第2話 結婚と出産

 22世紀末、工業化が進み、年中、光化学スモッグが観測され、各種ウイルスが蔓延している各国で、人々は外出時に、ゴーグルと高性能マスクが不可欠になっていた。


 外出禁止令が発令される事も多く、アウトドアなどという言葉も死語になっていた。

 学校という形態は建物すら無くなり、自宅にて好きなタイミングで、全国統一オンライン授業を受ける生徒達。国語、数学、社会、理科、第一外国語という5教科の基礎学習は必須だが、それ以外は好きな教科を自由に選択する事が出来る。

 

 左手首のバーコードで、機械はどこにおいても人物を認識出来ていた。

 人間同士は、お互い登録済みの相手のみ、耳元の低音アラートで知らされるが、それ以外の人物は、外ですれ違う場合、相手が誰だったのか、認識出来ない。


 全人類の遺伝子情報は、政府の主要機関によって掌握され、その遺伝子情報を元に、最高水準の子孫が残せるパートナーを婚姻省が選定し、人々は例外無く、そのパートナーとの結婚が義務付けられていた。


  恋愛結婚やお見合い結婚などという言葉自体、この時代からは淘汰されていたものの、映画や時代劇を通し、過去に存在していた結婚形態を知る人も多く、憧れを抱く者も一定数存在していた。


 大抵は、パートナー片方だけの憧れであり、その気持ちを押し殺したまま、結婚し、出産後の多忙さで、いつしか、そんな憧れも薄れていくものだった。

 

 たまに双方とも過去の結婚形態に憧れを抱くカップルもいる。

 その場合は、過去の結婚形態の模倣を希望し、婚姻が遅延となったり、結婚に至らず破局し、生涯独身を貫くケースも有る。


 天上で降下を待たされている魂の宿り主となる子供の両親は、過去に習って、婚前恋愛を熱望したカップルだった。


 もしも、そのカップルが婚前恋愛期間中に破局した場合は、天上で降下を待ち望んでいた魂が、消滅する事となる。


 消滅した魂は、再生するまでに、また長い時間を要する。

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