第3話 知性フェチ
私は地味で目立たない学生だ。じっさいサークルにも参加しないし、彼氏もいない。
親は裕福ではなく、学費しか出してくれないので、生活費はバイトで稼いでいる。
いつもバイトに追われていて時間は無いが、勉強は好きだ。
高校時代から化学が好きで東工大を目指した。
無理だと言われていたが必死に頭に詰め込んで根性で合格した。そんな女に可愛い子なんていないのだ。名前は松本流美21才。私の名前を揶揄して「惜しいところで美が流れてしまっている。」と男たちにからかわれるが私は笑って切り抜けている。どうせ彼らには興味はない。
私は、山下教授の研究室に所属している。そこではケイ素化合物を研究している。ケイ素化合物はコンピュータや宇宙産業など最先端技術の基礎となる研究だ。
その山下教授と私は月1で会合をしている。
私と教授だけの秘密の会合だ。
教授と私はホテルの近くのコンビニで待ち合わせ、飲み物や食べ物を買ってホテルにチェックインする。
ホテルの部屋に入ると教授は必ず私にハグをする。そして毎回 私にキスをして「会いたかったよ。」と言う。
彼の愛し方は まるでオカルト的で、それは毎回 儀式のように粛々と行われる 。
私がイクときも、教授がイクときも 全て設定された事のように、教授独特の形で進められる。
まるで黒板に書かれた公式のように。
私は彼の計算式の中で満たされるのだ。
私達はセックスの為だけに会っている分けではない、化学の可能性や未来について 2人で語り合うのだ。それは至福の時間であり、セックス以上の心の交流だ。
私たちにとっては心のセックスのようなもので、とても気持ちの良い時間なのだ。
教授が言う、
「構造的に炭素とケイ素はよく似ているだろう。解るよね?」
「電子的構造が同じですね。」
「炭素とケイ素は兄弟のように良く似ている、、だが自然界では炭素と水素が反応して炭水化物が作られ、、全ての生物は炭水化物で造られている。
もしだよ、自然界でケイ素が水素と反応すれば、シリコーン系の生物が生まれたはずだ。シリコーン系の生き物は炭水化物系の生き物に比べ、耐熱性が高い、380度ぐらいなら問題なく耐えられる。それに対摩擦にしても、対薬品にしても対放射線にしても、はるかにシリコーン系生物の方が上だ。シリコーンオイルの血液ならマイナス60度だって凍結はしないんだ。そう思うだろう!」
「でも地球の自然界の条件で、ケイ素と水素が結び付く事は考えられないですし、まして複雑な生命系を作り出すなんて可能性は無いんじゃあ無いですか?」
「そこなんだよ。考えて見ろよ、植物が酸素を作るように、我々人間ならシリコン系をつくれる。つまり言いたいことは、植物が酸素を作って動物系を支えている様に 我々人間がシリコーン系生き物を合成して支える、、その為に人類は化学を発達させたのだとしたら?!」
「なるほどね、炭水化物系の生物が宇宙を制するのは無理だから、人間にシリコーン系の生命を創ることを託した と言う事ですね、 神か・・何かが・・・」
「そうなんだよ、シリコーン系なら温暖化だろうが寒冷化だろうが問題なく耐えられるだろう? もし人間がシリコーン系で出来ていたらなら 寿命だって10倍以上になる。数十倍の対放射線能力を持ち3倍以上の耐熱性を備え、マイナス60度に体温が下がっても、凍りつかないんだ。そうなれば遠く過酷な宇宙に出ていけるだろう!?」
教授の考えは独創的で私を痺れさせる。私は 彼の独創性に興奮し、彼の知性に股間を濡らすのだ。
私は夢を見る、、
教授と私はシリコーン系の身体を手に入れる。シリコーンゴムの皮膚にシリコーンゴムの血管、そしてシリコーンの心臓や臓器を持つ。酸化チタンの骨格は軽くて筋肉との親和性が良い。血管の中を流れるのは液体シリコーンオイルの血液だ。シリコーンの体は劣化が少なく私たちは500年以上の命を手に入れる、そして2人で銀河系の深層を探検するのだ、、銀河の中心に存在するブラックホールの淵まで・・・
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