第9話 リア充共に死を

お腹も静まり僕は魔王と真剣に向き合い話を聞いた


「まず魔族と人類の話だ……」


魔王は思い出すように軽く上を向き話を始めた


「あれは500年以上前の事……」


僕はこの時一抹の不安を感じた


(あれ、コレ絶対長くなる……)


魔王は僕の知ってか知らずか話を続けた


「元々人類と魔族は同じ土地で暮らしていた。共存と言えば聞こえがいいが同じ土地に住みわけをしていたのだ」


交流という交流は特になかったが争いもなく過ごしていた

元々魔族は今よりも強大な力を持っていた

それは人類が今暮らしている土地は魔力が満ちているからだ

魔力が満ちている土地は木々生繫、美味しい野菜などが取れる

しかし人類は繁殖力の強さからかその数をどんどん増やしていった。

結果人類の保有している土地だけでは生きていくだけの食料を確保する事が難しくなった


そして人類は魔族の保有する土地に目を付けた

人類にも魔法を使う物は当時から多く居たが、魔力に愛されていた魔族は強力な魔法を放つ事が出来た為、初期は人類の侵略に抵抗する事が出来た


しかし、絶対数と人類の強みである【策略】に魔族は徐々に防衛線を下げざるを得なかった。


結果今の不毛の土地にまで追いやられたというのが経緯らしい


そして魔力の枯渇している土地では魔力が足りず魔族の弱体化を引き起こした

さらには食物の収穫が追い付かず、餓死者も多数だして今の数まで魔族を減らした


余談ではあったが今の魔王がその地位に就任したのもこの飢饉が関係していたらしい

スケルトンである魔王 ヴァルド・モルテは不老で不眠。さらには不食で食料を必要としなかった事が決定打になったようだ。確かにこの魔王城ではスケルトンを始めとしたアンデットが多い


「実はな我は元々、人間の死体に怨念が宿って生まれた存在なのだぞ」


「えっそうなのか?」


「もちろん記憶はない。だが最初は他のスケルトンのように生気に反応して襲い掛かるだけの存在であった。だが我は他と異なり魔力の絶対量が多く、気が付いた時には自我を持っていた」


この発言で一つの疑問が解決された。

スケルトンの繁殖ってどうやるのかずっと考えていたのだ。


つまりは骨子さん。いやオリビアも元々は人間だったのが死んでスケルトンになったという事だろう


人間の女の子らしい仕草。オリビアは絶対生前可愛かったと確信した


(いけない、また妄想ワールドに入ってしまった)


流は集中しなおした


「つまり今、魔族が人類に侵略を開始しているのは土地を取り返すためだったんだな」


「そうだ。このままでは魔族に未来は無い。だが人類はこの数百年で力も身に着けた。智と暴を持つ人類に弱体化した魔族が挑むのは些か不安ではある。しかしもう時間がない。このまま指をくわえて見ていては魔族の弱体化に歯止めが利かぬ」


「僕が旅している間に倒してきた”魔獣”と呼ばれる存在はなんなんだ?」


「うむ。あれは我ら魔族の秘術。野生に生きる獣を”魔族化”させて人間界に送り込んでいるのだ。」


「魔獣は人工物なのか」


「そう言う事になるな。自然発生するものではない」


「魔獣の繁殖はどうなってる?」


「繁殖とな? そこまでは分からぬ。野生の動物を我が軍の幹部が一人がその秘術を持って定期的に魔獣に変えているだけなのでな」


魔獣、魔族、魔人言葉の意味が分かってきた流は魔王に次の提案をした


「魔王。俺は魔族の国の事が全く分かってない。そこで国を自由に行動させてほしい。自分の目で見て聞いて、情報を得たい」


「ふむ。それは構わん。貴様は既に魔王軍が幹部。特に制限などしておらん」


「助かる。なぁ魔王」


「なんだ?」


「人類から取り戻そうな。土地」


「……感謝する」


魔王と握手して僕は部屋を後にした。


魔王の話を聞き人類に対して抱いていた僅かな罪悪感


自分の顔の醜さを馬鹿にした奴らだけでなく”人類”を滅ぼす


もしかしたら中には僕を差別するような事をしない人間もいるかもしれない


僕だって先日魔王に紹介してもらった女の子達を見て顔が可愛くないからチェンジなんて事をノリで言っていた。

そもそも子孫繁栄の為良い遺伝子を残そうとするのは本能だ


本能に従い皆僕を避けているに過ぎない……そう思う事でいくらかは心が楽になる


命を奪うと口にしていたけれど、命を奪う覚悟は出来ていない


僕の自己満足、いや、我儘で命を奪って良い物なのかいつも自問自答していた


そもそも、僕を虐めてきた奴らを元の世界で殺そうなんて考えた事なかった

あくまでもこの世界は僕にとっては異世界。気分的にはゲームの世界なのだ

しかし、現実に生きている。生まれた場所が違うだけで今いる場所も立派な”世界”なのだ


だが今僕は魔王軍に寝返った。


あの時は勢いで即答してしまったが今、魔王の話を聞いて何か憑き物が落ちた気がした


これで大義名分は整ったという感じだ


増えすぎた人類の考えも分からなくもない。しかしそれは後先考えず繁殖した人類が悪い


(リア充共が!!!!)


怒りの矛先が若干ズレてはいる気もするが僕は改めて、そして本当の意味で決意を固めた

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