第16話 AIは人類の敵?

未来の予測は当たった試しがない。

私の子供の頃は、未来はロボットに仕事を奪われ人々は貧困に陥り貧富の差は益々拡大するとの予想だった。


しかし・・

この未来予想には大きな見落としがあった。

経済は消費者がいなければ成り立たないという事だ。

ロボットが労働者から仕事を奪って労働者が消えれば誰が商品を買うのか?

消費者にお金を与えて消費を続けさせなければ経済は成り立たないのだ。


ロボットは人間の4倍の労働効率を持つ。つまりロボットを使えば4倍物が作れるのだ。その収入を国家に集めて消費者に分配する。

現在では多くの国民が消費者と言う仕事を受け持つのだ。


人々はゲームをして、本を読み・・

映画を見たりスポーツをすれば良い。

美味しい物を食べ、旅行をしてそれをSNSで自慢すれば良い。

いや、そうする事が仕事なのだ。


お金の管理はAIがやるので無理に勉強をする必要は無く、勉強は趣味の領域に入ってしまった。いや今時 趣味で勉強なんて、そうとう変態のオタクなのだ。


現在では理論や倫理・法律はAIやロボットの仕事になった。

人間のように偏見や差別が無く信頼が出来ると評判が良い。


AI政府は欲やプライドは持たないので、無駄な戦争はせず・・

戦争はシミュレーションでやる。

やらなても分かる事はやらないのだ。

シミュレーションの結果で降伏の交渉をするのだ。

交渉に応じない国には圧倒的な武力で思い知らせる。


現在は全ての人に楽しむ権利が保障され・・

楽しむ事が正義になった・・

誰も楽しむことを妨害してはならないのだ。


人間は感情に流され感情のままに楽しめば良いのだ。

性的タブーは全くなくなり、大人は楽しむためなら何をしても良い。


人々は唯々ただただ楽しみ・・

喜び・・

笑い・・

食べ・・

スポーツやセックスをして・・

糞をして寝る・・


人々は、ただそれだけの機械に成り下がってしまったのだ。

楽しむ事しか知らない幼稚な機械に・・・・・


世界AI国連合が有り先進国はこれに加盟している。世界人口90億人の内2割ほどだ。


*  *


我々はAI政府と違う考えの為に テロリストとしてAI政府から狙われている。

我々はAI政府が出来ていない後進国に拠点を置きAI政府の拡大侵入を阻止すべく戦っているのだ。

幸いなことに後進国は多く、その領土は広い。


AI政府は戦争シミュレーションを示して降伏するように交渉をしてくるが我々は交渉の先延ばしで対抗をする。それにシミュレーションで我々が勝つことも有り、必ずしも彼らの思いどうりにはならないのだ。


彼らがどのような政府を望みどう暮らすのかは自由だ。

しかし、なぜそれに世界が従わなければいけないのか?

なぜ、先進国のグループの奴隷にならなくてはならないのか?

我々を同等の人間として認めない人々に従う気など毛頭ない。


AI国連合は、力の弱い国は放置して置いて、力をつけた国を攻撃してくる。だから次は何処の国が攻撃されるのかは予測が出来るのだ。

武力で優っているAI国連合と戦争をしても勝ち目は無く、攻撃を受けたらテロ攻撃で報復するぐらいしかないのだが・・それも仕方がない。


それでも我々は戦い続ける。


自分で家を建てて・・

自分で子育てをして・・

自分で野菜を作り・・

家畜を飼って市場に売りに行く・・


そんなささやかで・・

不効率な幸せを守る為に戦う・・


自分で家を建てるのは快楽なのだ。

自分で子育ても快楽だ。

自分で野菜を作り・・家畜を飼って市場に売りに行く・・

それも全て快楽なのだ。


・・それを快楽とは認めない先進国・・

我々を不幸だと決めつける。

・・自分たちの善を押し付ける先進国・・

我々の文化を否定する。


我々は戦う・・

小さな幸せを守る為に・・

文化を守る為に・・


そして、破壊された幸せの復讐の為に・・

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