第25話幕間椎名胡桃の本性
センパイの家を出て数分歩いていると、隣に目をやる、そこには私の憧れとも言うべき愛刀天花が私と一緒に隣を歩いていた。
今では人気があるアイセブンだが中学の当初は人気があまりなかった、だけど私は当初からアイセブンのファンであり中でもセンターを勤めている愛刀天花は私に勇気をくれた人でもある。
「何かあった? ずっと私の方を見てるけど」
「あの愛刀さんは昔ラジオで言った事覚えてますか?」
「ラジオ? 今はやってないけど昔のアイセブン~七人の光ってラジオの事」
「はい、それです。それで愛刀さんに好きな人がいたらどんなアプローチをしますかみたいな質問があったんですけど」
「ああ、あれね確か、好きな人には嫌われたくないから、気付かれずに監視するって答えた気がするけど。その時は全員に引かれた気がしたけど」
「はい、実は愛刀さんの言葉通り、好きな人を監視してたら、私でも仲良くなる事ができて感謝してるんです」
「ふぅんそう、ならよかったわね」
「はい、愛刀さんは私の憧れです。この私服も愛刀さんが着てるブランド物を雑誌で見つけて買ったんです」
「何か見覚えがあると思った、そう。だったらその好きな人とも恋人同士になれる努力をしなきゃね」
「はい、いつか絶対センパイを私に振り向かせます」
隣を歩いていた、愛刀天花さんの歩が突然止まった。
「あなたが好きな人って彰人君……?」
「はい、本当は遠くから監視してるつもりだったんですけど我慢できなくて、つい話しかけちゃって」
愛刀天花さんは考える仕草をする。
「実は彰人君、勉強会が始まってすぐに、最近後輩がウザイって愚痴零してたんだけど」
「え……?」
私は驚いて声を上げてしまった嘘センパイが私をウザイって言った。
「まさかあなたな訳ないわよね」
「ごめんなさい、私の考え過ぎかもしれないわね」
歩き出した愛刀天花さんに置いていかれないように隣を歩くが、私はさっきの愛刀天花さんの言葉が頭から離れない。
「折角知り合ったんだし、連絡先でも交換しましょうか」
近くの駅前まで来て、愛刀天花さんが言い出した、それは私にとっては嬉しいもので、鞄から携帯を取り出し、愛刀天花さんはスマミフォンを取り出した、連絡先を共に交換して、愛刀天花さんは鞄から何かを取り出した。
「これさっきのお詫びになるか分からないけど、今度行われるLIVEのチケット、一応最前列だから間近で見られるの」
「ありがとうございます」
二枚のチケットを愛刀天花さんから受け取った、さっきまでの私なら物凄く嬉しくて喜んだが、センパイの事で頭が一杯であり、喜ぶ事が出来なかった。
「それじゃあまた明日勉強会でね」
愛刀天花さんは私に手を振り、駅の改札にIKOKKAをタッチして階段を上ろうとした所。
愛刀天花さんに気付いた人がいて話しかけられていたが、私は駅前から離れゲームセンターへと辿り着いた。
「いたいた」
格ゲーをやっていた高校生の不良集団を見つけ話しかけようとする。
「ちょっといい?」
「ああん!!ボスは今ちょっと忙しいんだ、女子中学生と遊ぶ暇なんてないんだよ」
下っ端らしき不良に話しかけるが取り合って貰えず、私は無視して格ゲーをしていた高校生の不良のボスの背中を蹴る。
「何だお前か、今いいとこなんだ。それにお前と関わるとロクな事がねぇ」
私の話を聞く気がないのか高校生の不良のボスは格ゲーの対戦を続ける。
「今話を聞けばあなたの彼女に危害を加えずに済むのに」
「……ちっ」
密かに耳打ちすると、格ゲーを辞めて、話を聞く気になったらしい。
「まあこれはあなたにとってもいいかもしれない話だから」
「それで今度はなんだ言っとくが、もうあんな男と関わる気はないぞ」
「実はちょっと攫って欲しい女がいて」
「攫って欲しい女?」
「はい、この女最近センパイの周りをうろちょろしてるのでそろそろ邪魔かなって思って。この前もこの女が現れなければ、センパイが事故に遭う事も無かったなって思ったので」
「ふぅん、攫って何すればいいんだ」
「別にそれは任せます、一つ言えるのは、その女御嬢財閥の娘らしいので、身代金とか貰えるかも」
「分かった受けてやる」
「前みたいに警察に捕まったりしても自白なんてしないでね。もし私が黒幕なんて言っても信じないと思うけど」
少し半笑いを浮かべた後、不良集団の中心から出て、ゲームセンターを出る。
「センパイが私の事をウザイって話、もし本当だったとしたら嫌だな……折角センパイと連絡先まで交換して、デートの約束まで取り付けたのに」
今電話して聞き出す事もできるが、もし本当にウザイなんて言われたら、私はきっと昔のようにセンパイを傷つけてしまう。
「胡桃ー」
ゲームセンターを出てすぐ、私の名前を呼ぶ声がして振り返る。
「お姉ちゃん……」
「格ゲーやってたら、胡桃の姿が見えたから追いかけてきたけど、こんな時間に胡桃がゲーセン来るなんて珍しいね」
「お姉ちゃんの方こそもう夜遅いよ、お母さんも心配しちゃうよ」
「あの人の事はいいの、でも胡桃を心配させちゃうのもあれだし一緒に帰ろうか」
私はお姉ちゃんと一緒に手を繋ぎ、家に帰る、部屋に入ると部屋中センパイの隠し撮り写真で埋めつくされている。
「センパイ、きっとセンパイが私の事ウザイって言ったのは嘘だって分かってます。だってあの人センパイを見る目が雌の顔になってましたもん」
センパイの家で食べた夕飯の時にセンパイに向ける顔を思い出して、帰り際にあの考える仕草、きっと私に嘘をついたんだ。
「今度のデート、あの人のLIVEにセンパイと行って。センパイは私の物だって見せつければいいんだ」
鞄から今日貰った、LIVEのチケットを取り出し、日付を見る、昨日センパイと約束した日付の夜にLIVEが行われる。
「善は急げって言うしね」
携帯を取り出して、センパイの電話に繋ぐ。
「あっ、もしもしセンパイですか? 今度のデートですけど、デートに行きたい場所、私が決めてもいいですか。はい…はい…ありがとうございます!! それじゃあ時間は朝九時にセンパイの家に行きますんで、ちゃんと覚えててくださいね」
センパイとの通話が終わる、私は通話が終わるとそのままベッドに横になって寝ようとするが、起き上がり、ノートを開く。
「今日の日記忘れてた」
私は一日に一度センパイとの出来事をノートに書き写している、それは小学校の頃にまで遡って、もう既にノートは十冊以上書き写していた。
「今日の出来事はこれぐらいかな」
ノートを書き終わり、私はお風呂に入って、ベッドに横になり今度こそ寝ようとするが寝る前に、センパイの写真にキスする
「おやすみなさいセンパイ」
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