」
お姉さんに伝えられると、その場で別れた。
私は次の日から公園に行くのを止めて、学校でも彰人君に会わないようにした嫌われた私には彰人君と会う資格がないと思ったからだ。
それから彰人君は小学校を卒業して近所の中学校へと通い出した事をお姉さんに教えてもらった。
彰人君とは疎遠になってしまったがお姉さんとはたまにやり取りで連絡を取り合ったり、ショッピングなどに一緒に行くようになっていた。
お姉さんに勉強を教えてもらい名門中学に合格した私は中学生になってお姉さんにお礼として贈られた白のワンピースを着て、駅前に行く。
一人でショッピングモールで最新ブランドの服を眺めていた時だった、私は一人の女性を見かけ追いかけた。
「お姉さん……!!」
「あれ胡桃ちゃん?」
お姉さんの隣には天神舞亜が立っていた。
あれからお姉さんと仲が悪くなる事はなく、天神舞亜が謝って、もう彰人君にちょっかいはださないと約束して収まったらしい。
「……天神舞亜さんも一緒だったんですね」
「そう、そう。今日はね珍しく舞亜からショッピングしよって誘ってくれたのよ。なんでもプレゼントしてくれるらしくて」
お姉さんは相当嬉しいのか、私に教えてきた。
「そりゃあんな事聞かされたらね、でもまさか彰人君と冬華が付き合うとはね」
天神舞亜の一言に私は驚かされた。
「彰人君とお姉さんが付き合う……?」
何を言っているんだ、彰人君とお姉さんは姉弟の筈だ付き合える訳がない。
「胡桃ちゃんには言ってなかったっけ? 私と彰人と久遠って腹違いの姉弟なんだよ。私が生まれた時に母親が死んじゃって今のお母さんは父さんが再婚してできた義理の母親なんだよね。その再婚した後に彰人と久遠が生まれたって訳」
「だけど付き合うっていうのは正直どうかと、血は繋がってますよね」
「だから両親には内緒で付き合ってるの」
お姉さんは人差し指を鼻に当て内緒の仕草をしてきた。
「お姉さんと彰人君が付き合う……」
正直彰人君とは疎遠になっていたので、最初は素直に喜べている自分がいた。
「おめでとうございますお姉さん」
私は笑顔でお姉さんに祝福の言葉を述べた。
「ありがとね胡桃ちゃん」
「冬華そろそろ行かないと欲しがってたバッグの発売今日でしょ売り切れちゃうんじゃない」
「そうだね、また今度ゆっくり話そうね胡桃ちゃん」
「はい、そうですね」
お姉さんは天神舞亜と共にエスカレーターで上の階へと上っていく。
「彰人君とお姉さんが腹違いだったのも驚きだけど、まさか付き合っちゃうなんて」
もう私には関係ない話なのは確かだ、彰人君と疎遠になってもう三年以上会話もしてないし会ってもいない、だから別に気にする必要もないのだが。
「なんでこんなに胸が痛むの……?」
彰人君がお姉さんと付き合い始めたと知ってから。
ーーズキズキと胸が痛くなってきたーー
前にもこの胸が痛くなる事があった。
確かその時は彰人君に付き合ってる女の子がいたと知ってからだ、じゃああの時の子とは別れたって事かな?
そう言えば手紙を送っても返ってこないって言って気がする。
だったら自然消滅で別れたって事だ。
「彰人君の事を考えると胸が痛い。痛いよ彰人君……」
私は彰人君の名を呼ぶ。
「彰人君…彰人君…彰人君…彰人君…彰人君…彰人君…彰人君」
と呼び続け私は遂に気付いた。
……私は彰人君の事が好きなのだと。
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