【15-3】

 マサルンはクロスボウ@9を構えながら周囲を見渡す。


(しまった、取り乱してる間に敵の姿を見失った!)


 ハムスターはマサルンの足に向かって暗い空の中を素早く泳いでいく。


(ムッハー! にくー! 隙見せてるー! 好機チャンス!)


 そして、口を縦に大きく開けて、上下に生えている合計四本の前歯でマサルンの脚を挟み込む。


 顔をしかめさせながら吹き飛ばされて行き、悲鳴を漏らすマサルン。


「るふぇゅでぽ!」


 ハムスターは体を回転させながら宙に飛ばされて行く。


(にくー! にくの味おいしいー! 血の味うんまー!)

 

 体勢を立て直し、急いで周囲に赤丸君の光を放ち、宙を進んでいるハムスターを照らすマサルン。


(よし、見つけた! そんな無防備な姿見せるなんて、愚かだなぁ! 憎しみのこもったオレの素晴らしい射撃術をその身で体感しろ!)


 マサルンはクロスボウの銃口をハムスターに向けて、引き金を素早く引く。


 銃口から鋭い矢尻が姿を見せると、ハムスターに向かってまっすぐ飛んで行った。


 それから、クロスボウ@8は部品が稼働する音を鳴らしていく。


 射出された鋭利な矢はハムスターのすぐ横を突き進んでいき、静かに宇宙に落ちていった。


 苦笑いを浮かべながらハムスターを見つめるマサルン。


(うん? ……あっ、外した?)


『ジィー、ジイーッ(ムッハー! にくーめ! にくーい! にくーは大人しく食われてればいいのに!)』


 ハムスターは体勢を立て直し、マサルンに向かって移動を始める。


 真剣な眼差しをハムスターに向けるマサルン。


(来る……! えっと、グーがくる確率は十%、チョキが三十%、それでパーが六十%か。よし、オレの鋭利な矢で射貫いぬけば勝てる! 射貫いぬければ!)


 マサルンはクロスボウをハムスターに向けて、引き金を強く引く。


 そして、放たれた鋭い矢はハムスターの口の上下から伸びている前歯に見事命中する。でも、当たった矢は弾き飛ばされてしまう。


 ハムスターは後方に吹き飛んでいく。


(ムハァゥ! 爪の切り裂き攻撃しっぱいしたー!)


 同じく吹き飛んだマサルンは体勢を立て直し、ハムスターを睨みつける。


 ハムスターも体勢を立て直し、マサルンを見つめた。


(なまいきなにくー! でも、つぎこそしとめる!)


(うぅ、アイツもチョキだったのかよぉ。三十%は低くない数値ではあるけどさ)


 暗闇の中を直進していくハムスター。


(にくー! 大人しく食べられろー! ムッハアー!)


(よし、今度こそ攻撃成功させて退治してやる! 早くンザールゥの事助けてやりたいよ)


 マサルンはクロスボウ@7をハムスターに向ける。


(グーを仕掛けてくる確率は十%で、チョキが七十%、そしてパーが二十%! うぅ、七十%に行きたいけど、あえてもう一回チョキ!)


 クロスボウの引き金を引くマサルン。そして、銃口から矢がハムスターに向かって行く。


 ハムスターが口を大きく開けようとした瞬間、ハムスターの体のすぐ横を細長い物体が通り過ぎていった。また、矢が通り過ぎていくと同時に、体の側面に一直線の切り傷を刻んでいく。


 高い鳴き声をあげながら後方に吹き飛んでいくハムスター。


『ヴぇのっでぽ!』


 そして、マサルンも暗闇の中を吹き飛ばされていった。

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