第3話 神様との会話

 征嗣は、予想外に伸びていた列の最後尾に並んだ。

 皆、願い事が多く有るようで、なかなか列は進まない。


 ここで何を願っているのだろうか、彼らは......?

 

 そもそも、我々は、生前に自分の生き方を決めて生れ落ちた。

 その元々決まっている人生のレールの上にいるだけだというのに、ここで、そのレールが急に湾曲する事になるとでも思っているのだろうか?


 ここで願った事が、たまたまそのレール上に有った場合、願いが叶ったと思わされるかも知れないが、それは、願いが叶ったわけではなく、元々自分が決めた生き方の道筋を辿っているだけだというのに。


 願いが叶わなかった場合は、彼らのレール上に、その選択が無かっただけの事で、神様が悪いわけでも、お賽銭が足りなかったわけでもない。


  そもそも、神様なのだから、わざわざ、本殿で願わなくても、その人の事など既にお見通しのはず。

 

 自分とて、結婚願望が無いわけでも無く、出世欲が皆無というわけでも無いが、ここで、それを延々と願うような事はしない。

 

 自分の決めた生き方なのだから、その中にそれらが有ったのなら、遅かれ早かれ望みが叶う事など分かっている。

 自分は今は、ただ淡々と、自分の出来る事をしながら生きるだけだ。

 

 神社は、神様に願い事をする場所ではない。

 自分がここに来た目的はただ1つ。


 神様との会話。


 会話と言うには、かなり一方的過ぎるが、それでも信じている。

 

  神様は、必ず相槌を打って下さっていると!


「ありがとうございます」


 自分からは、この一言に尽きる。

 いつでも、神様は、自分と共に有る。

 自分が、生前に決めた生き方を全うさせてくれている。

 

 今、自分が健やか幸せに、その人生というレールを歩めている事に感謝せずにいられようか!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る