第28話 固定概念

部屋に入るとシャルルがソファーに座り、紅茶を飲んでいた


「シャルルさん!」


シャルルが振り向く


「おぉ!K、いや流様。ご無事でよかった!おかえりなさい!それで救出はどうでしたか!?」


僕はエマを見せた


「貴方が、王国に連れ去られた…さぞ恐ろしかったでしょう。無事でよかった」


シャルルは深々と頭を下げた


「同じ人間が行った行為。恥ずべきことです。申し訳ない」


シャルルは本当に申し訳なさそうな声で謝罪した


「あっあの、もう大丈夫…です。それに、貴方じゃない。むしろ貴方は私の村の子達を助けてくれたと流様からお聞きしました。ありがとうございました」


エマもシャルルに頭を下げてお礼をした


その場にいた四人はなぜか面白くなって笑ってしまった


「ですが、エマさんは本当に可愛い!私も連れ去ってしまいたくなる可愛さだ」


エマは顔を真っ赤にした


「も、もう!冗談でも怒りますよシャルル様!」


僕もシャルルの意見に心の中で深く同意した


「やっぱり、人間には可愛く見えるんだな!」


ガル―フェンが不思議そうに言った


「ガル―にはどう見えるんだよ?」


率直に聞いてみた


「う…あぁまぁ」


「ガル―フェン様。大丈夫ですよ私は。理解していますから」


ガル―フェンはバツが悪そうに頭を掻きながら言った


「俺には、その、化け物の顔に見えちまう。すまねーなエマちゃん。別にだからって嫌うわけじゃねーぞ。それが夢魔の特性って理解してるしな」


シャルルと僕は驚きを隠せない


「こんなに可愛い子が化け物に見えるとは!ガル―フェン様だけですか? それとも魔族全員ですか?」


シャルルは少し興奮気味に聞いた。 納得いかないらしい


「多分、魔族からはその嬢ちゃんは化け物に見えるだろうな。夢魔ってのは人間を誘惑して生気を吸い取り糧にする魔族でな。昔から人間に好かれる容姿で生まれてくるんだよ」


夢魔族のそれが特性だと理解した


「ガル―フェン様、エマ様、申し訳ありません。配慮が足りませんでした」


シャルルは申し訳なく思ったようで謝罪した


「いや、気にすんな。嬢ちゃんだってわかってるさ。それにお前さんと俺らは種族が違う。魔族と人間じゃ価値観の違いだってあらぁ」


「そうですね。正直、流様に今回お話を頂き協力してみて、魔族の方々にも”心”がある事を知りました。昔から魔族は野蛮な生き物と教育を受けていたので。分かってはいますが、やはり体験したこと以外は信用できませんね」


「そらぁ俺もだ。人間なんて私利私欲にまみれたこの星の害悪だと思っていたが、話してみりゃなんも変わんなかったな。変な気分だぜ」


流はシャルルとガル―フェンを見てると人間と魔族の共存も不可能では無いと理解した。それを邪魔している人間が国政をしている事も、騎士クラウドから聞いた話で理解していた


「それで、シャルルさん。不躾なのはわかるんですけど、お願いがあります」


シャルルは流の真剣な目を見て姿勢を正す


「なんでしょう?」


「僕は、今回エマを救出した時、偶然王国の上層部に潜む害悪の話を聞いた。多分世界中にはエマの村みたいに被害に遭ってる魔族がいるはずなんだ。それを救いたい。それには人間の協力者は欠かせない。このまま魔王軍に来てくれないか?」


シャルルは目を閉じて考えをめぐらす


「申し訳ない流様。魔王軍にこのまま向かう事は出来かねます」


「そう…ですよね」


「ですが、協力は惜しみません。この場だから言いますが、王国は魔族に酷い仕打ちをするばかりか、同族の人間すらもゴミのように平気で切り捨てているのを知っています。自らの私腹を肥やすため、同族すら貶める行為はもう我慢が出来ません。それに戦争を盾に重税をかして国民は疲弊しきっている。私は商人として、王国の国民として、人間として、そして流様の友として協力は惜しみません」


「あ、、、ありがとう。シャルルさん」


「流様は間違いなく世界を救うと信じています。もし、その力を間違った方に使いそうになった時は私が全力で止めて見せますよ」


そういうと笑いながら右手の拳でパンチして見せる


「ははは。それは心強い」


「では、私は一度王国にある自分の店に戻りますね」


ガル―フェンがシャルルと僕に何かを渡してくる


「おい、シャルルさんよ。コレもってけや」


「これは?」


「『ヘルツクリスタル』っていう魔法アイテムで、離れた場所でも通信できるアイテムだ。これは対で存在するアイテムだから、もう片方は流が持っとけ」


シャルルは目を輝かせて喜びをあらわにした


「いいんですか!!こんな貴重な物!」


「あんたは信用できる人間だと俺は感じた。あんたを信じる」


「ガルーありがとう」


僕もガル―に感謝した。


「気にすんなよ。じゃあ、シャルルを森の出口まで送ってくる。流は嬢ちゃん連れて先に魔王城に戻ってな」


そういうとガル―フェンは【ゲート】を開いた


僕はシャルルの元に行き手を差し出した


シャルルも僕の手を取り再開の誓いを立てた


「では、流様、ご健勝お祈りいたします」


「シャルルさんもご無事で」


ガル―フェンとシャルルが部屋から出ていくのを確認してエマに話しかける


「じゃあエマ、一緒に行こう」


エマと僕は【ゲート】をくぐった


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