【15-2】

 マサルンは慌てながら赤丸君のあかりで周囲を照らした。


「ンザールゥ、この音って何!?」


 ンザールゥは目を見開きながら周囲を見渡し、両手の武器を強く握りしめる。


「ボクも分からないミャ! でも、近くに何かが来てるミャ!」


「何かって何!?」


「分からないから何かミャ!」


 ンザールゥは鋭い眼差しで周囲を見渡し続ける。


(ミャ、上から音が聞こえてるミャ)


 すぐさま頭上を見上げるンザールゥ。


「上に何かいるミャ!」


 マサルンも赤丸君を上空に向ける。


 明るく照らされた上空には、黄色い目をした黒茶色のたかが飛行していた。全長七十センチメートル程の大きさで、対になっている翼を大きく羽ばたかせている。また、足にはなめらかに曲がった大きなかぎ爪が生えていた。


 たかはマサルンに向かって勢いよく近づいていく。


 一方、マサルンは目を見開きながらたじろぐ。


「なんだこいつは!?」


 大きな翼をたたみながらマサルンに突っ込んでいくたか


【ピィヤアァーー(大物の餌だぁ! なんてついてるんだ!)】


 たかは大きな足を突き出し、鋭い爪を立てて向かう。


 こわばった顔のままたかを見つめるマサルン。


(グーが十%でチョキが七十%、そして、パーが二十%!)


 マサルンは咄嗟にクロスボウを横に振り、銃身をたかの体にぶつける。


 そして、鳴き声をあげながら吹き飛んでいくたか


【でぃゃっぺ!】


 マサルンも後方に吹き飛ばされながら叫ぶ。


「今だ、追撃しろ!」


「すでにそのつもりミャ!」


 ンザールゥは無防備で宙を泳いでいくたかを追っていく。それから、握っているなたたかに向けて振り下ろす。


(これでおしまいミャ!)


 一方、たかは体勢を立て直し、ンザールゥに立ち向かう。


(クソがっ! 大人しく餌食えじきになりやがれってんだ!)


 たかはカギ爪でなたの刃をひっかいた。


 すると、なたとかぎ爪が大きく反発するように弾かれて、互いの体は後方に飛ばされてしまう。ンザールゥとたかの間には十メートル程の距離が生まれた。


 そして、ンザールゥは体勢を整えながら叫んだ。


「追撃するミャ!」


 マサルンは顔をしかめさせながらなげく。


「暗いし、素早いし、キツイ!」


 たかにクロスボウを向けるマサルン。


(くっ! 標的が大きい訳じゃないから、確実に当てるの難しい!)


 マサルンは鋭い眼差しでたかを睨み続けた。




 一匹のハムスターが暗闇の中をのんびりと泳いでいた。


 ハムスターは全長十センチメートル程をしていて、純白の毛をまとっている。また、小さな黒い瞳をしていて、細長い尻尾を伸ばしていた。

 

 宙に体を浮かせたまま小さな鼻を細かく動かすハムスター。


(ムハ? あっちからえさのにおいがする?)


 ハムスターはマサルンたちが争っている現場に向かって暗闇を移動していく。


(あっちなんだか明るいような? それに、うるさい。あ、におい強くなった! おいしそう!)


 マサルンとの距離を詰めていくハムスター。 


(にくー? ……にくー!)


 ハムスターは口を上下に開け、マサルンの腕に噛みつく。しかし、鋭い歯は弾かれてしまい、後方に吹き飛ばされる。


(ムッハー!?)


 たじろぎながら遠くに吹き飛ばされて行くマサルン。


 そして、マサルンはクロスボウ@10の引き金を引いてしまう。


(どぅぇゎっ!? なにが起きた!?)


 また、軽い発砲音と共に鋭い矢が一本銃口から暗闇の中へ飛んで行った。


 すぐにクロスボウ@9の中から装置の作動音が小さく鳴り響く。


 クロスボウの矢の残り本数は9本。


 不意に放たれた矢はたかに向かって進んでいく。


 でも、たかに当たることは無く、深い暗闇に突き進んでいき宇宙に消えていった。


 一方、ンザールゥは目を見開きながらマサルンに顔を向ける。


「どうしたミャ!?」


 体勢を立て直し、大きく叫ぶマサルン。


「敵がいる!」


「そんな事分かってるミャ!」


「違う、そいつじゃない! もう一匹別のがいる!」


「ミャッ!? 退治できたミャ!?」


「まだ生きてる! しかも、無傷!」


 一方、たかは爪を立てて、ンザールゥの側面に勢いよく近づいていく。


(隙ありぃ! 早く餌になってもらうぜぇ!)


 ンザールゥは周囲を見渡し、たかを睨みつけた。


(ミャッ! 『別のボク』が、パーを出しちゃダメって言ってるミャ。金槌ハンマーで反撃ミャ!)


 握っていた金槌ハンマーを横に振るンザールゥ。


 だけど、たか咄嗟とっさにンザールゥの頭上に素早く移動する。


(こいつ! 油断してると見せかけて、反撃してきやがった!)


 ンザールゥの攻撃はなにもない宙を通過していく。


 それから、ンザールゥは眉尻を上げながら顔をしかめる。


(ミャー! 金槌ハンマーから重い感触が伝わってこないミャー! 攻撃外れたミャー!)


(カッタッタッ! 隙だらけだぜぇ!)


 上空からンザールゥの顔に向かって、口を大きく開けながら突っ込んでいくたか


 ンザールゥは正面を見つめながら黙り込む。


(ミャッ! 『別のボク』が、グーを出しちゃダメって言ってるミャ! それなら、なたで攻撃するミャ!)


 そして、たかはくちばしを使ってンザールゥの顔に襲い掛かる。


(決まったぁ! 早く餌になれぇ!)


 しかし、たかのくちばしがンザールゥの顔に触れた瞬間弾かれてしまう。


【ぽでゃっじぇ!】


 鳴き声を上げながら無防備な姿を晒すたか


 ンザールゥは隙を見せているたかに、振り上げたなたを勢いよく振り下ろす。


 刃はたか片翼かたよくに直線の切り傷を作っていく。そして、翼から羽が数枚ほど周囲に散らばっていった。


 甲高い悲鳴をあげながら吹き飛ばされるたか


【ガッダイデョギャー!】


 一方、ンザールゥも暗闇の中を大きく吹き飛んでいく。


(やったミャ! ボクの攻撃命中したミャ!)


 たかから剥がれ落ちた羽は宇宙にゆっくり落ちていった。

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