第2話 神様の視点

 正月も旧正月も済んだと言うのに、わしをまだ休ませまいとして、この人混みかね。


 普段は、わしらの存在など無視していながら、年始や困った事の有る時だけ、思い出したように訪れ、細やかなお賽銭しか入れないわりには、貪欲にいくつも願う。

 人間の強欲ぶりには呆れたもんだ。


 1人でなかなか動かない女もいるのう。

 どれどれ......


「条件の良い結婚相手と出逢えますように!宝くじの1等と前後賞当てますように!今の職場より、条件の良い職場が見付かって私の実力が認められますように!もっと美しく若々しく、男性の視線を釘付けに出来ますように!運転手と家政婦付きで高級住宅街に住めますように!美味しい物三昧と旅行三昧出来ますように!専用デザイナーに似合う服を沢山作らせ注目されますように!」


 なんだ、この際限の無い願い事は!

 わしを何だと思っておるんじゃ!


 この女子おなごは極端だが、参拝に来ると、まあここぞとばかりに我欲むき出しになるものよのう。

 人間どもは誰も彼も、自分の事を分かっとらんな。


 神社と言うのは、願望を晒す場所ではなく、神というのは、ここで願った事を叶えるという存在でも無いという事を。


 哀しいかな、いつの間に、人間と言うのは、このような私欲の塊のような生き物になったのじゃろう。


 昔は良かった

 会話しようと思えるような人間が多く生きていたあの時代は......


 いや、待て、あれは......!!

 

 よもやいまいと思っていたところに、まだいたではないか!!

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