第35話 侵入者を拒むダンジョンの謎
眠れぬまま出立の時刻がきた。身体を起こしてエマを見る
寝返りを途中うっていたので顔がこちらを向いていた
(可愛すぎる…)
エマの可愛い寝顔。このままずっと見ていたい。首を横に振り理性をしっかり保とうと頬を叩く
ベットから起き上がり明かりを灯す。
薄暗い中で静かに身支度を整えているとベットから声が聞こえた
「ん。」
どうやらエマが起きたみたいだ。少しでもギリギリまで寝かせてあげたかったのだが起こしてしまったらしい。エマに声を掛ける
「おはよう、エマ」
エマが背伸びをしながら朝の挨拶をしてきた
「おはようございます。流様!」
朝から元気な声を聴けて僕の中にある邪な気持ちが払われた気がした
「準備できたら早速ダンジョンに向けて出発しよう」
「はい、すぐに支度します」
エマはベットから起き上がると服を脱ぎ始めた。
焦った僕はすぐさま止めに入る
「エ、エマ! 僕がいるんだけど!!」
エマは、はっ!と気づき顔を赤くする
「すっ、すいません。。。寝ぼけていました。。。」
「大丈夫。後ろ向いてるから、準備出来たら教えて」
そういって僕はエマに背を向けた
「はぃ」
か細い声で返事をするエマ。そのあと服を脱ぐ衣の擦れた音が聞こえる。今振り返れば裸のエマが見れるかもしれない。
欲望と理性の第二ラウンドが幕を開けた。5分程葛藤を続けているとエマが支度が終わったと声を掛けてくれた。
理性が再び勝利を収めた
「よ、よし。では行こう」
「はいっ」
フロントに鍵を返して静かに宿を後にした。外に出ると僕は『漆黒の翼』を出す前に周辺を【探知】を使って確認する。大丈夫。人の気配はない
『漆黒の翼』を発動してエマに言う
「じゃあ行こう!」
空高く飛び上がる。エマも続いて羽を出して飛び上がる、そして二人は目的地を目指して飛んだ
「クレマルクの町を最初は目指すよ! 近くまで行ったら上空からダンジョンを探そう。もし見つけられなければ一旦町に入って場所を聞く。」
「分かりました」
「ドワーレムの街からクレマルクの町までは歩いて半日ほどらしい。僕らなら1時間もかからず着くと思う。もし、ついて来れないようなら声を掛けてくれ」
「分かりました。足手まといにならぬよう頑張ります!」
飛びながら僕は今後の流れをエマに説明した。その後は軽く会話を交わしながら飛び続けると、当初1時間を想定していた道のりが30分でついてしまった。
「流様、アレ町ですかね?」
エマが指を指す
「そうみたいだね。ずいぶん早く着いたな! エマ、頑張ったね!」
「流様とお話していたらあっという間でした」
エマが笑顔でそう言う
町の上空まで来た時、一気に高度を上げた。
地平線の彼方まで見える。夜にこんな上空にいると星が地上まで続いてるように見える
この世界も地球同様に球体なんのだろうと思った。景色に感動しつつ、二人で手分けしてダンジョンを探す。すると再びエマが声を上げる。
「流様!あれは!?」
指さす方向に視線を送ると遺跡の様な物があった
「あぁ、多分あれだ!ありがとうエマ!君がいてくれて本当に助かるよ」
心の底からそう思ったので感謝の意を述べた。エマは少し照れくさそうにしながら微笑んだ
遺跡の前に降りると人間に見つかる可能性もあるので、少し離れた場所に降りて、徒歩で遺跡に向かった。上から見ていた時は大きさは分からなかったが下から見上げるとすさまじく大きな建物だと分かる
入口らしき場所まで行くとその大きさに驚いた。まるで巨人が出入りしてるような大きな入口だ
「よし、行こうエマ!はぐれないように傍にいてね」
「はい!」
中に入ると明かり一つなく真っ暗だった。すかさず『導きの光』を発動する
光の玉が現れ辺りを優しく照らす。そのまま歩き続けるが、違和感を感じた
(おかしい。上から見た時もさほど奥行きある建物では無かった。なのになぜこんなに同じ景色が続くんだ?)
歩いても歩いても同じ景色が続くだけ。そんなとき魔王の言っていた音を思い出した
≪・・・入れない≫
もしかしたらこの事を言っていたのかもしれないと思った
「エマ、何かがおかしい。このままでは埒が明かない。一回引き返そう」
エマは流の提案に同意してすぐ来た道を戻り始めた。
歩いて1分程すると出口が見えてきた。
「そんな馬鹿な!?10分以上は歩いていたのに何で帰りは1分足らずで外に出るんだ?僕たちは入り口で留まっていたという事か?」
エマを見ると驚きの表情を浮かべていた
「エマ、一回町に行こう。このダンジョンの情報を探る。町に行き、情報を集めまたここに戻ろう」
「分かりました」
僕とエマは再び空に飛び上がり町まで飛んだ。夜に出てきてしまったため町は静寂に包まれている。人がいない場所を目指して降りた。
夜遅かったのでエマにフードを被らせ、自分も『認識疎外の仮面』を装着した
「こんな時間だと…酒場だ。酒場に行ってみよう!」
町を少し歩き酒場を見つけたのでそのまま扉を開けて中に入る。数人の客が酒を飲んで顔を赤くしている。カウンターまで向かい腰かけた
飲み物を頼むとマスターが運んできてくれた。そのタイミングでダンジョンの事を聞いてみる
「マスター聞きたいことあるんだけどいいかな?」
「えぇ、私のわかる範囲で良ければ何なりと」
「この町の近くにダンジョンがあるでしょ?そのことについて知ってることを教えて欲しいんだ」
マスターは軽く頷き話を始めた
「忘れ去られたダンジョンですね。あのダンジョンはここ数百年入ったものがいないんです。
元々は何かに使われていた遺跡だとダンジョン研究をする学者たちは言っていました。中にある何かを隠すためか、はたまた、何かのトラップなのか分かりませんが、入り口から入っても延々と同じ景色が続くだけ。決して先に進むことが出来ないのです。何人もの冒険者が別の入り口を探そうとしましたがダメ。魔法使いも入り口にかかる魔法を消し去ろうとしましたがダメ。どれだけの人数が挑んだことか。ですが誰一人中に入れたものはいない。そんなダンジョンです」
マスターは知っている事を話してくれた。お礼にマスターも一杯飲んでくれと伝えた
「あっ、そういえば役に立つか分かりませんが、この町に、イルミという人物がいて、ダンジョンを研究しています。もし興味があれば」
「その人はどこに住んでるんだ?」
「町の外れにある屋根が植物で覆われた家です。町の住民からは魔女だなんだと言われていますよ。多分行けば分かると思いますよ」
そういって、マスターは作ったお酒を軽く掲げ、”乾杯”と言った
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