第3話

5人目の恋人 3



3ヶ月前

新入生歓迎のレクレーションが行われた。

その一つとして、新入生達はある試練が課せられる。

それは自分の手帳に、先輩達のサインを貰う事。

お互いを知り合う為でもあるが、面倒くさいと思う人間も少なからず居るだろう。

そういう俺は綺麗なお姉さん達と知り合えるチャンスであり、何なら名前だけじゃなく連絡先も頂戴出来るからと、この試練に歓天喜地で取り組んでいた。

だけど相方のバンクは家で嫌なことがあったらしく、その日は朝から不機嫌MAX。

先輩に向ける挨拶も疎かに、俺が率先して先輩達に声を掛けなければ、バンクはサインすらまともに貰えなかっただろう。


「はぁ~~ダリィ~~帰りてぇ~」


「何もしてないくせに、何言ってんだよ」


ただ俺について歩きオマケでサインを貰っているくせに、一丁前に文句だけは垂れるバンク。

本当、体だけはスクスクと育ち中身は子供のまま・・・・。

なのに大人みたいにやることはちゃっかりやり、無愛想に振る舞っていても、俺よりお姉さま方から連絡先をゲットしているのは知っている。

俺だって自分のルックスに自信があるし、愛想よくしてるのに・・・・・どうやっても、無愛想で我儘なバンクに勝てない。

確かに男の目から見ても、バンクはいい男だと思う。

身長だって・・俺より数センチ高いし、ガタイもジム通いで逞しい。

年齢の割には上に見られがちなのは、ガッシリとした体型だけじゃなく、彫りの深い顔立ちなのもあるからだろう。

昔っから彼は、中身がどんなに我儘王子様でも、外見の良さでフォローしてきた。

まぁ多少は、家柄もあるけども・・・・

だからバンクに惹かれる人は、どうせ外見しか見えていない。

何せ彼女が出来たと思えば、次の瞬間違う女性が隣にいるのはいつものパターン。

飽きたと彼から捨てる時もあるが、彼の自分勝手な振る舞いに女性が逃げていく事も多かった。

バンクもその歴代の彼女達も、一体どこに惹かれて付き合ったのか・・・・


「人間にとって大切なのは、ハートの熱さなのに・・・・・」


「あ?何言ってんだ?」


うん・・・自分で言ってて、意味が解らなかった。

もう厚さでも、暑さでもどっちでもいいや。

とにかく今は、50人の先輩方のサイン確保だ。


「ほらっ次は、あそこに行こう」


「あ?・・・並んでんじゃねぇ~か」


俺が目ざとく見つけたのは、中庭の一角の人だかり。

花壇の前にあるベンチに、俺達と同じ新入生達が列をなしていた。

その間から微かに見えるのは・・・数人の先輩らしき影。


「先輩達が固まってるから、列が出来てるみたい。いいじゃん、一気に集まるだろ?」


「はぁ~~~」


面倒くさそうに盛大に溜息をつくバンクの腕を掴み、俺はその列の最後尾を目指す。

案の定、ベンチの周りには数人の先輩が居て、新入生は一人一人にサインを貰っていた。

徐々に流れるように横にずれて行き、手の空いた先輩に挨拶を交わしてサインを貰う流れ作業。

中にはサインを書く代わりに司令を出す先輩もいる中、このグループにはそういう面倒くさい先輩方は居ないようだった。

そして頼りなさげだが、どこか人の良さそうなノック先輩のサインを貰い、彼の隣に座っている先輩に視線を向けた時だった。

一瞬呼吸が止まった・・・・・

カッターシャツの制服の上に、グレーのカーディガンを羽織った1人の先輩。

あっさりした顔立ちで黒髪が艷やかな先輩は、俺を見上げて優しげに微笑む。

男だと解っていても、男臭さがない綺麗な顔立ち。

タイでも華人の人達は居るものの、彼はそれとは違った雰囲気が漂う。

顔立ちや表情、そして纏っている雰囲気に俺は目を奪われ、ただ呆然と先輩を見下ろしていた。


「サイン、要らないの?」


反応し忘れた俺に頬を緩ませながら声を掛けてくれる彼に、ハッと我に返った。

声までも綺麗だ・・・柔らかでそれでいて暖かく感じ、凛と透き通る声が耳に心地よく感じる・・・

