【17話 アーノルド君はどこにイルカな?】@@@@

 マサルンとンザールゥ、イポーテャは忙しく首を動かしながら、ひたすら暗闇を下りていく。三人は地味で静かな作業を続けていた。


 そして、マサルンはかわいた笑みをンザールゥに向ける。


「素晴らしい目をお持ちのンザールゥさん、アーノルド君はいつ見つけれそうですか? かっこ苦笑い」


 眉尻を下げながら首を横に振るンザールゥ。


「ミャーン、それはボクにも分からないミャ。頑張ってるけど、目に入って来るのはお魚さんばっかりミャ。とっても優秀なマサルンは、どこら辺にいるか勘でもいいから気付いたこと無いミャ?」


 マサルンは目を腕で隠しながら語気を強める。


「まず一つ言いたい、オレは優秀じゃない! かっこ涙目」 


「ミャー、ダメダメなマサルンは、アーノルド君の気配を感じ取ってないミャ?」


 腰に手を当てて胸を張りながら語気を強くするマサルン。


「オレは物凄い実力者だ! かっこニヤリ」


 イポーテャは硬い笑顔をマサルンに向けた。


「俺もなんでも器用にこなせる素敵なマサルン君に情報教えて欲しいなぁ」


 再び腕で目を隠しながらなげくマサルン。


「実はオレ、底辺な生き物なんですよ、かっこ涙目」


 ンザールゥは尻尾の先端を小さく揺らしながら暗闇を眺める。


(ミャッ、あそこで泳いでいる大きなお魚は何ミャ? 姿もちょっとおかしいミャ。ミャッ!? 姿がおかしいんじゃなくて、何かが背中にくっついてるミャ!)


 目を見開きながらイルカを見つめるンザールゥ。


(ミャッ!? なんでか分からないけど、その背中に子供が乗っかってるミャ! こんな真夜中にお外で子供が一人でいるなんてあり得ないミャ、アーノルド君ミャ!)


 ンザールゥは叫びながら武器をイルカに向ける。


「マサルン、イポーテャさん! アーノルド君を見つけたと思うミャ!」


 赤丸君の光をンザールゥが示した先に向けるマサルン。


「んでゃょ? どこに居るの、見えないよ? かっこ流し目」


 イポーテャも視線をンザールゥが指している方に向ける。


「んでぃぐ!? ンザールゥちゃんお見事、良く見つけたねぇ! 本当だ、何か変なのが居るよ!」


 目を細めながら暗い宙を睨みつけるマサルン。


「もしかして、見えてないのってオレだけ? かっこ冷や汗」


 イルカは全長二百五十センチメートル程をしていて、灰色のつるつるした皮膚をしている。そして、背中と尾にそれぞれヒレをつけていて、顔付近の両側からもヒレが一対横に伸びていた。


 また、イルカの背中には百十七センチメートル程の子供が乗っかっている。黒色の短い後ろ髪が首まで伸びていて、前髪は眉まで垂れていた。それから、黒い衣装をまとっている。


 ンザールゥはゆっくりイルカに近づいていく。


 一方、イルカはンザールゥの近くを回りながら泳いだ。


『ンフィルド! 背中に乗ってるやつをどけてくれー、泳ぎづらくて仕方ないよー! 楽になるために落としちゃうよ? それか、食べちゃってもいい?』


 目を見開きながら叫ぶンザールゥ。


「ミャー、子供がお魚さんの背中でぐったりしてるミャー!」


 マサルンも首をかしげながらイルカにゆっくり近づいて行く。


「ぐったりってどういう事だ、子供は生きてるのか!? かっこ冷や汗」


「分からないミャ。でも、ここに子供が居るのは確かミャ!」


「なんで魚の上に乗ってるんだ? かっこ冷静」


「なんでもいいミャ。理由は分からなくても、この子が子供を助けてる事実は変わらないミャ」


 マサルンとンザールゥの周囲をゆっくり泳ぐイルカ。


『重いんだよー、早く持ってってくれー! ンフィルド!』


 一方、イポーテャは尻尾を上げながら顔を引きつらせる。そして、イルカの背中を見つめた。


「奇跡だ! はっきり言って、俺は心のどこかで諦めていた部分があった。しかし、こうやって子供が無事でいる光景を見ると、嬉しくてたまらない」


 マサルンは笑顔をイポーテャに向ける。


「結果論になっちゃいますけど、オレたちが正しかったでしょう? かっこ笑い」


「ああ、今回は君たちの活躍は正解で、とても素晴らしい行いだ。警察官の俺よりも立派だよ」


 口の端と尻尾を上げてイポーテャを見上げるンザールゥ。


「イポーテャさんが来てくれて良かったミャ。来てくれてなかったら、ボクたちが子供を見つけるまで時間がかかってたかもしれないミャ」


 イポーテャも尻尾を上げながらンザールゥに笑顔を向けた。

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