第16話林間学校の始まり……

 

「よーし、まずはテント設置から取り掛かれ。夕飯担当は頼んだ食材はすぐに担任から受け取るように」


 目的地である内河ハイキング場に着くと、俺達は学年主任担任の下、やる事を聞いた。


 翔也は夕飯担当なので、このまま食材を受け取り、夕飯を作る為、俺達とは別行動だ。


 篠崎雪泉と合流して、テント設置に必要な材料を篠崎雪泉と共に受け取りにいく。


「えーと女子一人に男子二人の生徒か、それじゃあテント一つだな」


 どうやら人数が少ない俺達の班はテント一つしか貰えないらしい。


「あの、さすがに女子一人を男子二人がいる。テントに寝させるのはどうかと……」


「文句は受け付けない、はい次」


 仕方なく貰ったテント一つを篠崎雪泉と共に張る。


「そっち支えて」


 篠崎雪泉の指揮の下、テントを張るのは簡単に終わった、中に入ると、意外に四人ぐらい余裕で寝れるスペースのあるテントだった。


「翔也、調子どうだ?」


 篠崎雪泉に翔也の様子を見に行ってきてと言われたので、見に来ると、翔也は死にそうな目をしていた。


「彰人ー!!」


「どうした!?」


「ご飯炊くの失敗した」


 翔也に見せられた飯盒の中はまさに黒焦げだった。


「あーこりゃもう無理だな。失敗したのはこれだけか?」


「ああ最初に作ったそれだけだ、先生に教えてもらって二つは上手くいったんだ」


「仕方ない、俺がこれもらうよ」


「いいのか正直食べてもいいか分からない位だけど?」


「食べれなかったらルーだけにするさ」


 翔也の前にある鍋の中身には既に作り終えたシーフドカレーがあった。


「悪いな彰人」


「何初めは誰でも失敗するだろ、お前が一生懸命作ったのにお前に失敗したやつ食わす訳ないだろ」


「……ははサンキュ」


 全学年の班がテントを張り夕飯の準備が終わった頃に、また学年主任と先生達の前に集合した。


「よーし皆ご苦労、各自夕飯を取ったあと、自由時間だが、あまりこのハイキング場から離れるな。一応風呂の時間は決まっている通り、二年から順に行う。もしなにか合ったら俺か担任に話をするように、それじゃあ解散」


 学年主任の話が終わり、俺と翔也と篠崎雪泉は班で一緒に座り。


 翔也が作った、シーフドカレーを食べた、翔也が飯盒に失敗し黒焦げになったご飯は苦かった。


「翔也何してんだ風呂行こうぜ」


 俺達一年の風呂の順番がきたのに、翔也は一向に準備を進める気がなかった。


「悪ぃ彰人、ちょっと気分が悪くなって先に行っといてくれ」


「大丈夫か? 無理すんなよ」


 俺は風呂道具一式を持ちテントを出た、一応担任に翔也の具合を話して、俺はハイキング場にある風呂場に向かう。


 俺よりも先に入っていた、同学年の男子生徒達が風呂には入らず、何かをずっと見つめていた。


「何してんだあいつら?」


 俺はクラスメイトの男子生徒を見つけ、何をしているか聞くと。


「女子風呂覗くんだと、この壁の先が女子風呂だって気付いた先輩に教えてもらったんだと」


「ふーん青春だねぇ」


 俺は別に女子風呂を覗くつもりはない、そんな事をしてもしバレたら面倒な事になるからだ。


 さっさと上がるか。


 共犯にされたくないし、翔也の事も気になるからな。


 体を洗って、温まるまで風呂には入らず、さっと風呂場から出た。


「いやぁぁぁぁ!! 何あんた達覗いてんの」


 脱衣所で女子の悲鳴が聞こえた、やっぱりバレたか……


 男の先生と学年主任の先生が悲鳴を聞き脱衣所に入り、風呂場まで急ぐ、俺は何事もなくすれ違い、風呂場から退散した。


「翔也になんか冷たい飲み物でも買っててやるか」


 ちょうど自販機を見つけ、翔也の為に冷たいスポドリを買ってやった。


「あれ、あなたこの前の?」


 スポドリを取ろうとした時声をかけられた。


 横を見るとこの前購買の売店で顔を合わせた、愛刀天花が自販機横のベンチで座っていた。


「あ……どうも」


 俺は頭を少し下げて挨拶をする。


「お風呂上がり? 何か悲鳴が聞こえたけど」


「あー男子生徒が女子風呂を覗こうとしてバレたみたいです」


「ふーん君はしなかったんだ」


「だってバレたら面倒でしょう。それに友達が具合悪いみたいなんで早く上がって様子見に行かないと」


「友達の心配までするなんて、結構優しいね」


「そんな事ないですよ、それでそちらは誰か出るのを待ってるんですか」


「うん友達をね」


 この時間は風呂は一年生だけだが、一年生にも友達がいるんだな。


「それじゃあ俺行きますね」


「待って折角だし連絡先交換しよ」


「え!?」


 正直思いもしなかった言葉に驚く、確か愛刀天花はアイドルで女優も兼業する有名人だ。


 そんな人と連絡先を交換するなんて誰が想像するだろう。


「はいありがと、またね彰人君」


 携帯の連絡先交換を交換した、俺名前教えて無いよな。


 だが愛刀天花はもうベンチに座っておらず姿を消していた、もしかしたら友達が出るのを待てずに風呂場に入って行ったのかもしれない、俺は歩き出しテントに戻る。


「おーい城田」


 テントに入ろうとした所を担任に呼び止められた。


「なんですか?」


「実はな田澤だがどうやら風邪を引いていたらしい、家を出る時も熱を出していたと親御さんに聞いた。どうやら無理してここまで来たようだな。それで田澤は今から学年主任が家まで送り届けてくれるらしいが、一応お前達のテントに田澤の風邪がうつっていかもしれんから、今日は別のテントで寝てもらう。それと保険医の先生に田澤の風邪がうつってないか診てもらうから付いてこい」


 担任に先生達が泊まるコテージまで連れられ、保険医の先生に診てもらう。


「うん、どうやらうつってはないみたい、でもこの薬を飲んでおいて、万が一があるから」


 保険医の先生から市販の風邪薬を手渡される、再度担任に連れられるまま、俺が着いたのは二年生が集まっているテントだった。


「ここが今日お前が世話になるテントだ、入るぞ」


 担任と共にテントに入ると、愛刀天花がテントで横になっていた。


「悪いな、折角の一人テントだったのに」


「問題ないですよ」


「もう一人の女子生徒は女性の先生が泊まるコテージで引き取るから、城田テントで寝る事を了承してくれたんだ。問題なんて起こすなよ」


「起こす訳ないでしょ!!」


 担任に釘を刺される、担任がテントから出ていき愛刀天花と二人きりになる。


 「あの?」


 「そっちで寝てくれればいいから、それじゃあおやすみ」


 なんでテントで寝かしてくれるのか理由が気になり聞き出そうとしたが、もう夜も遅い時間なので仕方ない。


 また明日にでも聞こうと、今日はテントにあった寝袋を借りて、夜を過ごした。

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