【2-3】
ンザールゥは目を見開きながらたじろぐ。
(『別のボク』がパーを出したらダメって言ってるミャ!)
(ンザールゥの次に出す手は、グーが十%でチョキが十%、パーが八十%ね。これは決まった! オレの引っかき攻撃で、驚いた顔と勝利をいただき!)
しかし、ンザールゥの体に爪を当てたマサルンの手は弾かれてしまい、無防備な姿を晒してしまう。
(あれ!? 安全な選択を選んでたはずだよね!?)
そして、ンザールゥの拳がマサルンの体に突き進んでいく。
(ミャ? マサルンの攻撃が弾かれてるミャ、いきなりボクの勝ちミャ?)
マサルンはンザールゥの拳を受け取り、吹き飛ばされて行った。
後方に吹き飛んでいくンザールゥ。
それから、マサルンは体勢を立て直し、引きつった笑みを浮かべる。
「まさか、こんな攻撃でオレが死ぬと思ってないだろうな? かっこニヤリ」
体勢を立て直し、頬を膨らませながら拳を突きあげるンザールゥ。
「危ない攻撃なんてしてないミャ、するつもりもないミャ!」
(次にンザールゥが仕掛けて来る攻撃は、グーが七十%でチョキが十%、パーが二十%か。今回もオレの勝ちが決まったかな? はむはむ攻撃だ!)
(『別のボク』がチョキを出しちゃダメって言ってるミャ。次は甘噛みを仕掛けてみるミャ)
マサルンとンザールゥは、互いに相手の腕に目掛けて走り出す。相手との距離が縮まったら、口を大きく開けて白い歯を見せ合う。そして、ンザールゥの口が先にマサルンの腕を優しく挟み込む。
しかし、ンザールゥの口は弾かれてしまい、後方に飛ばされて尻もちをついた。
噛みつきが弾かれてしまい、後方に吹き飛ばされるマサルン。それから、地面に尻を付けて座ってしまう。
マサルンは微笑みながら叫ぶ。
「痛いよー、ンザールゥの歯が腕に食い込んだ! 相手の威力が上乗せされるの忘れてないよな!? かっこ涙目」
「そんなわけないミャ! 優しく口で挟んだだけミャ! それに、あいこで失敗したミャ!」
マサルンとンザールゥはすぐに立ち上がって体勢を整えていく。
そして、マサルンは鋭い眼差しでンザールゥを睨みつける。
(次に来る攻撃は、グーが三十四%で、チョキが三十三%、パーが三十三%、って、今回均等にばらけ過ぎでしょ!)
(『別のボク』が、チョキ以外を出せば勝てるって言ってるミャ。選択肢が二つに
マサルンは眉をひそめながらンザールゥに向かっていく。
(一%でも確率が高い事を信じて、パーを出していいのだろうか? うーん、しょせん一%だろ? 何を選んでも一緒でしょ)
真剣な眼差しを作りながらマサルンに向かって走るンザールゥ。
(決めたミャ、グーで攻めるミャー!)
