第5話クラブ活動の説明 王子道南の登場


「おっ!? 今日は遅刻せずにちゃんと来たみたいだな」


  教室には入ると既に教室の席には翔也が座っていた。


  あいつは中学生の時はいっつもギリギリに来ていたが、高校は近所の事もあり、一番乗りで教室に着いたようだ、まだ教室には俺と翔也しかいないようだ。


「ゲーセンの件だけど今日とか時間空いてるか。」


「空いてるぞ。」


「なら今日の放課後に行こうぜ、久しぶりにゲーセン行きたいからな。」


「そういえば受験があって、中学の卒業式もあったから最近はあまり行けてなかったな。」


「まああいつらに聞いたら、今日は塾があるとかでパスらしいけどな。」


 翔也が言うあいつらとは他の中学の友達だった奴らだ、翔也以外に三人中学の友達がこの高校に受かったのだが、クラスは俺と翔也以外全員バラバラらしい。


「だったらどこのゲーセン行く、駅前かそれともモールか。」


「駅前かな、昨日母ちゃんにお使い頼まれて駅前に行ったんだけどすっげ可愛い中学生の女子見つけちゃってさ!!」


「お前まさかそれが理由でゲーセンに誘ってないよな。」


  翔也は下手くそな口笛を吹き話を誤魔化そうとした。


  すると教室の扉が勢いよく開いた、昨日の金髪女子ヤンキーが教室に入ってきた、金髪女子ヤンキーは翔也の方を睨むとこちらに向かって歩いてきた。


「あんた昨日あたしの席に勝手に座ってたんだって。」


「いや……… そのー教室にいないからいいかなって。」


「今度勝手に座ったら痛い目見るって覚えときな。」


 金髪女子ヤンキーは翔也の胸倉を掴むと、昨日翔也が席に座っていた事を知り、次はないと言う言い方で、自分の席に座る。


「もしかして、彰人お前が言ったのか?」


「んな訳ないだろ…… 俺だって話しかけるの怖えのに。」


「だよなだったら誰が言ったんだ?」


 昨日翔也が金髪女子ヤンキーの席に座っていたのを知ってるのは教室に残っていた連中しかいない。


  だが何で翔也が座っただけであんなに怒っているんだ。


  他の奴の席に座るのをたまに見かけるが、普通は怒ったりせずに戻ってきたら席から離れれば問題ないが、あの金髪女子ヤンキーはそれが駄目らしい、金髪女子ヤンキーを見る。


  椅子にアルコール消毒液をかけポケットティシュで拭いていた、どうやら余程翔也が座った事が許せないようだ。


「なあ酷くねぇか、昨日ちょっとしか座ってないのに。」


 翔也は小声で金髪女子ヤンキーに聞こえないよう、俺に耳打ちしてくる。


「まああれだ、今度からは座らないようにすればいい。」


 金髪女子ヤンキーの後に続々とクラスの連中が教室に集まってきた、予鈴のチャイムも聞こえる。


  今日は本格的な授業は無く、高校のクラブ活動の説明を体育館ですれば今日は終わりなのだが、この高校はクラブ活動が多く、全てのクラブ活動の説明だけで三時間その後に見学もあるので余裕で放課後になる。


  一応昼は母さんが作ってくれていたので購買や学食にいかなくてすむ。


「どうやら今日は全員集まってるみたいだな、それじゃあ廊下に席順で二人に並んで、体育館に行くぞ。」


  翔也とは席が隣どころか翔也の席は一番前なので、翔也は担任の後ろに付いて行くことになる、俺は俺で一番後ろで隣が金髪女子ヤンキーなので、クラブ活動の説明が頭に入ってくるかどうかも分からん。


「それじゃあ大人しくしてろ、今からクラブ活動の説明に入るから。」


  他のクラスも体育館に集まり出し、俺は中学生の友達三人を見つけた。


  あっちは気付いてないようだが、体育館は急に暗くなると同時にテニスラケットを持った上級生達が体育館の壇上に集まってきた。


「俺は三年テニス部主将だ!! テニスが好きな奴はテニス部に来てくれ初心者も大感激だ。」


  爽やかイケメンの先輩、その後ろに他の上級生達がテニスラケットを持ちテニスの真似をしている。


  ああいう奴は裏では後輩女子を誑かしたり後輩をパシらせたりしているのだろうと考えてしまう。


  いけない人を見た目で判断するとは悪い事だ、昨日読んだ漫画の続きでああいう爽やかイケメンがその行為をしていた事を思い出して、そんな考えになってしまった。


  その後もバスケ部、野球部、水泳部、陸上部と続いてきて一通り運動部の説明が終わると次は照明が壇上に照らされる。


「僕は演劇部の王子道南、演劇部は特に文化祭や地域のボランティアで演劇をする一方で衣装と小道具さらに舞台装置も全て手作りで行う、興味があったら一度見学に来てもらいたい。」


「あの人は!?」


  見覚えがある人が壇上に上がり、その人は小道具の剣を抜くと次々とやってくる怪人の衣装を着た人を薙ぎ倒して引っ込んでいく、女子生徒からの拍手は多く男子生徒からはあまり拍手は多くない。


「結局運動部が一番面白そうだな。」


  クラブ活動の説明を終え教室に戻ってくると、翔也の席の隣に座り共に昼飯を食べて、先程のクラブ活動の説明の感想を話していた。


「で? 彰人はどうする見学はしなきゃいけないみたいだけどクラブに入るのは自由みたいだし今回も帰宅部にするのか?」


「まあ考えるさ、翔也はどの部活の見学に行くんだ。」


「バレー部とテニス部とバスケ部で迷ってるんだよな。」


「お前が運動部とは珍しい。」


「お前見てなかったのか、その部活のマネージャーが可愛いかっただろ。」


「それが目的だったか……」


  翔也は別に運動神経は悪くない、だが中学の頃真剣にしていたサッカー部の事故で怪我をしてそれ以来運動部から離れていた。


「サッカーはもうやらないのか?」


「どうせもう無理だ医者からもリハビリすれば、また走れるようになると聞いたが、ブランクもある俺にとってはサッカーとかする気はないね。」


「そうか……」


「それよりもお前はどうするんだよ見学どこに行くか決めたのか」


 翔也は話を変えて俺が書き終わっていたクラブ活動の見学の紙を奪い取って見る。


「演劇部? お前どうしたんだよ演劇なんか興味ないだろ?」


「別に関係ないだろ、少し興味あるだけさ。」


  すぐに翔也から返してもらい俺は食べ終わった弁当箱をバッグの中に入れバッグを背負い翔也を置いて、教室から出ていく。


「今日のゲーセン忘れんなよ!! 校門で待ってるからな。」


  クラブ活動の見学は全て同じ時間に終わるので翔也は教室の窓から叫び俺に言った。


  そのまま手の平を振り演劇部の活動場所である体育館に向かった。

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