俺は彼の胸元の名札を目にし、【アキ】と書かれた文字を確認した。


「こんにちは、アキ先輩。サインを頂けますか?」


そう言いながら自分をアピールするように、首からぶら下がっている手書きのネームプレートを彼に見せた。


「オタ君ね。いいよ」


心地いい声で名前を呼んでくれた、それだけで天に召された様に気分が上昇する。

そして差し出された彼の白い手に、手帳をそっと乗せた。

その人の一つ一つの動作がスローモーションの様に動き、どこか夢心地な気分で彼がサインしている姿を見つめる。


「はい」


「有難うございます」


手元に戻ってきた手帳にお礼を述べて、胸ワクで彼のサインを見ると【AKIRA】と流れるような筆記体で書かれていた。


「え・・・アキ先輩、アキラって言うんですか?」


「うん、そうなんだ。本名はアキラだよ」


「アキラって、あの日本の名作のあのAKIRAと一緒っすね!」


「そう、古いのによく知ってたね。オレ、日本人なの」


「凄いっ!!めっちゃかっこいい!」


日本の漫画やアニメが大好きな俺は、我を忘れて思わずハイテンションで話してしまった。

だけど彼は嫌な顔を一つもせず、笑顔を絶やさず更にはははと笑ってくれた。

そんな中・・・・賑やかな空気を一変させる出来事が起きた。


「はっ何がかっこいいだ・・・名前負けしてんじゃん」


隣から投下された手榴弾に、一瞬でその場の皆が硬直する。

この一帯だけ無音になり、まるで周りと切り取られた違う空間のようだ。

ここは友人である俺が謝罪して、場を戻さねば!と意を決して口を開いた時。


「君はサイン要らないの?」


シーンとした場に、静かに響くアキ先輩の声。

口元には憂いを乗せたまま、俺の隣に立っているバンクに掌を差し出した。

はぁ・・・流石、2つ上の先輩になると違うなぁ~~~~。

大人の対応をする彼に、関心してしまう。

だが、再びバンクは追撃を開始した。

あろうことか手帳を投げ捨てるように、彼の膝に放ったのだ。


ピシリと場の空気が凍りついた。

皆、ピクリとも動けない・・・・いやもう、呼吸すらしていないかもしれない。


それでもアキ先輩は表情を変えることなく、膝の上に置かれた手帳を手に取るとペラペラと捲り、そしてバンクに顔を上げた。


「バンク君っていうんだね」


薄ピンクの唇は円を描いたまま、だが・・・目が・・・笑っていないように見える。


「日本では名は体を表すって言うんだけど、それで言うと、君はお金にガメついんだね」


アキ先輩の笑顔での逆襲が始まった。

それに対して、薄ら笑いを浮かべていたバンクの表情は一変。

周りの先輩達も、困惑したようにお互いの顔を見合わせている。


「あ?」


「たくさん、たくさ~ん、お金が欲しいんですぅって、意味を込めて~そのニックネームにしたんでしょぅ?」


まるで子供に言い聞かせるように、ゆっくり目で話す彼に皆は目を白黒させている。

クラスメイトの言動にノック先輩は狼狽え「えぇ・・・どうしちゃったの・・アキ」と呻くように呟いている。

ただ2人の間だけは、緊迫した空気が纏っている。


「馬鹿にしてんのか?」


「馬鹿に?ううん、違うよ。君に合わせてあげてるの、知能指数を」


「ああぁぁぁ~~~アキ、ちょっと向こう行こうか!?」


いち早く反応したのは、ノック先輩だった。

アキ先輩の手を掴み、無理やり椅子から立たせる。


「はっ女みたいな顔しやがって」


「そうか~。お金大好き君は頭だけじゃなくて、目も悪いんだねぇ」


「アキ~~~!ストップスト~~~~プ!!」


片方は今にも殴り掛かりそうな表情で、もう片方は目が笑っていない笑顔でお互い睨み合う。

ノック先輩は彼の腕を引っ張り退場させようとするが、どんなに引っ張ってもアキ先輩の体はその場からピクリとも動かない。


「ちょっとメイト!手伝って!」


ノック先輩が近くに居た女性の先輩に声をかけると、彼女は頷きながらアキ先輩の空いている腕を掴む。

