第34話 アレタチヌ

町を歩きながらダンジョンとクレマルクの町について情報を集めた


どうやら、魔王が言うように誰も行くことが無いダンジョンだそうだ


ダンジョンに入り進むといつの間にか出口に戻ってしまう


”中に入れないダンジョン”


とりあえずクレマルクの町を目指すことにした


朝日が昇る前に飛んでいけばすぐだ。


宿に戻り店主に早朝前に旅立つことを伝えておいた


(少し眠い。一回寝ちゃお)


部屋に戻るとエマが装備の手入れをしていた


「ただいま」


「流様! おかえりなさい」


「これ、お土産」


『蛇皮の鞭』を渡した


「えぇ! 私の為にこんな素敵な物を? いいんですか?」


「もちろん!エマが戦えれば僕も楽になる。 僕の為だと思って受け取って」


エマは『蛇皮の鞭』をギュッと抱きしめ喜んでくれた


「流様。ありがとうございます。絶対にお役に立って見せます」


「うん、ありがとう。期待してる。それで、早朝には出たいから少しこれから仮眠を取ろう。僕は下で寝るから、エマはベット使って」


「ダメです!私は下で寝ます。流様がベットをお使いください」


「いや、大丈夫だよ! いつも冒険で野宿は慣れてる。遠慮せず使ってほしい」


「私も大丈夫です。 流様を差し置いてベットで寝ることは出来ません!!」


エマは強気な姿勢を崩さない。


「でも、ほら、女の子だしさ」


「えっ…女の子って…その…」


エマは俯き頬を赤くした


「どうしたの?」


「いえ、何でもありません…」(女の子扱いなんて今までされた事ないもんー)


エマはモジモジしている


女の子の仕草から感情を読み取る能力は流にはない


二人の間に変な空気が流れていた


「あ、あの! もももし、りゅ流様が嫌でなければ、、、ふ、二人で寝ましょう!」


最後の二人で寝ましょうだけが大声になり宿中に響いた。と思った


「ええええええ、、、そ、それはいや、えぇぇ!? 」


エマは大きく深呼吸して話を続ける


「こ、このままでは、言い合いで朝になってしまいます。 ここは、ベッドを共有しましょう」


エマの気迫に押され、僕は首を縦に振った


僕は体を井戸水で奇麗にする為、一旦部屋をでた


(何もない何もない。寝るだけ寝るだけ)


うるさい心臓をなんとか抑えようと努めるが、しかし努力虚しく効果はない


妄想が膨らむ。だが股間の息子は膨らまない


緊張がピークを越えると逆に勃たなくなると僕は初めて学んだ


部屋に戻ると既にエマはベットで寝ていた。


近づいて顔を覗く


既に寝ている様で、寝息が聞こえる


少しほっとした


寝支度を整え蠟燭の火を消す


起こさないように気を付けながら、静かに布団に入る


隣で女性が寝ている


脈が上がり呼吸が荒れる


触れていないのに温もりが伝わる


時折、香るいい匂い。エマの匂いだ


少し手を伸ばせば触れられる距離。


近い


だが流には越えられない壁がそこに存在していた


手が偶然エマの尻尾に触れた


エマがビクッと動いた


「んっ」


寝言か寝息か声が漏れる


それが僕には艶めかしかった


(だめだ、寝れない…寝れるわけがない)


触れたい、抱きしめたい、揉みたい、嗅ぎたい、


流の中にある欲望が頭の中で暴れる


理性で抑え込む


今まで戦った何よりも強敵だった…



――――――


流様がお部屋の外にでられた


身体を清めに行くと


(ど、ど、どうしよう。なんであんなこと言ってしまったんだろう。大丈夫、ただ寝るだけだもん。そうよ、流様は雲の上の存在。私なんて興味無いに決まってる。大丈夫。何もない)


エマは夢魔だ。


今風に言うなら≪サキュバス≫という方が分かりやすい


本来であれば人間の男性に夢を見せ、その後性行為をする過程で精子と生気をもらう


だが、エマの一族は幼いころに自分を残して消えていた


エマは夢魔としての生き方を知らなかった


今は20歳。


だが純潔を未だ保っている夢魔だ


魔族の村で暮らして外を知らないエマにとって、人間の男性と寝るのは初めてだった


一緒に寝ようと勢いでも言えたのは夢魔としての本能なのだろう


異性と寝る


夢魔の性分が外に出ようとしていた。


しかし、それを分からないエマは必死に抑えようと努力していた


(だめ。もう何が何だか。先に寝ちゃえばいいんだ!)


流が戻ってくる前にベットに入り込んだ


ドキドキとワクワクがエマを寝かさない


10分程悶々としていると扉の開く音が聞こえた


暫くするとベットに流が入って来た


(き、きたーー。°どうしよう。恥ずかしいぃぃぃ)


エマの鼓動もかつてない程速度を上げていた


汗ばんでくる。


お腹の辺りがキュッとした


(なに。これ。何が起きてるのよぉぉぉ。もう収まれ私!!)


流の手が尻尾に触れた


身体に電流が走る


思わず声が漏れた


(声が出ちゃった。どうしよう…)


もっと触って欲しい、もっと触りたい、エマの中にある夢魔としての性分が暴れる


(流様にはしたない女だって思われたくない。私の英雄に嫌われたくない)


エマも流もそれぞれの思いを抱えながら寝付けない夜を過ごすのだった…

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