第7話 観光案内
異世界から神降臨。サグラダファミリアにとって外国のお友達がやってきた。
アラー、ラーマ、カーマ、仏の四人が来日するということでサグラダファミリアは今観光案内プランを模索している。
「アラーはラーメンが好きだって聞いたけど」
ユダが、まわりの空気も読まず勝手に走り出す。マラソンに嫌悪感がある彼女にとって先走るという概念自体ないのかもしれない。
「ラーメン!?」
素っ頓狂な声を上げたのはヤコブとヨハネである。横にいたバルトロマイが目を見開き嫌味ったらしくわざとらしく耳を塞ぐ。
「僕イケメンだから無理だよとかってそういう話ですかね?w」
笑いを堪えながら自分のギャグセンスに恐れ慄かれるのではないかとドヤるマタイ。
これだから徴税人は世間の温度感を知らないと言われるんだ。冷めたピザよりも最悪なもの、それがマタイのギャグセンスだとナイスジョークをアラーたちに飛ばしたらきっと笑ってくれるだろうな、とほくそ笑むのが性格がナンバーワンで悪いタダイであった。
「ラーメン嫌いなの?好きだって聞いたけど」
仕事の早いユダである。すでに6件ピックアップして、アラーたちへメールを飛ばしていた。事後報告で済むのはセックスだけですよ、とまたジョークを思いついて笑いを堪えるマタイ。やはり金の計算が早いことは賢さと比例すると自己満足の境地を彷徨う。
「嫌いじゃないけど、なあ?」
「ああ、言いにくいけど」
バルトロマイが「どういうこと?!」とオーバーアクションで答える。
シモン・ペトロが察して釘を刺す、
「外国人のためにオーバーリアクションと、ボディーランゲージの練習しているんなら、それは無駄な練習だと思う」。
笑い声高く「HAHAHA」「これくらいにしておこうか。おっと失礼、ちょっと厠(かわや)へ」
後ろ姿にアンデレがとどめを刺すように言った「お前、立ち位置どっちだよ」
「オーケー、話を元に戻そう」
よくも悪くもバルトロマイは影響力が強い。皆が彼のやり方に引っ張られていた。
「フェイクfeat.ブスとラーメンと俺って曲知ってる?」
一同が驚愕する。名曲にして迷曲、あの歌は確かカーマとラーマのデビュー曲だった。どういう意図を持ってヒンドゥーを称えたのか謎に包まれ、今では魔界経典の域にまで昇華されあがめられ、年に一度供養祭りが行われている曰く付きの讃美歌でもあった。
「なんてことだ、、、」
引っ張られるトマス。疑り深いはずの彼がキャラ崩壊して信じ込んでいる。
「本家がいらっしゃるのに、あまりにもデリケートな飯屋だと思わないか?ラーメン屋なんて」とヤコブ。
ヨハネが祈りを捧げる「エリ、エリ、レマ、サバ九谷焼き」
フィリポが不覚にも噴き出す。せっかくラーメン屋という妙案が思い浮かんだのに!!自分のステージを掻っ攫われたことが面白くなくて、ユダがヨハネの頭を丸めた雑誌で殴りつける。
「イエス様の十字架の祈りをギャグにしてんじゃねえよ!!テメエ、ぶち殺されてえのか!!」
これはイエスさまの名前を利用した偽善である。だからイスカリオテのユダなんだとみんながダンマリを決め込む。
「アラーとカーマとラーマと仏は異教だよ?イエス様の祈りは関係ないのではないかい?」
ガブリエル!!!あなたもそこにいたのか!!!
もうすぐイースターの季節である。ガブリエルにとってバカンスの時期を意味するというのに、一番年長者が一番の働き者である。
こんなサグラダファミリアが観光案内を無事遂行できるのだろうか、、、
「仏、誕生日、4月だよね」
ラファエルが帳面を見ながら言う。
「甘茶だよね?確か」
ウリエルがコーヒーコーナーの整理をしながらミカエルに水を向ける。
「、、、甘茶だけは押さえておくよ」
マタイに目をやる。経費的にどうなんだと。一斉に同じ思いでマタイに目を向ける。あと二ヶ月あるのだからと期待を込めて。
「そんなにポンポン、ウィットに飛んだギャグ出てきませんよ!僕、芸人じゃないんですから!」
、、、誰もお前に宴会部長の役目なんか期待してねえよ、カス。
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