第4話 局長さんのヘルメットは66J

私はサリー

私が考古博物館の研究員になってから5年になる。

現在は州内の古代の遺跡に捨てられたゴミの研究をしている。

私の部署は男性ばかりで女は私だけだ。

男たちの会話は下品な冗談が多く付き合うのは本当に疲れる。


私の部署の局長はホリホーという人だ。

ヘルメットに66j書いてあり陰で66ジジイと呼ばれている。

私は66ジジイなんて言わない。

ホリホーさんは上品な方でとても紳士だ。

今時 紳士なんて珍しい。

私は局長さんを尊敬し、密かに敬愛しているのだ。


男たはちは仕事のことを冗談めかしてゴミあさりと言うが、

「ごみの中にこそ真実が眠っている。」それがホリホーさんの口癖だ。


局長さんは時々リュックを背負って新しい遺跡の探索に出かけるのだが、

そんな時はいつも私を誘ってくれる。

他の局員は「いつも一緒なんて怪しいよな。」と局長と私の関係を疑う。

私と局長さんの関係は怪しい関係なんかでは断じて無い。

局長さんは紳士で礼儀正しく、他の局員とは人間の質が違うのだ。


ある時局長さんと私は放射能汚染地帯の探索中に、最近崩れたと思われる斜面に洞窟へと続く入り口を見つけた。恐る恐る中に入ってみると中は思ったより広く奥に続いている。ライトをつけてさらに進むとチタンで作られたドアが有った。

そのドアは下の方が歪んでいて隙間が出来ていて、這えば何とか通れそうだった。


中に入ると中は広い部屋になっていて、何か古くて大きな装置があり、その装置の横には下方向に向かって大きなトンネルが作られていた。その装置から太いパイプが何本も出ていてトンネル中を下の方に降りている。おそらく下の階があるのだろう。


「何なんでしょうか?」

「多分、旧人類が使った動力源だろう。」

「1万年前に滅んだと言われている人類のですか?」

「見てごらん、放射能の数値がこんなに高くなっているだろう。」

「外で計った時の5倍はありますね。それに局長さん、温度もかなり高いですよ。」

「もしかしたら、この下にプルトニュウムが大量に有るのかも知れないな。」

「えっ!プルトニュウムですか? もしそうなら凄いことになりませんか。」

「うん・・もしそうなら大金持ちだな。」

と局長さんは不敵な表情で笑う。普段は見せない別の顔だ。


局長さんが説明をする。

「旧人類はプルトニュウムを使った大型発電所を各地に作っていたようなんだ。とは言っても最終戦争の前の話なんだけどね。しかしプルトニウムの半減期は長いからねまだ相当残っているはずなんだ。」

「最終戦争って1万年前の話なんでしょう?地球は破壊しつくされてほとんど記録が無いと習いましたけど。」

「そうだね、君も学校で学んだように、旧人類は放射能に弱かったし何万発もの原爆のせいで世界は破壊しつくされた。しかし、数体のアンドロイドは生き延びたんだ。この数体のアンドロイドたちがたくさんのアンドロイドを複製して、わずかに生き残った生物を放射能から保護し、この世界を再生させたんだよ。」


「たしか、プルトニウムは自然には存在しなくて、すべて旧人類がつくったんですよね。今はエネルギー源としてとても貴重なものなんだと聞いています。」

私がそう言うと、局長さんは うん・・うん・・と頷きながら私の話を聞いていたが、こんな話を始めたのだ。


「実はね、数年前に私はごみの中から66Jと書かれたヘルメットを見つけたんだ。そう、いつも被っているこのヘルメットだよ。」そう言ってヘルメットを叩いた。

そして続けた、


「このヘルメットの中に小さなチップが取り付けられていたんだ。もしかして1万年前のコンピューターで使っていたチップではないかと思ってね。あれこれ調べていたのだが、最近になって中のデータを取り出せたんだよ。」

「局長さん、それって凄くないですか? 絶対 表彰物ですよね!」

と私が言うと

「うん・・それがね、内容は当時の発電所や軍事施設の位置を示した地図データのようなんだ。もしそうならだよ、宝の山を示すデータかも知れないだろう。それは発表しない方が良いと思ってね。それでサリーを連れて探していたんだよ。」と言う。


「それで私をですか?・・・」っと局長さんを見ると

「君は信頼できる人物だしね、それにサリーは私を好きだろう?!」

と親しみを込めた目で私を見つめた。気持ちを見抜かれてた私は動揺を隠せず、

「はい、そいうです。私は局長さんを好きです。絶対裏切りません。」

とまるで兵隊のように緊張して、馬鹿みたいに言った。

局長さんはそんな私を見て優しく微笑みながら言った。

「私はそのデータを元にこの場所を探していたんだ。ここさえ分かれば、ここを起点として他の場所も特定しやすくなるんだ。そうだろう、サリー。」


もし局長さんの言う通りならとんでもない金額になるはずだ。


「でも、そんなに稼いでどうするんですか?」と私が聞くと、

「そうだなあ、まず私のこの年代物の体を最新のモデルに変えるよ。それからサリーの体も最新のカッコいいやつにしようや。それでね、最新型の船を買ってね、木星の衛星巡りに出かけようよ。サリーと一緒ならきっと楽しいぞ!」と恋人に語るように言う。

「私とですか!? いいんですか?!」と私、

「もちろんサリーと二人でだよ。その為にはまずこの下にあるプルトニウムの場所を突き止めようや。」と局長さんが言う。


局長さんが私に好意を持つなんて驚きだ。

私のような旧式で最低価格のアンドロイドに好意を持つなんて・・


「そうですね、突き止めましょう!」と私は簡易ハーネスを身につける。

「それじゃあ私について来なさい!」と局長さんが穴の中に降りていく。

私はワイヤーロープに体重をかけ、局長さんの後に続く。

私たちは暗い穴のなかを、降下装置を使って下へ下へと降りて行ったのだった。


私は 30サーリー 局長さんは 44ホリホー

私たちは旧式のアンドロイドだ。


この下には大昔の失われた何かが眠っているはずだ。

最終戦争以前の事は誰も知らない。

はっきりしているのは、人類は絶滅したということだけだ。


穴は深くどこまでも降りていく・・・




この話はSF・サリーとホリホー として再編集中です。







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