【3-5】

 ンザールゥは眉尻と尻尾を下げながら空の中を移動していく。


(いつものマサルンだミャ、怒っても仕方ないミャ)


 ンザールゥは肩を落としながら隣のマサルンに言葉を投げかける。


「ズルっこどころか、放置した罰でマサルンがお菓子おごるミャ」


 腕を組みながら首をかしげるマサルン。


「ズルって、オレ何かした? かっこ真顔」


「ボクをわざと遅れるようにして、先に行ったミャ」


「えっ!? どっちが早く到着するか競争するって言ってなかったっけ? かっこ冷静」


 ンザールゥは尻尾と眉尻を下げながら呟く。


「言ってたミャ。でも、そこは空気読んでもう一回仕切り直すところミャ」


「空気読んだら、空が暗くなる前に早く家に帰ろうって行きついたんだけど、かっこニヤリ」


「ミャー、それも正解だから、もう何も言えないミャ」


 マサルンとンザールゥの体はゆっくりと上昇していって、頭上の岩の天井に近づいていく。


 周囲にはいくつもの小さな島が鎖で宙に吊るされ、地表には様々な施設が建てられている。


 ンザールゥはマサルンのアヒルが入ったかごを見つめる。


「さっき釣ったその子は、どうやって調理する予定ミャ?」


「こいつの今後の処遇は既に考えてあるよ。でも、教えたらきっと驚くだろうから、あまり言いたくないな、かっこ流し目」


「ミャ? 大掛かりな料理でもしようとしてるミャ?」


「いや、そういうわけじゃないけど、想像を超える答えだから、これを聞いたらンザールゥがびっくりしちゃって、もしかしたら気絶するかもしれない、かっこ冷や汗」


 両手で目をおおい隠すマサルン。


「もしそんな事になってしまったら、ンザールゥの体は宇宙に落ちてって、二度と会えなくなっちゃうよ。オレはそんなのイヤだよ。だから、言いたくない! かっこ涙目」


 ンザールゥは目を見開きながら両手で口をおおう。


「ミャー!? 気絶するほどのことを考えてるなんて、マサルンは天才ミャ!」


「褒めてくれてありがとう。それで、教えなきゃそれはそれでンザールゥの気持ちがモヤモヤしてスッキリしないだろうからなぁ。うーん……聞きたい? 教えてあげようか? かっこニヤリ」


「教えて欲しいミャ! 万が一ボクが気絶しても良いように、足場がある所で教えてミャ」


「了解。じゃあ、あそこの家の前で話そうか、かっこ微笑ほほえみ」


 両手をあげながら笑顔を浮かべてうなずくンザールゥ。


「ミャッ」


 二人は一番近くの小さな島に上陸する。


 そして、マサルンは大きく深呼吸をした。


「まず、家に帰ったら羽を抜いていって、食べやすいように処理しようと思う。それから、素材の味を十分に味わう為に、ありのままの姿で火に通して、生の部分が残らないように時間をかけてゆっくり焼いていこうと思う、かっこ冷静」


 ンザールゥは顔の近くで手を組みながらを目を輝かせる。


「それから一体どう調理していくミャ?」


「調味料は一切使わないつもりでいこうとしてたけど、胡椒こしょうを振りかけてこうばしさや辛さを加えても良いし、タレを塗って甘く仕上げるのも良いかもしれない、かっこ笑い」


「その時点でもう美味しく仕上がってるミャ!」


「でも、ひとつ大きな問題があるんだ、かっこ涙目」


 眉尻を下げながら首をかしげるンザールゥ。


「どんな問題が待ってるミャ?」


「これらの工程はすべて自分でやらなければいけないんだけど、今日は少し疲れてるから料理に力を入れたくない気分なんだ。だから、羽を処理した後は素焼きで行こうと思ってる、かっこニヤリ」


「っていう冗談からの、どんな凄い料理が待ってるミャ?」


 マサルンは硬い笑みを浮かべながら頭を掻く。


「素焼きで手抜き料理で行こうと思う、かっこ笑い」


「期待させといて、それは無いミャー!」


「ンザールゥ、怒りすぎ! かっこ涙目」


「マサルンの美味しい料理ボクも食べたかったミャ!」


「えっ、いつのまに食べさせる予定になってるの? かっこ冷や汗」


「マサルンの料理の味見役ミャー」


 マサルンとンザールゥは体を宙に浮かせたら、笑顔を浮かべながら一緒に空の中を進んでいく。

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