第29話 ラッキー〇〇〇
ゲートを抜けるとガル―フェンの自室らしき場所に出た
「とりあえず、魔王のとこ行こうか」
「えっ!まままま魔王様ですか!!?? いきなり? こここ心の準備が」
エマは動揺した
「大丈夫だよ。別にいきなり襲ってきたりしないから」
僕は笑いながらエマをリラックスさせようとした
「でっ、でも…」
「平気だよ。僕がいるから! さぁ行こう。ついておいで」
僕は部屋を出て魔王の部屋に向かった
途中、魔族とすれ違うと、立ち止まり僕に挨拶をしてきた
魔王軍の中で僕は、幹部達と同じように扱われていた
「流様、いったい流様って何者なんです?」
エマは一向に落ち着きを取り戻せていないようだった
「ただの召喚勇者だよ。魔王軍に寝返った」
笑顔で答えた
「説明になってませんよぉ」
他愛もない会話をしながら進む
時間はあっという間に過ぎ魔王の自室についた
「魔王~!勇者だ!入るぞ」
中に入ると魔王と助けた魔族の子達がいた
「あっ!おかえりなさい!」
「勇者のお兄さんお帰り」
「無事に帰ってきてくれたぁ」
「エマお姉ちゃんも一緒だ!!」
それぞれが一斉に話し始めた
「ははは。皆元気いっぱいで良かったよ。ただいま!」
笑顔で答えた
「勇者よこの度は同族を救ってくれて感謝する」
魔王が前にでて僕に礼を言った
「いや、運が良かっただけだよ。気にしないでくれ。魔王の協力あっての事だし、あとはシャルルさんていう人間が協力してくれたからさ」
「…まさか人間が協力してくれるとは、未だに信じることが出来ない。だが、現状を見る限り事実なのだな」
「そうだよ。それについても話があるんだが、幹部会を開くんだろ? その時僕も言いたいこと、、、いや提案があるんだ」
「分かった。明日開かれる。貴様にも出席してもらうつもりだったから丁度良いわ。それで、その娘が囚われた者か?」
「あぁそうだ」
エマがその場で跪く
「お、お初にお目にかかります。わ、私、夢魔のエマ・レネーと申しましゅ」
エマは緊張しすぎて噛んでしまった。
跪いた状態からでも赤面しているのが見て分かる。
(可愛い…)
流はその姿を見て和んだ
「はっはっは。よいよい。そう緊張するでない。さて、娘よ。貴様の仲間含め我が庇護下に置く。今後は安心して暮らすがよい。静養の後、城下に住まいを用意しよう」
エマは突然顔を上げ、魔王に懇願する
「魔王様、発言をお許し下さい。私は両親、そして同族を人間達に奪われました。皆が生きているかどうか分りませんが、探しに行く機会を与えては頂けませんか?」
魔王はしばし沈黙する
「ならぬ。此度は貴様の実力不足で人間に捕まった。勇者が運よくその場に居合わせたため無事であった事を忘れるでない。次がある保証もない。故にその許可を出す事は出来ぬ」
エマは何も言い返せなかった。自分の無力さを的確に指摘されたから
魔王の言い分も正しい。 言い方は厳しくも諦めさせる為だと理解できる
魔王の優しさをエマも理解したのだろう
すると、解放した魔族の子供たちが口を開いた
「まおーさま。私達も戦いたい」
「おとーさんとおかーさんのかたきとりたい」
「人間と戦う力が欲しい」
魔王はその言葉に驚きを隠せなかった
小さな子供たちですら、戦う意思を示した
「…わかった。検討しよう。まずは、疲れを癒せ。子供達の処遇は悪いようにはせぬ」
魔王は少し嬉しそうだと僕には分かった
魔王軍は背水の陣。もう後がない
しかし、若き光が輝こうとしている。
まだ戦える。そんな可能性を見出したのかもしれないと、勝手に推測した
「ところで勇者よ。その夢魔の娘を貴様の配下に加えてはどうだ?」
「えっ?なんで?」
「貴様、我が軍門に寝返る条件で”魔族の美女を自分の配下にしろ”と言っていたではないか。夢魔は確か人間にとって美しく見えるだろう?」
自分の黒歴史を突然思い出させられて動揺した
「ばっ!おい!お前何言って!!」
「はっはっは。何を照れている。これで貴様との約束も果たせるな。安心したわい」
エマが、僕を変な目で見ている
「あっ違うんだエマ!これはその、魔王が勝手に作って…」
「流様…そんな理由で魔王軍に…」
完全に軽蔑の目を向けている
「あっ、それは過去の話で、僕もどうかしてて、あの今はすっかり忘れてて、その」
美女を配下につけろ
確かに言ったが、実は今魔王に言われるまですっかり忘れていた
今では心の底から成し遂げたい
その具体的な方法までは決まっていないが、魔王と人間の共存を実現させようと考えていた
過去のクズだった自分を恨む
「今は、ちゃんとした理由だから!ねっ」
「はっはっは。必死だな勇者よ。久々にそんな貴様を見れて、私は嬉しいぞ」
「うっさい!」
「大丈夫です。流様が下心で私を救って下さったとしても、救われた事実は変わりませんから」
エマは視線を合わせてくれない
「違うんだよ!信じてよ~」
エマに詰め寄る
足元がもつれて盛大に転んだ
「いてて、、、 うん? なんだこのプニプニは」
左手の平に未知なる感触
視線を向けると倒れた時にエマも巻き込んでいたようで、”偶然”流の左手がエマの右乳房を掴んでいた
意識とは裏腹に左手が動く
「あーーーー違うこれは、無意識にその運よく、じゃない、不可抗力で」
「き、き、き、きゃーーーーーーー」
エマの強烈なビンタが流の左頬を捕らえる
吹き飛んだ僕は気絶した
左手に柔らかな感触を感じて…
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