第15話城田久遠の変貌
教室で速攻焼きそばパンを食べる、ギリギリ授業開始までに食べ終わる事ができた。
「一気に食べるとお腹に悪いよ」
篠崎雪泉は俺が焼きそばパンを食べていた所を目撃して注意してくる、翔也と違ってキレていない。
「あの、なんで俺と翔也でそんなに態度が違うの」
「別にあいつはイラつかせるけど、彰人君にはイラつかないからそれだけだよ」
また俺の事を彰人君と呼んできた。
「気になってたんだけど、俺の事彰人君って呼んでるよね」
「ごめんもしかして嫌だった、嫌なら呼ばないけど」
「嫌じゃないけど、急に呼び始めたから気になって」
「だって城田さんって呼び方なんかしっくりこないし、だったら名前呼びの方がいいのかなって」
確かにクラスメイトによっては苗字よりも名前呼びの方がしっくりくる奴が多い、実際俺も翔也の事は苗字よりも名前呼びの方がしっくりきてるので、多分そんな感じなんだろう。
「それでどうかな……?」
「俺は実際気にしないから名前呼びでも全然いいよ」
「ありがとう」
お礼を言われた、なんだろう金髪ヤンキー女子で怖いと思っていたのに、意外と笑顔になると可愛い、これがギャップ萌えってやつなのか。
「彰人君?」
「いや君の笑顔がちょっと可愛いなって思って」
驚いたのか篠崎雪泉の顔は真っ赤になった。
「か……か……可愛いなんて!! そんなの騙されないから」
授業が始まるのに、篠崎雪泉は席から立ち上がり、学食から教室に帰ってきた翔也を廊下の壁に押しのけ、廊下を走り去って行ってしまう。
「翔也大丈夫か!?」
「いてて……ああ、大丈夫だけどあれは一体なんだ?」
篠崎雪泉は授業が始まっても戻ってくる気配がなく、その日屋上では不良男子生徒が五人、女子生徒を襲おうとしたが全員半殺しにされたと次の日の朝学校で噂になった。
「にいにこれもお願い」
折角の休日なのに久遠に約束した荷物持ちとしてショッピングモールに連行されていた。
「久遠一体どんだけ買うんだ」
俺はもう既に手一杯の袋を下げていた、全て久遠が買った物だ。
「あと一件だけ」
あと一件だけと言われて連れて行かれた場所は、下着売り場だった。
「久遠、俺外で待ってちゃダメか?」
「ダメ、にいにには私の下着選びを任せます」
「……はい?」
久遠の言葉にまぬけな声が出た。
「にいにには私の下着選びを任せます」
「なあ久遠俺の聞き間違いか……? 俺に下着を選ばせるって言ったのか」
「聞き間違いなんかじゃないよ、ほらにいにはどんなのが好み? 純白の白、それとも花柄。もしかして大人の黒かな」
久遠はその場に合った三着の下着を見せてきた。
「久遠、いくらお前でもいい加減にしないと怒るぞ」
久遠の態度が少しおかしいと感じる。
「冗談だよ、ほらにいに外で待ってて。すぐに選んで買うから」
俺は久遠に背中を押され、下着売り場の外に出される、久遠は言った通りすぐに選んで買い終わって外に出てきた。
「それじゃあ帰ろっかにいに」
久遠からはさっきの態度みたいな感じはなく、手を握ってきたいつも通りの久遠だ。
「にいに、明日から林間学校みたいだね」
「ああ二泊三日のな、久遠もそうだろ」
「うん、でもにいにと離れ離れになるのは寂しいな。」
久遠は握っていた手をぎゅっと強く握る。
「まあ三日間の我慢だ、帰ってきたら、どこか遊びに連れてってやるよ」
「本当だったら映画に行きたい、最近戦隊の映画が公開されたんだ」
「いいぞ、じゃあ林間学校から帰ってきた週末に行くか」
「やったー」
久遠はその場でぴょんぴょんと子供のように飛び跳ねる。
「おいおい、そんなに飛び跳ねるな、買った物が落ちる」
「はーい」
久遠と一緒に家に帰り、俺は明日に控える林間学校の準備を夜に終わらせた。
「にいに」
「なんだ久遠」
久遠は移動した俺の部屋にやってきた、部屋を移動して毎日のようにやってくる久遠の姿は、今日新しく買ったパジャマに着替えていた。
「今日だけ一緒に寝てもいい、明日から三日間にいにに会えないから寂しくならないように」
「仕方ないな、ほら」
久遠は部屋の扉を閉めてベッドに飛び込む。
「にいにのいい匂い」
「嗅ぐんじゃない」
ベッドの臭いを嗅ぐ久遠の頭をビシッと叩く。
「えへへ、にいに」
「どうした久遠」
隣で横に寝る久遠は笑顔を見せてきた、俺は久遠の頭を優しく撫でる。
「なんで私を裏切ったのにいに」
今までの久遠から想像出来ない声、裏切った、俺が久遠を。
「私ずっとにいにを見てたんだ、最近のにいに女の子と知り合ってばっかりだよね」
「久遠、どうしたおかしいぞ」
「おかしい……? 私おかしくないよ、おかしいのはにいにだよ。にいに言ってくれたよね、俺がずっと守ってやるって」
小学校の頃に久遠に言った言葉。
「なのに最近のにいには他の女の子にべったりして」
「久遠……」
撫でていた久遠の頭を止めて、俺はベッドから離れようとするが久遠に腕を取られる。
「逃がさないよにいに」
久遠の微笑んだ顔を最後に見て、俺は起き上がった。
「夢か」
焦った、あんな夢初めてみたぞ、隣では久遠がすぅすぅと寝息を立てて寝ていた。
「まさか久遠に限ってありえないよな」
隣で寝ていた久遠の頭を撫でる、俺は起こさないよう部屋を出て、一階のリビングに降りた。
「それじゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃい」
朝食を食べて俺は二泊三日間用の大きめのバッグを持ち、学校に向かう。
学校の運動場には八台のバスが停まっていた。
「そんじゃあクラスに別れて順に乗ってけ、席とか自由でいいからな」
学年主任の先生に言われ、皆バスに乗っていく、俺はバスの席は翔也と隣同士で座り、翔也とだべりながら目的地に着くのを待った。
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