【4-4】

 マサルンは赤い外壁の家から少し離れた場所で、町の景色を呆然と見つめていた。


 そして、手を振りながらマサルンの背中に駆け寄るンザールゥ。


「ボクも一緒にいくミャー」


 マサルンは眉尻を下げながら首を横に振る。


「いや、ンザールゥまで巻き込むわけにはいかないから、家に帰っちゃっていいよ、かっこ微笑ほほえみ」 


「アーノルド君の事も心配ミャ。だから手伝ってあげたくなっちゃったミャー」


「うーん、帰る時には外暗くなってるだろうし、気持ちだけ受け取っておくよ、かっこ冷静」


 眉尻を下げながら頭を撫でるンザールゥ。


「マサルンママにもお願いされちゃったミャ。このまま帰ること出来ないミャー」


 マサルンは目を細めながら微笑む。


「そういう事なら、今から丸二日一切休まずに一緒に居て貰おうかな? 勿論、寝る時間は一秒たりとも無いからね! あとは雑用係も兼ねて貰おう、かっこニヤリ」


 頬を膨らませながら拳を振り上げるンザールゥ。


「ミャー、厳しすぎる捜索活動ミャー! 死んじゃうかもしれないミャー!」


 マサルンは硬い笑みを作りながら人差し指を立てる。


「知ってるか? 大人のレデーには、二日以上寝ないまま仕事してる人がいっぱい居る事を、かっこ冷や汗」


 眉尻と尻尾を下げながら、手で耳を押さえるンザールゥ。


「怖がらせようとして変な冗談いうのはやめてミャー」


 マサルンは立てた人差し指を左右に振る。


「残念だけど、これは本当の事なんだよね、かっこ冷静」


「ちなみに、大人のレデーは二日以上寝てなくても問題なく生活できてるミャ?」


「これ以上この話を深掘りすると、一生釣りで獲物を釣り上げる事が出来なくなるよ。それでも聞きたいかい? かっこニヤリ」


「それは絶対にイヤミャ! 聞かなくていいミャ!」


「そうか、聞きたいか。なんて好奇心が強い子なんだ、かっこニヤリ」


 腕を組みながら何度もうなずくマサルン。


「実はね、二日以上寝ないままでいると――」


 ンザールゥは耳を手で押さえながらその場にしゃがみこむ。


「ミャー! 聞きたくないミャー!」


「すっごく眠くなるんだ、かっこ真顔」


 目を見開きながら姿勢を崩すンザールゥ。


「ミャー!」


「変な踊りの最中に悪いけど、これからどうするかを相談したいんだけど、いい? かっこ冷静」


 ンザールゥは微笑みながら親指を立てる。


「ミャ、納得できる答えを出せるか分からないミャ。けど聞いてみるミャー」


「アーノルド君をどうやって探したらいいかな? かっこ涙目」


「シンプルだけどむずかしい質問だミャー」


 腕を組み、眉をひそめながら尻尾を上下に動かすンザールゥ。


「ミャーン、子供が行きそうな場所を一か所ずつ回ってみるミャ?」


 マサルンは人差し指を勢いよくンザールゥに向ける。


「それ採用で! かっこ決め顔」


「判断が早いミャー! 他にも、警察の人から情報集めるのもありかもミャー」


「それ良い案! かっこ決め顔」


 眉尻を下げながら頭を掻くンザールゥ。


「よく考えないで決めてないミャ? あとは、サラさんのおうちのご近所さんから情報を聞くのはどうミャ?」


「それ気に入った! かっこ決め顔」


「全部の提案を実行する勢いだミャー」


 マサルンは顎に手を添えながら眉をひそめる。


「いやいや、実際に全部やっていかないと見つけられないでしょ? かっこ真顔」


「確かにそうミャー。じゃあ、全部やるとしてミャ、どれから先にやるミャ?」


 人差し指をンザールゥに向けながら小さく笑うマサルン。


「子供が行きそうな場所からやってみよう、かっこ決め顔」


 マサルンは頭を撫でながら引きつった顔を作る。


「で、子供が行きそうな場所ってどこでしょうか、先生? かっこ冷や汗」


 腕を組み、尻尾の先端を小さく動かすンザールゥ。


「ミャーン、そこら辺のおそらかミャ?」


「範囲広すぎでしょっ! かっこ驚き」


 ンザールゥは首をかしげながら指を頬に当てる。


「ミャー、じゃあ警察の人から情報聞いてみるミャ?」


「うん、確実性も高いからね。うん、決まり! 警察署に行ってみよう! かっこ冷静」


 笑顔を浮かべながら拳を突きあげるンザールゥ。


「ミャー!」


 ンザールゥの元気な掛け声をきっかけに、二人は体を空中に浮かばせる。それから、僅かに明るさを失った空を進んでいく。

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