【12話 お買い物? いや、戦闘準備だ!】

 空中にとても大きな島が吊るされていた。また、島の大きさに比例して広い面積の建造物が建てられていて、建造物は明かりで輝いている。


 建物から放たれる明かりによって、周囲に暗闇が広がる隙は無い。


 そして、マサルンとンザールゥは大きい建造物の前にゆっくり着地した。


 マサルンは目の上に手をかざし、目を細めながら呟く。


「夜でも明るい事は良いんだけど、近くに住んでいる人は快適に眠れ無さそうだね、かっこ苦笑い」


 手で目を押さえ、指の隙間から建物を見つめるンザールゥ。


「でも、この光のお陰でこのあたりのお空は安全になってるミャ」


「確かにそうなんだけどさぁ……あっ! ンザールゥ、今ってまぶしい? かっこ冷静」


「正直に言ったら、眩しいミャ」


「よし、今度はンザールゥが警備する番だ! この大きな島の空を見張っててくれたまえ! かっこ決め顔」


「ミャーン、ボクも一緒にお買い物するミャー」


 マサルンとンザールゥは輝く明かりを放つホームセンターの出入り口に向かう。


 マサルンが出入り口に近づくと扉が真ん中から二つに割れて、それぞれ左右に滑るように移動していった。


 二人が店内に入ると、凄まじい数の商品棚とそれ以上の商品が出迎える。


 そして、ンザールゥは尻尾をくねくねさせて、目を輝かせながら辺りを見渡す。


「ミャー! じっくりお店の中を見て回りたいミャー」


 引きつった顔を作りながら細めた目をンザールゥに向けるマサルン。


「いやいや! アーノルド君が危ないのにのんびり買い物堪能してる暇無いって、ンザールゥが言ったんでしょ! かっこ冷や汗」


 ンザールゥも目を見開きながらうなずく。


「そ、そうミャ! ゆっくりしてる暇なんか無いミャ! それで、まずは何から買うミャ?」


「それは決まってるでしょ、危険な生物に遭遇した時の為に武器は欲しいよね、かっこ決め顔」


 尻尾の先を振りながら腕を組むンザールゥ。


「ミャー、武器も欲しいミャ。でも、アーノルド君がお腹空かせてた場合を考えて、食べ物を最初に買いたいミャ」 


 マサルンも腕を組みながら眉をひそめる。


「それを言ってしまったら、怪我してるかもしれないから薬も買わなきゃいけなくなるけど、かっこ冷静」


「それを言っちゃったら、自力で水分を補給出来なくなってるかもミャ。喉がかわいて苦しいはずミャ」


「食べ物と飲み物どっちも持って行ってもアーノルド君を連れ帰る前に凶暴な生物に襲われたら意味無いから! かっこ冷静」


「ミャーン……」


 ンザールゥは眉をひそめさせ、言葉を詰まらせた。


「今回はじゃんけんで決めるまでもないミャ、マサルンの意見が正しいミャ。ボクたちが道中で倒れたら意味がないミャ」


「珍しく今回はンザールゥの頭がえてる! かっこ笑い」


 小首をかしげながら呟くンザールゥ。


「珍しくってなんミャ? いつもえてるミャ」


 マサルンは無表情で言葉を漏らす。


「そうだね、かっこ真顔」


「武器はどうするミャ? 本物の武器を買っていくミャ? それとも、武器になりそうな道具を使うミャ?」


「うーん、個人的にはしっかりとした武器を買いたい。性能が高い分値段も高くなるかもしれないけど、オレは自分の安全を確保したいからね、かっこ冷静」


 マサルンとンザールゥは店中の天井を見上げる。


 天井からは横長の長方形の案内板が吊るされていて、店中のあちこちに同じものが沢山あった。


 それから、ンザールゥは『戦闘用武器』と書かれている案内板に近づいていく。


「それだとたぶん、マサルンはしばらく自由に買い物が出来なくなるミャ」


 マサルンも周囲の商品棚を見渡しながらンザールゥの後ろをついて行った。


「しょうがないだろ? ここでオレの人生が終わるわけにもいかないし、アーノルド君の人生ももっと続くべきだ、かっこ決め顔」


 二人が店中を進んでいくにつれて、商品棚や床に並べられている商品が物騒になっていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る