マサルンは口を少しだけ開けた。
(いやいや、でも一%でも高ければ
ンザールゥはマサルンの体側面に向けて足を軽く振り回す。
ンザールゥの蹴りを脇腹で受け止めるマサルン。
「でゃっじゅ!」
マサルンはンザールゥから離れるように吹き飛んでいく。そして、地面に転がり落ち、そのまま寝そべった。
一方、マサルンの反対に吹き飛ばされたンザールゥ。体勢を立て直したら、笑顔を浮かべながら両手をあげてマサルンに駆け寄る。
「今回もボクの勝ちミャー! やったミャー!」
マサルンはとぼけた顔をしながらその場に立ち上がる。
「え、戦う意思が消えない限り負けないって決まりじゃなかったっけ? かっこ真顔」
尻尾を左右に激しく振りながら怒鳴るンザールゥ。
「それじゃ勝負が決まらないミャー! ……それと、一つ気になる事があったミャ」
「気にしたら負けだよ、かっこ冷静」
「気になるミャ! ……さっき、マサルンはパーを出そうとしてた気がするミャ。でも、ボクのグーに負けちゃったミャ。本当ならさっきの勝負はボクのグーが負けていたミャ」
ンザールゥは頬に指を当てながら首を
「もしかして、途中で別の攻撃に変えようとしてたミャ?」
「それはだね……秘密です、かっこニヤリ」
顔の近くで手を合わせるンザールゥ。
「隠す意味ないミャ、教えてミャー」
「仕方ないなぁ、ちょっとだけだよ? 実は、グー」
マサルンは喋ってる途中で素早く手を叩いた。
「はい、終わり! かっこニヤリ」
「本当にちょっとだけしか言わないのは無しミャ!」
「ンザールゥは欲張りさんだなぁ、かっこ苦笑い」
肩をすくめながら小さなため息をつくマサルン。
「実は、グーとチョキとパーどれを出すか迷ってた。オレの心の弱さが勝負に出てしまったよ、かっこ涙目」
「マサルンは決断力が弱いミャ。でも、同情して勝負の結果を変えるつもりは無いミャ。今回はボクの勝ちミャ、素直に負けを認めるミャ!」
ンザールゥは笑顔を浮かべながら尻尾を立てる。
一方、マサルンは眉尻を上げながらンザールゥを指さす。
「そんな後付けの決まりは無効です! かっこ冷静」
両手を目の下に添えながら眉尻を下げるンザールゥ。
「ミャーン、マサルンがお腹を空かせて困ってる姿をボクは見たくないミャー」
「あでゃっ、今回の勝負はオレの負けか!? 水滴が目から溢れて来るよー! かっこ涙目」
「ボクの見えてるものが正しいなら、マサルンの目は
マサルンは微笑みながら親指を立てる。
「オレの涙は心の綺麗さと同じで、透き通った色なんだよ! たとえンザールゥでも見ることは出来ない! かっこニヤリ」
笑顔を作りながら頬の近くで手を合わせるンザールゥ。
「清らかな心を持ってるマサルンは素敵ミャ!」
「でしょ? ……それで、勝負に負けたオレは何すればいいんだい? かっこ冷静」
ンザールゥは手を後ろで組みながら尻尾をくねらせる。
「一緒に釣りに行くミャー」
「ん? それはオレが勝った時に言おうとしてた事だけど、まさか、心が読めるのか!? かっこ冷や汗」
硬い笑みを浮かべながら首を
「ミャ? ボクにそんな力はないミャー」
「じゃあもしかして、何らかの手段でオレが何をさせたいかを知っていて、勝っても負けてもオレが悲しまないようにしてたって事か!? なんて優しいんだ! かっこ笑い」
マサルンは目元を手で
「感動して目から不純な思いが詰まった水が
「不純な思いってなんミャー。そんなむずかしい事は考えてないミャ」
「いやいや、
その場で
「ンザールゥ様、もしよろしければ、
「
無表情でンザールゥを見つめるマサルン。
「あのさ、オレもシンプルな質問があるんだけど、いいかな? かっこ冷静」
「どうかしたミャ?」
「二人とも同じ意見なのに、どうしてじゃんけんでどっちのいうこと聞くか決めようとしてたんですか? かっこ真顔」
「奇遇だミャー、ボクも同じこと思ったミャー」
マサルンは顎に手を添えて、目をつむる。
(あれれ? 無駄な時間を過ごした気がするぞ?)
ンザールゥも尻尾の先端を小さく揺らして、目を閉じながら顎に手を添える。
(ミャ? これじゃあ、ただ遊んでただけになるミャ)
しばらくの間、二人は静寂に包まれ、小さな風が赤い髪と青い髪を揺らしていく。
そして、マサルンとンザールゥは同時に目を開けて呟く。
「釣りに行こう、かっこ真顔」
「釣りに行くミャー」
二人はマサルンの家の脇に
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