だけど2人掛かりでも、アキ先輩は動かない。


「いい病院紹介しようか?ついでに性病も治してくれるよ?」


「駄目だ、何で動かないの!?」


力いっぱい引っ張る2人に、足先程も動かないアキ先輩。

すぐに他の先輩も加勢するも、まるで銅像のように動かない彼はやがて「あぁ~~手が滑った~~」とバンクの手帳をピッチャー選手宛らに投げ飛ばした。

結局、騒動に気づいた4年生がアキ先輩を抱き上げて退場した事により、その場はお開きとなった。


「何なんだよ、あいつ。糞が」


静かになったその場で悪態つく相方を無視し、俺はアキ先輩が消えた方向を見つめていた。


激しい反撃を繰り返すアキ先輩は、最初に受けた彼の穏やかな人柄とは違っていた。

バンク相手にここまで言って退ける人は、居なかったし、驚きもしたが・・・・・

それよりも笑顔を絶やさずバンクに反論する彼の姿に、俺は今までにない程に胸がトキメイていた。



******



「おい、オタ。席変われ」


一度座ったにも関わらず、椅子から立ち上がった友人のバンクはそう言った。

表情は嫌そうに歪み、これでもかと言う程にしかめっ面。


「何で?」


「いいから」


まったく我儘な王子様だ。

彼の意味のない我儘を、嫌な顔せずに聞いてあげるのは俺ぐらいなもんだろう。

こんなのと10年も付き合えるとか、どれだけ俺はいい人なんだろうか。

そう自画自賛しながら言われた通りに席を立ち、バンクが座っていた場所に腰掛けると・・・・その理由が解った。

あの後ろ姿は・・・・・

テーブルを二つ挟んだ先には、あの先輩が居た。

華奢な肩に細い首、そして妙に色気があるうなじが目に痛い。

こんなにも絶景なのに、バンクは視界にも入れたくないらしい。


「おしっ!お前が踏んでボロボロになったクッキー渡してくる」


「勝手にしろ」


「勝手にするさ」


今朝2人の睨み合いを仲裁した後、慌てて走って行ったアキ先輩が落とした紙袋。

それをバンクは知らずに踏んでしまい、中には女子から貰っただろう可愛く包装されたクッキーの残骸が入っていた。

その女子には悪いと思うが、俺にとってはアキ先輩と話せるチャンス。

自分の株をあげるためにも、バンクの代わりにお詫びのカップケーキを用意した。

オレはバンクの靴底が印刷された紙袋を手にし、足取り軽く彼のテーブルへと近づく。

そうか今日はベージュのカーディガンか~~~。

工学部で支給される紺色のジャケットではなく、いつも色違いのカーディガンを羽織っている彼。

それもワンサイズ大きめで、軽く手の甲が隠れる袖がなんとも可愛くキュンキュンしてしまう。

そんな彼の手元を今日もチェックしつつ、テーブルの脇に立つも、何やら2人は真剣な表情で話し込んでいて、俺の存在に気が付かない。


「アキ先輩っ」


語尾にハートがつきそうな音色で名前を呼ぶと、黒目がちの大きな目が向けられる。

不思議そうな顔で見上げる彼に「可愛い」と思ったことが口に出そうになり、慌てて用件を口にした。


「これ、落としましたよね」


そう言ってテーブルに紙袋を置くと、彼は一瞬息を呑み、そしてまた俺を見上げた。

それはもう、嬉しそうな表情で・・・・それを目の当たりにした俺はまた「可愛い」と口走りそうになり、咄嗟に口から漏れないように唇を噛み締めた。


「ありがとう、探してたんだ」


「その・・・それで、ごめんなさいっ!」


「ん?何を?」


「実は、バンクが踏んじゃって」


「!?」


「わざとじゃないんです!」


友人バンクを庇う俺は、彼の中でどれぐらい好感度が上がってるんだろう。

出会った時からお近づきになりたいのに・・・・バンクのせいで、それも叶わない。

一緒にいれば、必ずバンクとアキ先輩はいがみ合う。

その時の俺は・・・・部外者・・・・いや、空気だ。

学部が一緒でも学年が違うと、会える機会も少ない上に、会ったとしても隣にバンクが居るせいで会話もできない。

