悪夢の林間学校
第14話愛刀天花はアイドルセンター
「それじゃあ来週には林間学校だけど、今日はその班決めするぞ」
林間学校とは春から秋に行われるハイキングや登山博物館見学の事である。
俺達は二泊三日の林間学校が始まる事に浮かれていた。
「とりあえずプリントにも書いてるけど、今回はお前ら一年と二年の合同だ。三年生は受験に向けて授業をするため参加しない」
俺達一年と先輩の二年の合同林間学校か、行き先はここからバスでハイキング場まで行き、そこでテントを建て各々夕飯の支度をするとプリントには書かれていた。
「班決めだが、まあクジ引きで構わんだろ」
教室中から担任に反対の意見が飛んだ、皆話したい奴と班になりたいからな。
だが担任の決めた事は覆せず、班決めはクジ引きで行われた。
「よーし取り敢えずはこれでいいだろう、じゃあ班で席に座れ」
俺と篠崎雪泉は移動せず、もう一人班になった翔也を待っていた。
「おーい翔也、いつまで自分の席に座ったままなんだ」
別の班に翔也は注意されていた、あいつ全く動く気配ないな。
それも俺の隣に座る篠崎雪泉の影響か、翔也は前に篠崎雪泉からキレられて以来篠崎雪泉を恐れていた。
ようやく翔也は俺の前の席に座った。
「遅い」
篠崎雪泉から遅いと翔也は注意される。
「すみません」
あの翔也が土下座をして謝っていた……
いつも俺と遊ぶ時は遅刻してきてもすまんと謝るだけだったのに。
「決めるのはテント設置二人と夕飯作り一人ね、じゃあ私と彰人君がテント設置で、あんたが夕飯作りね」
勝手に決められた、てか俺彰人君って呼ばれたんだけど。
「いや、俺よりも女子の方が作るの上手くないか」
「文句でもある訳?」
「是非やらせていただきます!!」
翔也は敬礼をして篠崎雪泉に向かって大声で答えた。
「そこ何騒いでる」
「いやなんでも」
翔也は担任に叱られる、テント設置と夕飯作りが簡単に決まった。
あと実は博物館見学の時間は課題が出されていた、博物館にある展示品の中から一つ選び、調べ林間学校が終わった後に、教室で発表するらしい、この課題は班で行うのではなく、一人でするらしい。
「なあ彰人、林間学校の食材何する」
夕飯作りを任された翔也、どうやら夕飯作りはカレーなのだが、こっちが欲しい具材を選べるらしい。
「そうだな篠崎さんって何か食べれない物とかない」
「別になんでも食べる」
「そう、だったら普通のカレーよりもシーフドカレーにするか」
「おっいいね。だったら海老とイカは絶対だな後はじゃがいもとか人参、肉はどうする?」
「シーフドだしいらないだろ」
具材選びも終わり、お昼のチャイムが鳴った。
「俺今日は学食いくけど、彰人も来るか?」
「俺はいいや、購買でパンとかで済ます」
「そうか」
翔也は具材を書いた紙を、教室から出て行こうとした担任に慌てて渡しに行く、翔也は担任に渡した後、学食まで走って行くのだが、担任から廊下を走るなと叱られているのを目撃しながら、俺は購買の売店に向かう。
「さてと初めての購買の売店で何食べるかね」
購買の売店に着くと、そこはまさに戦場のようだった……
学校の全学年の男子と女子生徒が互いに体を押し潰し、欲しいパンやおにぎりなどを取り合っていた。
「あー……」
うん、落ち着くまで待とう、これ行ったら死んじゃう。
そんな考えで、購買の売店が落ち着くまで待つと、残ったパンは一つだけで、それに手を伸ばすが、他の人の手と重なった。
「あっ!?すみません」
「いやこっちこそ」
重なった手をお互いにどかし、謝る。
一年の部活見学の時には見ない顔だったので、きっと二年か三年生だろう。
「どうぞ」
俺は取ろうとしていたパンを譲る。
「えっでも残ってるのこれしか」
「学食もありますし、そこで食べますよ」
「ここから学食まで行ってたら、お昼終わっちゃいますよ」
そうだった、落ち着くまで待ってたから、もうあまり時間が残されていなかった。
「あーあ、誰が落としたんだいそれ」
購買の売店のおばちゃんが床下を差す、そこには俺の好物である焼きそばパンが落とされていた。
「誰かが買って落としていったか、それともただ落ちたかかね、はいこれサービス」
おばちゃんは拾った焼きそばパンを俺に渡してきた。
「いいんですか!?」
「いいんですかもなにも、こんなぐちゃぐちゃの物渡してお金を貰うのが失礼だしね、ほら潔く受けとんな」
おばちゃんから焼きそばパンを受け取る、今度からこの購買は通うようにしよう。
「それであんたはいつも通り、残ったパンかい」
「はい、私は運命の赴くままです」
「ほいお釣り」
「ありがとうございます」
おばちゃんからお釣りを渡され、女子生徒は去っていく寸前、俺の方に振り向き、微笑んだ。
「また何かご縁があれば」
いま思ったらあの人どこかで見た事あるような。
「愛刀天花、今話題沸騰中のアイドルグループ、アイセブンでセンターを務め女優も副業しているのに高校には毎日通ってるんだから、本当凄いよ」
おばちゃんの説明を聞いて思い出した、アイセブンとは俺が中学生の時に出来たアイドルグループだ。
最初は人気がなかったが徐々に人気が出てきて最近では一番人気アイドルグループだ、その中でもセンターの子が一際可愛いと話題だったのだ。
まさかそんな人がこの高校にいたなんて。
「それであんた飲み物はいいのかい」
言われてみると飲み物は沢山残っていた、まあ自販機もあるし買わない人の方が多いのか。
「いや、今日はいいです」
「そうかい、まあこれからよろしく頼むよ、あたしは毎日いるからね」
「はい、それじゃあこれありがとうございました」
俺は焼きそばパンを掲げ、おばちゃんに礼を言う、授業開始まで十分を切っていたので、焼きそばパンは教室で食べる事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます