【19話 その選択が】

 イルカはマサルン達から離れた宙をぐるぐる回っていた。


(さわがしいし、凶暴な敵が襲い掛かって来るし、どうしたらいいんだよー! このまま逃げてもいいかい?)


 マサルンは体勢を立て直し、ライオンに向けてクロスボウ@8の引き金を強く引く。


(さっきはよくもオレのとっておきを拒否してくれたな? 今回はちゃんと受け取ってくれよ?)


 銃口から矢が勢いよく飛んで行った。


 そして、矢は無防備を晒しているライオンの胴体に衝突する。


 ライオンはうなりながら吹き飛んでいった。


【ワァーオゥッ(デヴォデャッ!)】


 吹き飛びながら眉尻を上げるマサルン。


(よしっ、当たったぞ! そのまま戦意喪失してくれ、頼む!)


 ンザールゥも体勢を立て直し、素早くライオンに近づいていく。そして、金槌ハンマーを振り上げた。


(さっきの攻撃は驚いたミャ! でも、ボクも負けないミャ!)


 体勢を立て直し、すぐに近づいてきたンザールゥを睨むライオン。


(ンラッ!? あぶないっ!)


 ライオンは素早く体を移動させてンザールゥと距離を取る。


 そして、ンザールゥが振り下ろした金槌ハンマーは暗闇を強く叩いた。


 尻尾を左右に激しく揺らし、顔をこわばらせるンザールゥ。


(また攻撃外したミャー、絶対当たると思ったミャ! どうしてミャー!?)


 一方、ライオンはンザールゥを睨みつける。


(食糧のくせになんて凶暴なのかしら!? これじゃあこっちが食糧になっちゃうじゃない!)


 素早く周囲を見渡すライオン。そして、イポーテャに視線を向ける。


(あの食糧はさっきからうるさくて仕方ないわ! しかも、弱そうだし何よりも孤立しているわ! あの食糧狙った方が良さそうだわ!)


 ライオンはイポーテャに素早く近づいて行く。


 一方、微笑みながらアサルトライフル@5の引き金をゆっくり引くイポーテャ。


(おっ、ありがたいねぇ。自分から向かってくるなんて、命を捨ててるもんだよ? さよなら、凶暴な生物さん)


 五発の弾丸が列を作ってライオンに進んでいった。


 そして、五発の弾丸がライオンに着弾する。しかし、弾丸は弾かれてしまう。


 イポーテャの体が五回連続で弾かれる。


(じゅでゃっぷ! しまった!)


 隙を見せてるイポーテャに一直線に向かうライオン。


(あらま、ありがたいねぇ。自分から守りを捨てるなんて、命を差し出すのと同じ事だよ? さよなら、食糧さん)


 一方、マサルンはライオンにクロスボウ@7を向ける。


(今度はイポーテャさんが危ない! 頼む、オレの矢よ、当たってくれ!)


 引き金を引くと、矢がライオンの後姿を追っていく。


 しかし、矢はライオンのすぐ近くを通過していった。


 一方、ライオンの姿を追いかけるンザールゥ。


(ミャー、イポーテャさんが狙われてるミャ! 今から獣さん追いかけても間に合わなそうミャ。ミャッ、ボクには遠くから攻撃できる武器があったミャ!)


 ンザールゥは衣装のポケットに手を突っ込ませる。


 そして、ライトニングガン@5を引き抜いて、銃口をライオンに向けた。


(絶対当てるミャ!)


 眉尻を上げながら引き金を強く引くンザールゥ。


 銃口から青白い光線が放たれ、周囲の暗闇を一瞬明るく照らす。更に、光線は不安定な軌道でライオンに一瞬で伸びていく。


 しかし、ライオンはそのままイポーテャに向かっていった。


 ンザールゥは目を見開いてたじろぐ。


(しまったミャ、距離が足りなかったミャ!)


 そして、ライオンは前足を素早く振り上げ、イポーテャの顔に叩きつけた。


 殴打を受け入れて吹き飛ばされるイポーテャ。


「つぁでゃっく!」


 ライオンも吹き飛ばされ、暗闇を進んでいった。


 ライオンはすぐに体勢を立て直し、大きな口を上下に開けイポーテャに凄まじい速さで近づいていく。


 また、マサルンは眉をひそめさせながらクロスボウ@6をライオンに向ける。


(うっ、このまま撃ったらイポーテャさんに当てちゃいそう。でも、撃たないとイポーテャさんが危ない!)


 一方、イポーテャは体勢を立て直し、ライオンに鋭い眼差しを向けた。


(ぐぅぇっ!? もうここまで!?)


 イポーテャはすぐにアサルトライフル@0でライオンを殴りかかる。


 しかし、銃はライオンに拒絶されてしまった。


 イポーテャは目を見開きながら弾かれ、隙を見せる。


(なにっ!?)


 そして、イポーテャの首元に勢いよく噛みつくライオン。


(勝ち!)


 イポーテャは手足を下に垂らす。そして、アサルトライフルを手放し、宇宙に落とした。

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