そして今こうやって、まともに話すのは初めて会った時以来だ・・・


「これ・・・・」


紙袋を確認した彼は、俺が用意したカップケーキに目を丸くする。


「せめてものお詫びの品です」


「まさか・・・・」


途端に顔を歪ませるアキ先輩に「俺っす」と補足する。

すると彼は小さく安堵のため息を付いた。

本当・・・バンク、めっちゃ嫌われてるな。

あいつが買ったとか言うと、あの時の手帳みたいに投げ飛ばしそう・・・・


「そうか。こんなに気を使わなくてもいいのに」


と申し訳無さそうなアキ先輩は、俺に視線を向け直すと・・・


「ありがとう、いただくよ」


お礼の言葉と一緒に、目がチカチカする程の綺麗な笑顔を俺に向けてくれた。

それには流石に「かわっ!!」と口から飛び出し、何とか続きの言葉を飲み込んだ。


「それじゃ、お邪魔しました」


目上の人に対しての丁寧な挨拶をし、俺はいそいそと元のテーブルへと戻る。

最高の気分で着席した俺は、目の前で不味そうに飯を食べているバンクの顔が目に入り、吹き出しそうになった。


「そんなに美味しくない?」


「ちげ~~~」


まぁ彼がこんな顔をしてるのは料理の味じゃなくて、俺がアキ先輩と接触したのが原因だ・・・

だけどそれは我慢して欲しい・・・・俺はもっとアキ先輩と仲良くなって・・・行く末は・・・・むふふふ。


「はぁ~~まじで先輩エロ可愛いかった~。もう思わず可愛いって言いかけたもん」


「はっどこがだ。いくら顔が良くても所詮は男だろうが、気持ちわりぃ~な~。お前だって、今まで女しか相手にしてなかっただろう~が」


「ん~~まぁ今でも女の子は好きだけどね・・・・だけど、アキ先輩は何か違うんだよ・・・。持ってる雰囲気なのかな~。真っ白な感じなんだけど、どこかエロいと言うか~~笑顔も綺麗で可愛いし、清潔感のあるいい匂いがするし・・・ん~~~せめてもうちょっと近づいて嗅ぎたい」


「キモいっつってんだろ」


バンクはそう吐き捨てるように言うと、イライラを食べ物にぶつけるようにフィークで肉をグサグサと突き刺す。

そんな彼をついつい哀れだと思ってしまう。

普通に接していれば、アキ先輩は笑顔を向けてくれる。

なのに何故わざわざ、怒らせるような事を口にするのか解らない・・・・・まぁ、発端は初対面の時に虫の居所が悪かったせいだろう。

あの時、普通の状態だったらあぁはならなかった。


「はぁ~~袋に入れたメモ気付いてくれるかな~~~」


「あ?カップケーキだけじゃねぇ~のか?」


「連絡先書いたメモ入れといた。いつもウチの友人がすみませんって添えて・・・・」


いつもはバンクが居て、連絡先を聞けないんだから・・・こういうチャンスはちゃんと使わないと。

しかもカップケーキを食べた後、あの人なら「美味しかったよ、ありがとう」って連絡くれるだろうと計算もしてるし。


「お前なぁ・・・・。はぁ・・本気で狙ってんのか?あいつ恋人居るんだろ?」


「ん~~~けど、どうやらそれは嘘だろうって説がある」


「あいつが自分で居るって言ってんのにか?」


「1年の時から言ってるらしいけど、何処の誰かも解らないんだって」


「あいつのSNS見たらわかるだろうが」


「アキ先輩はSNSしてないんだよなぁ~~~これが。だから私生活が謎なんだよ。寮なのか、一人暮らしなのか、実家暮らしなのか、家族構成も、趣味も、好きな食べ物も一切解らない!」


勿論彼のSNSは出会った頃に検索済み。

だけど本人のアカウントは存在せず、代わりに彼の周りの友人のアカウントをフォローした。

それにアキ先輩の事は、タグを遡って彼が1年の時の噂まで全部調べたものの、どれも噂程度で真実味が薄い。

ただ・・・・恋人が居ない説だけは納得できた。


「そんなに知りたいのかよ・・・」


「当たり前だろ!?好きな人の事は、何でも知りたいんだよ」


「ならコレだけは教えてやるよ」


「え・・・・何?」


何を教えてくれるだろう?

