【23話 いつもの光景】
マサルンとンザールゥは岩の天井から垂れている鎖と島の横を何度も通りながら暗闇の中を上昇していく。
そして、赤丸君で上空を照らしながら深いため息をつくマサルン。
「今日はすっごく疲れた一日だったね、かっこ苦笑い」
ンザールゥは眉尻と尻尾を下げながら腕をさする。
「ミャー、ケガして体が痛いミャ」
「それはオレもだよ、かっこ涙目」
ンザールゥは胸に手を当てながら
「でも、もっと痛いのは腕より心ミャ」
「……イポーテャさんの事だよね? かっこ冷静」
無表情で深く
「ミャー、本当は三人でカイルに戻って来たかったミャ」
「アーノルド君も入れたら四人だろ? かっこ流し目」
「そうだったミャ」
ンザールゥは頭を抱えながら顔をしかめる。
「ボクたちがもっとしっかりしてれば、こんなことにならなかったミャ」
「しっかりって、具体的にどんな事? かっこ真顔」
硬い笑みを浮かべながら頭を掻くンザールゥ。
「……ミャーン、言葉に出来ないミャ」
マサルンは眉をひそめながら呟く。
「オレは、いや、オレたちは最善の事をやってたと思うよ。イポーテャさんが犠牲になったのはオレだって悔しいし悲しいよ。でも、イポーテャさんがやられてなかったら、オレかンザールゥのどちらかがやられてたことになるよ。それか、最悪あの子か、かっこ冷や汗」
尻尾と眉尻を下げるンザールゥ。
「だれを失ってもかなしい結果ミャー」
「ただ一つ言えることは、オレたちは子供を無事カイルに連れ帰ったこと。そして、オレたちも無事戻ってこれた。そのことを喜ばないと、イポーテャさんに申し訳ない、かっこ涙目」
ンザールゥは肩を落としながら
「ミャー、理解できるけど、どこか納得できないミャ」
「納得しないと、これから先も今日のこと引きずり続ける事になるよ、かっこ冷や汗」
「ボクはずっとイポーテャさんのこと引きずりながら生きていくミャ、忘れちゃいけないミャ」
真剣な眼差しをンザールゥに向けて、ゆっくり
「忘れてはいけないのは確かだけど、そのせいでオレたちの未来に支障が出るなら、それも問題だからね、かっこ冷静」
ンザールゥは尻尾をくねらせながら微笑む。
「なんだか、今のマサルンは頼もしく感じるミャ」
「オレはいつだって頼もしい存在だ、かっこ真顔」
細めた目をマサルンに向けるンザールゥ。
「夕方のマサルンは頼もしくなかったミャ」
マサルンは硬い笑みを浮かべる。
「お腹が減ってて調子がおかしかっただけだよ。って、それはンザールゥの役割だったか? かっこ
たじろぎながら語気を強めるンザールゥ。
「役割ってなんミャ!?」
そして、マサルンとンザールゥは暗闇によって赤黒い外観に染まった家の近くで
マサルンは口の端を上げながら呟く。
「食いしん坊のンザールゥと今も元気に話せてる、この当たり前が無くならなくてよかったと思ってるよ、かっこ笑い」
笑顔を浮かべながら深く
「食いしん坊じゃないけど、それはボクも思うミャ」
「同じ意見を持つなんて、生意気だぞ! 食らえ! かっこニヤリ」
マサルンは握っていた赤丸君から放たれる光線をンザールゥの顔に向ける。
それから、すぐに目を手で押さえるンザールゥ。
「ミャーン、
マサルンは微笑みながら軽く手を振ってンザールゥを見送る。
「家に戻って、腹の中に食べ物たくさん詰め込んで、ぐっすり寝なさい! かっこニヤリ」
「今日は何もしないですぐ寝るミャー」
笑顔を作り、マサルンに手を大きく振りながら暗闇を進んでいくンザールゥ。
そして、マサルンは肩を落としながらため息をつく。
(はぁ、オレも疲れたよ。この腕の痛みは、寝れば明日には治ってくれるかな?)
それから、赤黒い外壁の家の近くに下りて、玄関を開けていった。
ンザールゥは青黒い外観の家の近くまで移動し終える。そして、無表情で家を見つめた。
(おうちから明かりが見えないミャ、まだ誰も帰ってないミャ?)
家の前に下りて、玄関を開ける。それから、尻尾を左右に振りながら叫ぶ。
「帰ってきたミャー」
静かな暗い家の中に、ンザールゥの声が寂しく響き渡った。
ンザールゥは眉尻を下げながら頭を掻く。
(今日もお仕事頑張ってるミャ、仕方ないミャ)
家の中を進んでいき、そのまま自分の部屋に入っていった。
(疲れてるから、今日はこのまま寝るミャ)
体を丸めながら床に寝転び、ゆっくりとまぶたを閉ざしていく。
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