第6話 よっといで花街。ここは良いとこ魔王城

魔王軍に入ってから一週間が経った


だいぶ環境にも慣れてきた。すれ違う魔物も僕を幹部だと知ったのか認めたのかすれ違う時は立ち止まりお辞儀をするようになってきた。これもガルとの戦いが噂になったからかもしれない。


ガルは第三師団長として実力も人望も厚い。そんな人物と戦い、友好関係を築いたからこその現状なのだと感じた


(ガルには感謝しかないな)


そんな僕は魔王の部屋へ向かっていた


魔王に大事な話があるからだ


これは友達に続く重要案件。いや場合によってはそれをも上回る案件かもしれない


「魔王、勇者だ!入るぞ」


僕は部屋に入り魔王の前に立った。威風堂々と。


「ど、どうした? 目が血走ってるぞ」


「魔王!! 今こそ約束を果たしてもらおう!!!」


「ど、、、どうした!?」


「約束の美女軍団! そろそろ俺の配下に用意してもらおうか!」


魔王はあっという表情を浮かべた。まぁスケルトンだから表情はないから分からないけど


「も、もちろん、だとも! 今丁度厳選していたのだ」


どうやら魔王は嘘が下手なようだ


「なら今から用意してもらおうか!!!」


鬼気迫る僕の勢いに負けた魔王は渋々女魔族の招集をかけた


――― ー時間後 ―――



「ふふふ。はーっはっはっは!!!勇者よ。刮目せよ。我が魔王軍が誇る粒ぞろいをそろえたぞ」


魔王は自信満々に鼻息を荒く戻ってきた


「待ってました!!! さぁ早速見せてくれ!」


「まぁ待て勇者よ。はやる気持ちも分からなくもないがゆっくりじっくり行こうではないか」


魔王の焦らしっぷりに僕の期待値もあがる


「それでは、我の一押しスケルトンの…」


すかさず僕は突っ込みを入れた


「ちょーーーーと待て!!! 俺は人間だぞ!!! 人間に近い顔にしろ! 」


「えーーーーせっかく用意したのにか? 声とかめちゃくちゃ可愛いぞ?」


完全に骨子さんだ。確かに声は可愛い。性格だっていいのは知っている。不甲斐なく欲情した記憶もあった。しかし今日は折れるわけにはいかない


「当たり前だ!!!せめて!いや百歩譲って、肉はついてる子にしてくれ」


僕は般若の如き形相で魔王に迫った


「わ、分かった、分かった! では 気を取り直して…」


魔王はゴホンと一つ咳をすると


「えーーエントリーNO二番、アラクネ族代表 魅惑の美貌を持つ スピルクリアちゃん」


魔王が紹介すると扉の外からボンキュッボンのナイスバディーを持った美女が入って来た

しかし顔を見るとそこには蜘蛛フェイス


「うぉぉぉぉい! 顔!顔が蜘蛛!! スタイル最高で人間ぽいけど顔!!!! というかせめて逆!!体蜘蛛で顔人間! いや、身体蜘蛛も嫌だけど!!!」


魔王は少しイラっとした口調で続けた


「では、エントリーNO三番 ラミアのラーネリちゃんどうぞ!」


魔王は既にキャバクラのボーイっぽくなっていた。意外とノリがいい


ズルズルと蛇が移動する音を響かせながらラーミアが入って来た


身体は蛇。いやそれはアニメで見るラーミアその者だから予測はしていた。しかし顔は確かに人っぽいしかし鱗まみれの顔はそれはもはや妖怪蛇女


「いや確かに顔人間ぽいけど鱗生えてるから!!!」


「いやそれはラーミアだし仕方あるまい?」


「いやもっと普通に人間ぽいのいるだろ!姿かたち人間だけど角だけ生えてるとかさ!!」


僕は魔王にイメージを必死に伝えた


「なるほど! それならそうと最初に言ってくださいよ旦那」


魔王は完全に花街の太鼓持ち化していた


「それでは続きましてエントリーNO四番 母性の完全体! 牛魔族の癒し系担当 カーウリナさんどうぞ!」


出てきた女の子は人間のような体、人間のような顔。人間との違いは顔の左右から一本ずつ途中で90°に曲がった角。しかし筋骨隆々。2メートルを超える身長。


「あってる!あってるけども筋肉つきすぎ!身長高すぎ!なんかこれじゃ僕が守られちゃうじゃんか!!!」


「いやでもご指定の容姿ですけどねぇ」


「いやサービス付いちゃってるから!筋肉オプションいらないから!!! チェーンジ!」


その後も魔王は数名呼んでくれたがTHE・魔物

どうやら後々話を何人かに聞いてみたが僕の【可愛い】と魔王軍の【可愛い】は根本的に違っている


魔王軍では僕はイケメン。その言葉で気付くべきだった。

美に関する概念が人間界とは真逆なのだ………


その日の晩。毛布に包まって僕は泣いた

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