って言うか俺が知らないことを、こいつが知ってるとは思えないけど・・・・。

それでも一応聞いてやろうと、身を乗り出して聞き耳を立てた。


「あいつの家、超貧乏だぞ」


・・・・は?

思いも寄らなかった情報に、きっと今の俺は目が点になってるだろう。

彼の何処をどう見てそう思ったのか・・・・

髪はいつも綺麗にセットされ風下にいるとシャンプーのいい香りがしたし、肌だって手入れされてて頬擦りしたくなるくらい滑らかで艷やかだ。

カッターシャツやズボンは一切皺はなく、いつも洗いたてのように清潔感もあった。

寸分の隙もないぐらいに、いつも身なりは気にしている人だと思う。

だからと言って固いとは感じないのは、あのカーディガンのお陰だろう。

ふんわりとした柔らかなカーディガンの生地は、普段見せているアキ先輩の雰囲気そのものだと思う。


「・・・・・・根拠は?」


「いつも伸び切ったカーディガン着てるだろうが」


「あれはサイズ大きめなだけだろ?」


「いや、ちげ~~~。洗いすぎて伸びたから、新しいの買わないとってアイツがぼやいてたの聞いた。アイツは俺の存在に気づいてなかったけどな、確かにそう言ってた」


「え・・マジで・・・」


き・・・気づかなかった・・・・・


「あぁ、残念だったな。富裕層の俺達とは相容れない人種だ、諦めろ」


「めっちゃ可愛いんですけど~~~~~!!なにそれ、なにそれ~~~、キュンってなったキュンキュンってなっちゃった~~~」


初めて知った、彼の生活感漂う部分。

そんなカーディガンを着た彼の後ろ姿を拝もうと視線を向けるが、既にそこは空席。

だけど良かった・・・・もしまだ彼が居たら・・・伸び切っちゃうほど愛用してるカーディガン毎、先輩を抱きしめちゃってたかもしれない。


「・・・・・・・」


目の前の男がゴミを見るような目で俺を見てても、この跳ね上がったテンションと興奮ゲージは一ミリも下がらない。


「あぁ~~~~なら、カップケーキじゃなくて、カーディガン買ってあげれば良かった~~。そうだな薄いピンク色とか良いんじゃないかな、絶対似合うし!間違いなく似合うし!それに最初からサイズ大きめで~~~何だったら2サイズ大きめで、彼シャツ的な感じで着て欲しぃ~~~~~あっ何なら、俺が一度着て~~~俺シャツで渡しちゃう!!?」


「先行くぞ」


「あっおい!俺一口も食ってない!」


「知るか」


まだ手付かずの昼食に、友人を置いて行こうとするバンクの後を追うのは諦めた。

今は気分がいい、たまには1人で昼食を食べるのもいいさ・・・・。

アキ先輩の笑顔を思い出しながら鼻歌気分で、懐から出したスマホをテーブルに置く。

そして誰かが、アキ先輩の盗撮をSNSにあげてないかをチェック。

するとさっそく、今朝方の出来事を撮った写真が上げられているのを見つけた。


バンクとアキ先輩が付き合ってる説浮上・・・・


「・・・・・・」


言葉が出ない・・・・

ハイなテンションも地の底まで落ちた・・・・

地に落ちたどころか、0ゲージを突き破ってまでトコトン落ちた・・・

俺は手に持っていたフォークを握り締め、ゆっくりと椅子から立ち上がる。

そして、バンクが消えた方角を目指して歩き出した。


その時、頭の中には名作「ハロウィン」のテーマ曲が流れていた・・・・・・



続く

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