第2話
「おやっさん!? どうしたんですか!」
おやっさんは相当急いで来たらしく、息を切らしながら額から汗を流している。しかも、今日は小春日和とも言える天気だから相当暑いはずだ。
「どうしたもこうしたもない! ここ最近『怪異』がらみの事故が多発しているんだ!」
「!」
「どういう事ですか」
シスターはお茶を差し出しながらおやっさんに尋ねる。
「どうしてそうなったのかは分からない。それもある日突然だ。正直、現場は混乱している状態だ」
「じゃあ、おやっさんがここに来られたのは」
如月がそう言うと、おやっさんはシスターに一瞥してお茶を一飲みし「ああ」と頷いた。
「もしかしたらお前さんたちなら何か知っているんじゃない後思って来た次第だ」
そしてようやく一息付けたのか「ふぅ」と軽く息を吐く。
「それは……」
「つまり……」
瑞樹とシスターは小滝野顔を見合わせ、すぐにおやっさんの方を見たが……二人は『どういう事だ?』と声を揃えて首をひねる――。
「いや『どういう事』なのかは俺の方が聞きたいくらいなんだが?」
おやっさんはため息混じりに答える。
「いや、でもなぁ。その話だけ聞いても明確な理由がなぁ」
「ないんですか?」
「正直、ある場合とない場合があるから一概に言えないのよね」
「? どういう事なのですか」
「えっとねぇ――」
シスター曰く一年を通して『怪異』が出やすい時期というモノがあるらしく、その時期はどうしても『怪異』がらみの事故や事件が多くなってしまうらしい。
「一般的に二月から五月辺りがその傾向が強くあるが……」
「そうなんですか?」
如月はこういった『怪異』に多いも少ないもあまり関係ないと思っていたのだ。
「ああ。ちょうどその時期は入試や卒業、入学がある。後はそういった環境に慣れだしたタイミングも含まれるな」
「とは言っても、他の月と比べて……っていう程度の違いしかないけどね」
「なっ、なるほど」
それならば納得だ。要するに「人間関係が大きく動くタイミング」という時に増える傾向にあるという事なのだろう。
「まぁ、相手の晴れ舞台をつぶしたいっていう部分も意外に多い。何せ、負の感情だからな」
「……」
「そうなると、必然的に三月か四月は入ってくるな」
「二月が入っているのは……入試とバレンタインデーかしら」
サラリと答えたシスターに対し、瑞樹の肩が一瞬ピクリと動いた様に見えた。
「……」
どうやら男子にとって「バレンタインデー」とは、口では「興味ない」とか「気にしていない」と言いつつ、やっぱり気になるイベントなのだろう。
「まぁ、そうだな。正直、増えやすい時期だからだと俺も思っていたが……」
もちろん。おやっさんはその事をしていたのだろう。何せ瑞樹とは如月よりも長い付き合いだ。
「つまり、そういった事も踏まえて考えても明らかに被害件数が多いっつー事か」
瑞樹の問いかけにおやっさんは無言で頷く。
おやっさんから明確な件数を聞いたワケではないが、おやっさんの目の下には隈が出来ている辺り、相当だという事は如月も何となく分かった。
「つー事はやっぱり……」
一通りおやっさんの話を聞いた瑞樹は「ふー」と眺めの息を吐きながら自分の額に手を当てて何やら考え込む様な顔をした。
「――あいつの仕業……かな」
そう小さく呟く様に言った瞬間。如月の脳裏に「椎名」という名前が浮かんだ――。
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