【13話 立ち止まっちゃダメミャ!】

 マサルンとンザールゥは武器をたずさえながらホームセンターの外に出た。


 ホームセンターから放たれる光が周囲の空を照らしていて、暗闇が存在してない。


 そして、マサルンは目の上に手をかざしながら空を見つめる。


「外明るーい! 今って夜だよね、夜でいいんだよね? かっこ冷や汗」


 ンザールゥは眉尻を下げながらかわいた笑みを浮かべた。


「なに言ってるミャ? 夜に決まってるミャ! さっきボクたちお夕飯食べてたミャ」


 白い鞄からンサ電池を取り出しながら小首をかしげるンザールゥ。


「……ミャ? あれはお昼ご飯だったミャ? どっちミャ?」


 マサルンは小さめの黒い鞄の中のンサ電池を掴む。


「いやいや、どう見ても店の明かりで空が照らされてるだけでしょ。本気で昼だと勘違いしてるやつが居るなら、オレは優しく頭を撫でてあげたいね、かっこニヤリ」


 ライトニングガンの下部にンサ電池を押し込むンザールゥ。


「その優しさには、どこか悪意を感じるミャ」


 マサルンも赤丸君とクロスボウの下部にンサ電池をそれぞれの差しこんでいく。それから、黒い鞄から鋭い矢尻の矢の弾倉を一個掴み取ったら、クロスボウの下部に突っ込ませる。


「さぁ、アーノルド君を探しに行く準備は整った。といっても、やっぱり道具が万全じゃないのが不安だけど、かっこ冷や汗」


「そんな事ないミャ、ちゃんと外で生きていけるだけの準備は整えれたはずミャ」


「”はず”って……やっぱり不安要素あるんじゃないかよぉ、かっこ涙目」


 眉尻を下げながら首を横に振るンザールゥ。


「人生に完璧な事なんてないミャ。どんなに準備しても必ずうまくいく保証はないミャ。逆に、ちょっとした事でも大きな成果につながる事もあるミャ。反対に、少しの事で大惨事になるかも知れないミャ」


 ンザールゥは眉尻を上げて語気を強める。


「だからといって、失敗を恐れて動かないという選択はだめミャ、何も起きないミャ」


 かわいた笑みを浮かべながら頭を掻くマサルン。


「なんか、今だけはンザールゥがたくましく見えるよ、かっこ微笑ほほえみ」


 ンザールゥは頬を膨らませながら武器を振り上げる。


「”今だけ”ってなんミャ! ”いつも”の間違いミャ!」


「それで、次はどこに向かおうか? 東門、それとも西門? やっぱり南門? 北門から行く? 素直に下門から? かっこ冷静」


「ボクはなるべく移動の時間を減らす為に下門から行くのがいいと思うミャ。目的地までの最短の道ミャ」


「あれ、今の言葉全然ンザールゥっぽくない、かっこ冷や汗」


 尻尾を左右に激しく振るンザールゥ。


「ボクだってちゃんと考えられるミャ!」


「うんうん賢い賢い。……じゃあ、すぐに下門に向かおう! かっこ決め顔」


「ミャッ、ゴーグルを顔に掛けていくミャー」


 マサルンは目を見開きながらたじろぐ。


「ドフッュッデォ!? 本当にンザールゥはえてるなぁ、かっこ冷や汗」


「今着け忘れたらそのうちどこかで無くしそうミャ」


「万が一戦いになったら、存在を忘れてて宇宙に落とす自信はあるよ、かっこ苦笑い」


 マサルンとンザールゥはゴーグルで目をおおい隠すように頭に掛けた。


 そして、マサルンはンザールゥの顔を見ながら微笑む。


「いやぁ、ンザールゥちゃんのゴーグル姿似合ってるねぇ! 元の可愛さにゴーグルが加わった事によって、野生味感じるかっこよさが出てて惚れ惚れしちゃうよぉ! かっこ笑い」


 尻尾を垂らしながら小さなため息をつくンザールゥ。


「その言葉が褒めてるのかおちょくってるのか分からないミャ」


「それは、オレの目を見れば分かる事だろ? 嘘をついていない綺麗な瞳をしてるはずだ。店の明かりもあるし、ンザールゥの暗い場所でもよく見える目もあるし、『暗くてよく見えなかったミャー』は無しだぞ! かっこニヤリ」


 ンザールゥは微笑みながら親指を立てる。


「大丈夫ミャ、しっかりゴーグルでへんてこな顔になってる素晴らしいマサルンの顔が見えてるミャ」


 照明器具を握った手を口に添えながら硬い笑みを作るマサルン。


「え、ゴーグルを着けたら、普段よりかっこいい姿になってて惚れ惚れしちゃうって? オレよりは下手だけど、褒めるのが上手くなったなぁンザールゥ! かっこニヤリ」


 ンザールゥはかわいた笑みを浮かべながら尻尾を左右に勢い良く振る。


「マサルンはいつからそんな恥ずかしがり屋さんになったミャ? 誤魔化す必要無いミャ、もっと素直にボクのこと認めてもいいミャ」


 マサルンとンザールゥは店の前で騒がしい声を周囲に響かせながら体を宙に浮かせていく。そして、真下に広がる暗闇の中にゆっくりと下りて行った。

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