第3話妹久遠の登場彰人は風呂場で煩悩にさいなまれる
「ただいま。」
家に着くと帰ってきた挨拶をする、朝出る時鍵はかけていたので、きっと母さんと妹が帰ってきたのだろう。
二階からドタドタと足音が聞こえ、階段上から妹の久遠が顔を出した。
「にいにお帰り!!」
久遠はそのまま二階から飛び降りる。
いやお前それ危ないって、久遠をそのまま抱いて受け止める。
「お前……それ危ないって言ってるだろ。」
久遠は二階から飛び降りて俺が受け止めるのをたまに繰り返している。
「えへへ、だってにいになら受け止めてくれるでしょ。」
久遠は微笑み、すぐに立ち上がった。
「それよりもにいに聞いて、今日の入学式でねもう友達が出来たんだ。」
久遠と共にリビングに行き、ソファに座り込むと久遠は頭を肩に乗せて話し始めた。
「そうか、よかったじゃないか、だけどその友達とは仲良くしろよ、前みたいな出来事は俺も考えたくないからな。」
「大丈夫だって女子しかいないし、あんなのは私もこりごりだもん……」
少し空気が悪くなり友達の名前を聞く事にした。
「それでその友達になった子の名前は。」
「御嬢瑞希ちゃん、あの御嬢財閥の娘なんだって。」
どうやらあの子は無事に入学式に間に合ったらしい、しかも言った通り久遠と友達になってくれたようだ。
「それでね、今度遊園地に遊びに行こって約束しちゃった、友達になって早々迷惑だったかな……」
「いや、迷惑じゃないだろ、その子だって嬉しいんじゃないか。」
「そうかな? そうだったら私も嬉しいけど。」
「ほらそんな顔するな、折角あの花菜葛女子に入学したんだから。」
実は久遠が入学した中学はこの近所じゃ有名な学校だ、久遠もずっと憧れていた学校なので、小学生の時に勉強を頑張り受験を受けて合格した時は喜んでいた。
「でもにいにと通えないよね、私の学校にいにと反対だし。」
「まあそうだな、だけど家では一緒だろ、部屋もそろそろ別々にした方がいいんだけどな。」
「なんで!? にいには私と同じ部屋は嫌なの。」
「嫌って訳じゃないけど、久遠はいいのか中学生になっても俺と同じ部屋で。」
「私は平気だよ、だってにいにだもん。」
実は久遠はまだ兄離れが出来ていないようだ、だがいくら俺でも最近中学生になった妹と一緒の部屋で寝てるなんてクラスの連中にも言えないし連れて来ることだってできない、しかも最近の久遠はやけに発育がよく、身長は普通の女子よりも高く、胸だって。
「にいに?」
「なんでもない。」
「あんた達何やってるの、そろそろ夕飯だから風呂に入っちゃなさい。」
「だってにいに、早く入ろ。」
「母さん俺今日から高校生だよ、久遠だってもう中学生なんだから別々に入った方が……」
「確かにそう思うよね、でも久遠があんたと一緒じゃなきゃ入らないって言うんだし仕方ないじゃない。」
「ほらにいに行こ、今日は新しいの買ってきたから。」
半ば強引に久遠に風呂場まで連れていかれる、今日は仕方ないが、明日から夕飯を食べた後に入ろう、久遠は夕飯を食べる前に風呂に入りたがるから、これなら一緒に入らなくていいだろう。
「にいに背中洗ってあげる。」
久遠に背中を洗ってもらう中そう決心すると久遠の胸が少し背中に密着して、俺は煩悩を取り払い頭を真っ白にして切り抜けた。
「やったレッドだ見てみてにいに、レッドのシークレット。」
よく戦隊の入浴剤が売っていてその入浴剤を使うと戦隊のマスコットが出てくる、久遠はこれをよく買ってくる、俺も小学生の頃までは集めていたが中学になって買うのを止めた、だが久遠はまだ止める気はないらしい。
「俺先に上がるよ。」
「じゃあにいにあれ持ってきて、今日当たったレッドのシークレットと遊ぶ。」
「のぼせる前に上がってこいよ。」
風呂場前に置かれている俺と久遠が集めたマスコットが入った籠を久遠が取りやすい位置に置く、久遠はその中から俺が集めていた昔のレッドと入浴剤とは別売りの怪人を戦わせ遊び始めた。
「あら、もう上がってきたの久遠は?」
「風呂で遊んでる。」
「そうまだまだ子供ね。」
「久遠が上がったら呼んで、部屋で漫画読んでるから。」
昨日遅くまで読んでいた漫画の続きを読み始めた。
「彰人、久遠がお風呂から上がってきたから夕飯食べるわよ。」
母さんの声が二階にまで響いてきた、読んでいた漫画を枕の側に置き、そのまま起き上がり、一階に降りていく。
「にいに遅ーい!! 冷めちゃうよ。」
「悪いな。」
我が家では家族で共に夕飯を食べるのが日課だ、父さんは夜遅くまで働いている一日帰ってこない事もたまにある、なので母さんと久遠と俺が夕飯を一緒に食べている。
「にいにの方が一個多い!!」
「久遠もう中学生になったんだから我儘言わないの。」
「仕方ないな、じゃあ久遠にやるよ。」
「やったありがとにいに。」
久遠は満面の笑みを見せあげた唐揚げを頬張る。
「あんたの方こそ妹離れできてないんじゃないの。」
母さんの言葉を鵜呑みにはせず、唐揚げとご飯を同時に食べむせてしまった。
「にいに大丈夫!? はいお水。」
久遠からもらったコップの水を一気飲みして、ようやく収まった。
夜十一時を過ぎると玄関の扉が開く音がしたきっと父さんが帰ってきたのだろう、久遠は一時間程前に寝たので、久遠を起こさないよう二段ベッドから起き上がり部屋から出る。
「おっ…? なんだ彰人まだ起きてたのか。」
リビングに行くと父さんは片手にビールを持ち、母さんが残していた夕飯の残りをレンジで温めていた。
「父さん少しお願いがあるんだけど。」
「なんだ言ってみろ、何か欲しい物でもあるのか、だけど女性物は無理だぞ、この前母さんに全部捨てられたからな。」
そういえばこの前母さんが父さんに残していたのは白米だけでおかずは全て久遠に譲っていた、まさかそれが原因だったとはと頭の隅に置くと。
「いや、そうゆうのじゃなくて、ほら俺と久遠ももう小学生じゃないんだから、一緒の部屋ってのもおかしいだろ、この家って前から使ってない部屋あるじゃん。」
「そうかあれだな、彰人は久遠と一緒の部屋っていうのは恥ずかしいんだな。」
「そう、だけど久遠の前じゃあまり言えなくて、だから久遠がいない日に部屋を移動させようかなって」
「いいじゃないか、けどあの部屋で本当にいいのか?」
「うん、俺は平気だからさ。」
「じゃあ先にあの部屋を片付けてからにしないとな、母さんに話しておくから片付けも久遠に知られないようにしておけよ」
「ありがと父さん、それじゃあお休み。」
「ああお休み。」
リビングからそのまま二階の部屋に上がる、二段ベッドの上では久遠がすやすやと寝ていた。
「悪いな久遠でもお前も分かってくれるだろ。」
何も知らずに寝ていた久遠の頭を撫で、明日も学校があるので、今日はこの辺で寝ようと思いベッドに入りすぐに眠る。
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