第16話 鑑定依頼
散々苦労して手に入れた夢のアイテムは、使い物にならないゴミだった事にショックは受けたものの、思いの外早く立ち直った
「今回はダメだったが、チャンスはまだある。その為にも魔法のアイテムについてもダンジョンについてももっと情報を集めなくては。それに今回は“呪われた隷属の首輪”を見つけてすぐに引き返してしまったが、まだ地下に続く階段はあった。今度また準備を整えて行ってみよう」
とりあえず今は魔王から聞いた第九師団長の薬死王 ドラグマランティーノの下へ向かう事にした
ダンジョンでドロップした剣やバッグの効果なども鑑定してもらいたかったのだ
「剣やバックがせめて有能であればいいけどなぁ」
第九師団長の薬死王 ドラグマランティーノの自室は魔王城の外にある
彼の研究は聞いた限りでは、”毒と薬“のプロフェッショナルで【鑑定】のスキル持ちということもありアイテムを誰かが手に入れれば鑑定もするそうだ
魔法具収納室室長も兼任しているのはその鑑定の力あっての事だろう
魔王城を出て裏手の森に入る
100メートルほど進むと二階建のコンクリート構造のように見える家が現れた
「なんか無骨なデザインの家だな。多分あれが魔王の言っていた、第九師団長の薬死王 ドラグマランティーノの家かな?」
家の入り口にまで行くと扉をコンッコンッと叩いて声をかけた
「魔王軍の勇者だけど〜第九師団長の薬死王 ドラグマランティーノに会いに来ました〜」
しばらくすると扉が開く
中から従者らしき人物が出てきた
「いらっしゃいませ。ドラグマランティーノ様の下へお連れするように仰せつかっております。どうぞお入りください」
従者はマンドラゴラの姿をしていた
ドラグマランティーノは植物系の魔人だから配下も植物系なのだろう
(しかし、なぜ城の外に自室があるんだ?)
他の魔王軍幹部達は世界各地に拠点があるのと同時に、魔王城に自室が用意されている
だが第九師団は唯一魔王城の外に自室があるのだ。
どうでもいいことかも知れないが、少し気になった
従者についていくとそこには研究施設が姿をみせた
フラスコやビーカーが所かしこに並び、何に使うかわからない道具も並んでいた
理系男子ならヨダレが出るような光景だ
「勇者殿、こっちこっち」
声をかけてきたのはドラグマランティーノだった
「お久しぶりですドラグマランティーノさん」
「あぁ、ドラグでいいよ。僕の研究室へようこそ」
「すごいねここ。何を研究してるの?」
「ここは主に毒かな。、まぁ毒と言っても様々でね。君が当初魔王城を目指す時に、魔獣と出会ってるよね?」
「うん」
「アレは野生の動物を魔物化させてるんだけど、薬物なんだよアレ」
「うん、なんか前その話を誰かに聞いたけど、まさか魔法じゃなくて毒を使うとは」
「毒を摂取させることで体内における遺伝子情報を書き換えさせるんだ。そして魔素を大量に取り込む体に作り替える物だよ」
「ごめん、何言ってるかわからないや」
「ははは、ごめんね!研究者の悪い癖さ」
物腰柔らかいドラグは巨木が年数を重ねる事で徐々に魔素を蓄積し自我を持った存在
まさに動く木そのものだ。
「いや全然。話が聞けて嬉しいよ」
「ところで今日はどう言った用事かな?」
当初の目的をすっかり忘れて話を聞いてしまった
「実は先日、ダンジョンに潜ってね。そこでドロップしたアイテムをドラグに【鑑定】してもらいたくて
「あぁそういう事ならお安い御用さ。二階に僕の部屋があるからそこへ移動しよう」
ドラグと僕は二階へと移動した
二階には薬品ではなく魔道具を研究する施設があった
「ここはすごいなぁ」
「いやいや、みんな研究が好きな変わり者の集まる場所さ」
「なぜここは城の外なんだい?」
「簡単さ。危険だからだよ」
「あぁーなるほど」
「例えば一階にある設備は毒や回復薬のような、いわゆる“薬”を研究し作ったり再現したりする場所だ」
ドラグは話を続ける
「もしミスで魔王城に毒が流れてしまったら大変な事になる。魔道具だって暴走しないとも言い切れない」
「あぁなるほど。有事の際、魔王城に被害を出さない為だったのか」
「そういうことさ」
当初の疑問は解消した。あとは目的である【鑑定】をお願いするだけだ
「ドラグさんに頼みたいのは2点なんだ。まずはこの剣とこのバックなんだけど」
ドラグが座る机の上にアイテムを出した
「了解した。鑑定はすぐ終わるからそこに腰かけててよ」
ドラグに促されるまま部屋にあるソファーに座った
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