村の決まり事

@mia

第1話

 八つの家族が住んでいる小さな村があった。

 村の近くに川がありおいしい水とたまに魚を与えてくれ、村を守るように囲む森は衣食住のすべてを与えてくれた。

 村から見えるたった一つの山に祈りや供物を捧げ、村人は生きてきた。


 村に七年ぶりの赤ちゃんが生まれた。

 村人はその子を弟のように、我が子のように、孫のように、ひ孫のように可愛がった。

 村人みんなに可愛がられて育った子は、十年後に村人みんなに嫌われてしまっていた。

 村にはいくつか取り決めがあったが、それを守らなかったからだ。

 

 森に生えている食べられる野草や薬草は、採り方を決めていた。

 あるものは根を残して採る。あるものは一株に何本か生えているので二、三本残す。

 翌年も採るために決めていたのを、根こそぎ取ってしまった。

 毒のある野草と食べられる野草、似ているものがあるので大人に必ず聞くように言っているのに、一人で採って勝手に鍋に入れてしまう。

 川では、水をくむ場所が決まっているのにそこで水浴びをする。

 祭壇と呼ぶには質素な木の台に寝転がったり、お供え物を盗み食いしたり。

 

 最初は子どもだからと大目に見ていたが、何回注意しても治らない、何年も同じことを繰り返す、そして、死にかけた人が出るに至って、みんなに見捨てられた。

 実の母親にも「生まれてこなければよかったのに」と言われたが、唯一、村一番の年寄りだけが「生まれてこなければよかった人などいなんだよ」と言っていた。


 男の子が十二歳になった年に異変が起きた。

 雨が降らなくなったのだ。

 山に祈りを供物を捧げたが翌年も雨が降らず、森の食料は乏しくなり、川の水もわずかになった。


 今までの供物では足りないと考えた村一番の年寄りはある決意をして村人みんなに伝えた。「特別な供物を捧げよう」と。

 特別な供物を捧げた四日後に雨が降り始めた。

 大喜びの村人みんなで感謝の祈りと供物を捧げた。

 年寄りの言葉があの母親に聞こえた。


「生まれてこなければよかった人などいないといっただろ。人は何かの役に立つのだ」

 

 


 




 

 

 


  

 

 

 

 

 

 

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