【15-4】

 たかは怪我した片翼を休めさせながらンザールゥから距離を取っていき、暗闇の中を飛んで行く。


(カッタ! あの餌、思ってたより凶暴じゃねぇか! 食らう前に食われちまうよ、ちくしょう! 翼も痛いし、ここは一旦帰るか?)


 尻尾を立てて毛を逆立たせながら、たかを目で追うンザールゥ。


(ミャーン、攻撃は当たったけど、逃げてってくれないミャー) 


 たかはンザールゥを中心にして円を描くように飛び続ける。そして、首を横に向けた。


(カッタ? あれは何だ? 餌か? ……うむ、餌だ! しかも、二匹も居るじゃないか! ひゃっはー! それに、一匹は小さくて、柔らかそうな体じゃねぇか! 好機チャンス!)


 大きな翼を羽ばたかせて、高い位置に移動するたか。そして、翼をたたんだらハムスターに向けて急降下していく。


(そのうまそうな体、いただくぜぇ! カッタァ!)


 ハムスターは体勢を立て直し、耳を立てながら顔をたかに向ける。


(ンジャガリア!? べつのにくーが近づいてくる! しかも、ほかのにくーより弱そうだ!)


(そのまま大人しくしてろよ? 優しく仕留めてやるからさ!)


 脚を突き出して鋭い爪をハムスターに向けるたか


 一方、ハムスターは体をたかに突進させる。


 たかの鋭い爪がハムスターの体に接触した瞬間、爪は弾かれてしまう。それから、無防備な姿を見せるたか


 そして、ハムスターの小さな体がたかの胴体に衝突する。


 鳴き声をあげながら数枚の羽根を周囲に散らばせるたか


【れぢょゃぎー!】


(にくー! くるしんでるー! こうげき当たったー!)


(この野郎! 餌のくせに、体に傷つけてきやがった! ちんちくりんのくせに!)


 たかとハムスターは互いに反発し合うように吹き飛んでいった。




 ンザールゥはたかとハムスターの激しい争いをこわばった顔で眺めた。


(ミャッ!? 鳥さんが小さい敵さんに襲い掛かってるミャ!)


 マサルンも真剣な眼差しでハムスターたちの戦いを見つめる。


(くでゃ!? 敵同士が攻撃し合ってる! これは好機チャンスじゃないのか?)




 たかは体勢を立て直し、すさまじい速度でハムスターの上空に移動し、翼をたたんだ。それから、ハムスターに向けて急降下していく。


(ちんちくりんの餌! この素晴らしい体をお前の体にお見舞いしてやるよ! ちんちくりんすぎて耐えられないってのは無しな!)


 ハムスターも体勢を立て直し、耳を立てながら鼻を小さく動かし続ける。


(ムッハー! 弱いにくーがこっちに来るー! わざわざ食べられにくるなんて、あたまが弱いんだね! ンジャガリィ!)


 小さな体をたかに勢いよく突っ込ませるハムスター。そして、たかの体に命中させた。


 互いの体が触れ合った瞬間二匹は弾かれてしまい、反発するように吹き飛んでいく。


 そして、ハムスターは何度も体を回転させながら宙を進んでいった。


(ムッハァ! くやしー! 弱いくせに抵抗しちゃって、ゆるさない! ンジャガリィ!)


(カッタァ! こんちくしょう! 弱い餌なのに何度も抵抗しやがって! ちんちくりんらしく素直にやられろ!)


 たかも体を数回ほど回転させながら暗闇の中を突き進んでいった。

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