第5話
「あの」
そんな中、おずおずと如月が手を挙げる。
「ん?」
「どうしたの?」
「そのイラストレーターの方が携わっていたゲームの事でちょっと気になる話を聞いた事がありまして」
「ほぉ」
「事件に関係があるかは分からないのですが」
「大丈夫だ。今は情報収集の段階だから、気になる事があったら言ってくれ」
瑞樹にそう言われ、緊張がほぐれた如月はホッと胸をなで下ろす。
実は、如月はそのイラストレーターをよく知っていた。正確に言うと、そのイラストレーターがキャラクターデザインを手がけたスマートフォンゲームのアプリを……だが。
「そのゲームを塾でやっている人も結構いて、私はあくまで人気のあるゲームという認識しかなかったのですが」
そのゲームは、いわゆる『プレイヤーは主人公になってゲーム内のキャラクターと疑似恋愛が出来る』と言うモノで、そのキャラクターたちはどれもイケメンだったと記憶している。
「ああ、それなら俺も知っている。だが、確かそのゲームは現在サービスを終了しているだろ?」
「はい」
そう、確かにそのゲームのサービスは終了している。そして、終了当初は色々な憶測が出てちょっとした炎上が起きていた……と言う事も如月の耳に入っている。
「実は、ゲームサービスの終了当初。たくさんある噂の中で一時それの理由がゲーム会社のせいだと言う噂が本当ではないかという話が流れまして……」
「ゲーム会社は……確か、元々は先月逮捕された花城グループ関連だったな」
しかし、数年前からグループを離れ、独自に運営しているとの事。
「ただ、どうしてそんな噂が流れたんだ?」
「えと。私はただ噂話を聞いただけなのですが、何でもそのゲーム会社がイラストレーターに対してパワハラをしていたせいでイラストレーターにそっぽを向かれたせいじゃないか……と」
この話はあくまで如月が聞いただけの話だ。決して証拠のある話ではない。
「なるほどな。それは確かに、無下に出来る話でもないな」
そうは言いつつ瑞樹は「だが」と続け――。
「それなら、恨みを買って事故に遭うのはそのゲーム会社の社長とか関係者にならねぇか?」
「そっ、そうですよね」
瑞樹の指摘に、如月は思わずシュンとしてしまう。
「バカ!」
「いっ!」
その様子を見ていたシスターに軽くはたかれた上で瑞樹は咎められた。
「いやだからな。無視は出来ねぇけど、ちょっとそこが疑問だっただけで……な?」
「はい、でも。余計な事を言ってしまったかな……と」
如月としては余計に話をややこしくしてしまった様に感じがしてしまっていたのだ。
「いや、その話を聞いて俄然やる気が出た。どうにもこの事故。コレだけで終わらない可能性が出て来たからな」
さっきまでどこか乗り気じゃなかったおやっさんはそう言って如月の方を見て「ありがとうな」と言って笑う。
「それに今の話が本当なら、自殺の話が出て来たのも納得が出来る。もう一度、再調査が必要な様だな」
どうやらやる気になったおやっさんは、そう言いつつも早く警察署に戻りたいのか、体は出口の方へと向かっている。
「分かった。ゲーム会社の方はおやっさんの方に任せていいか?」
瑞樹がそう聞くと、おやっさんは「おう、何か分かったら連絡してくれ。こっちも連絡する」と言って教会を出て行った――。
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