第33話 一つの部屋一つのベット

朝日が昇る時間が迫る


「エマ、僕の『漆黒の翼は』太陽が昇る時間は使えないんだ。一回降りよう」


「分かりました!」


二人で地上に降りる


既にシャンブリッズ領には入っている。


街道を歩けばどこかの町に着くだろう


二人で街道を徒歩で進む


「流様。町に入る時私はどうしましょう?」


「翼と尻尾は隠せる?」


「翼は隠せますが尻尾は…」


可愛い尻尾がぴょこぴょこ動いている


「じゃあ、とりあえず角も隠さなきゃだし、ごれを…」


以前、エマを王都から救出する際、シャルルがくれたローブを渡す


「ありがとうございます」


エマの嬉しそうな顔が眩しい


「もう人間の居る場所に入ってるから、それで頭まで隠しておいて」


エマはローブを着てフードを被る


「とりあえずそれでいいだろう。くれぐれも魔族だとバレないようにね」


「はいっ」


数時間歩き続けた


「ようやく町が見えてきたね!あの町で宿を借りて、ダンジョンの情報を集める事にしよう」


「はい! 私は何かお手伝い出来ますか?」


「エマはとりあえずは宿で待機していてくれ。魔族だとバレる可能性は少しでも減らしたい」


「分かりました。すいません…私の為に」


「いや、気にしないで。それに一人より二人の方が楽しいからさ!」


「はい♪」


エマは嬉しそうに微笑んだ


町の入り口には兵士が立っている


どうやらこの町は領地の中心なのだろう


領主の住む町は駐屯地が設けられ、警備も厳重だ


(ますます、動きに気を付けなければ)


流は気を引き締めた


町に入るとやはり発展している様でにぎわっている


この町はドワーレムと言って、鍛冶が盛んな町みたいだ


「ダンジョンは確かクレマルクという名の町だったよね?」


「はい。魔王様はそうおっしゃってました」


「そういえばエマってどう戦うの?」


「はい、あまり戦闘は得意ではないですが、短剣や鞭などは扱えますよ」


「なるほど。覚えておくよ!」


(ついでだからこの町でエマの武器も買っておこう)


しばらく町の中を歩いていると、宿屋を見つけた


「すいません」


「はーい」


店の奥から店主が出てくる


「すいませんお待たせしました。二名様ですね。すいません。今部屋が一つしか空いていなくて」


「私は問題ありません」


エマはそう答える


流は戸惑っていた


童貞の不細工男だった流に女性と同じ部屋に泊まる経験なんてあるわけがない


「う、うん。じゃじゃあそれで」


鍵を受け取り部屋に向かう


大きなベットが一つ


(ちょっと待て!!ベット二つちゃうんかい!!)


無意識に脳内妄想が始まる


(ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ)


心臓の音がエマに聞こえてないか不安になった


エマは部屋の中に入りローブを脱いだ


「ふぅ。疲れましたね!流様! あれ?流様?」


エマが話しかけても反応が無い


「りゅ・う・さ・まーー!」


大声に我に返る


「あっ、うん、あっ、どうした?」


平然を装う


「いえ、何かボーっとされていたので」


「あぁ、ごめん、ダンジョンの事考えていた」


嘘でごまかした


とにかく一旦外に出て落ち着こうと思いエマに指示を出す


「じゃ、じゃあ僕は一回外に出るから、エマはカギを閉めて中にいて。もし誰か来ても開けてはいけないよ」


「はい!ではお待ちしてます」


部屋を出て鍵を閉める


(とにかく一回落ち着かなきゃ…エマに下心丸出しの変態って思われたくない)


呼吸を整えながら町を歩いた


ダンジョンの情報集めと武器の調達


まずは武器屋を巡った


流石鍛冶屋の町、上質な武器が多い


「そういえば僕の剣もダンジョンでドロップした剣だし、何かいいのあったら買ってみよう」


魔法武器という看板を見つけた


「おぉ、なんか異世界感あるね!入ってみよ」


中に入ると棚に魔法の武器がずらっと並んでいる


――ゼシラスの剣

付与効果:剣に雷をまとい切りつけた相手を麻痺させる

金額:1800万ホーラ


――ウンディの精弓

付与効果:放つ矢に風の魔法を付与して飛距離と貫通力を上げる

金額:900万ホーラ


――粉砕の槌

付与効果:攻撃時、衝撃を幾重にも発生させ硬い物でも粉砕する

金額:300万ホーラ


どれも破壊力のある武器だ


だが、金額の破壊力も桁違いだ


店の奥に厳重に管理された武器を見つける


ーー茨の魔女の魔鞭

付与効果:鉄をも切り裂く茨を一本の鞭から増殖させて攻撃ができる

金額:販売不可


(なんだこのチート武器は)


思わず魅入ってしまう


店主が話しかけてきた


「すげーだろそれ。我が家に伝わる秘宝なんだが、誰も扱えなくてな。今では店のオブジェだよ」


「誰も使えないって?」


「伝承では数千、数万の茨を発生させるらしい。一振りで町を壊滅させるらしいぜ。だけど、誰が持ってもそんな発動しない。それどころか不適合者が持つとその茨、枯れちまうんだよ」


「ってことは専用武器か…」


「さぁな?まぁそもそも、そんな凄い武器が家みたいなチンケな武器屋にあるの時点で眉唾もんよ」


店主はそう言って笑った


「いい物みせてもらいました」


「おう兄ちゃんは冒険者か?」


「そうです。駆け出しですが」


「そうか!いっぱい稼いでうちの武器買ってくれよな」


「はい!また来ます」


「おう!」


店を出てまた違う店を探す


いくつかの店まわり、一軒の露店武器屋で足を止めた


「へい、いらっしゃい!いい武器揃ってますよ!」


店主が元気に呼び込みをする


並べられた武器に鞭を見つけた


「親父さん。この鞭は?」


「おっ、兄さんお目が高い!それは魔獣の皮でから作られた『蛇皮の鞭』ですよ。柔軟性と強度を兼ね備えた最高の逸品です」


「これいくら?」


「こいつは18万7千9百ホーラです」


「ちょっと安くして」


「分かりましたよ。それじゃ18万7千ホーラ」


「17万ホーラで」


「いやいや、それじゃさすがに…それじゃ18万1千ホーラなら!」


「17万5千ホーラ」


「17万8千ホーラ!これ以上はもう無理ですぜ!!」


「分かった。それで貰うよ」


「毎度あり!ありがとうございます!」


僕はお金を払い『蛇皮の鞭』を受け取った


(エマにいいお土産が出来た)


喜んでくれたらいいな、なんて歩きながら考えていると、ふと店に置いてあった商品に目がとまる


――蛇皮の鞭

蛇の魔獣からとれた皮で作られた鞭。強靭で粘りのある攻撃が可能

金額:15万ホーラ


「あーこっちの方が安い!!!」


店主にまんまと嵌められた…

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