第6話
そうしておやっさんと別れた後。如月の見送り……という名目の上で事故現場とされている場所へと、如月たちは赴いた。
「……」
「ふぅん? ここから落ちたってワケなのね?」
シスターは興味深そうに下の川をのぞき込む。
「ああ、どうやらそうらしいな」
そう言いながらアイパッドを片手に瑞樹は辺りを見渡す。
「でも、ここなら誰か見ていそうですよね。マンションもありますし」
「そうね」
「事故が起きたとされているのは真夜中。ただ、マンションの住人の中にはその時間でも起きているヤツもいそうではあるが……果たして外の景色を見たかどうか」
「それに、確かこの辺りの外灯ってあまり明かりが強くなかったはずなのよね。果たして見えたかどうか」
「はい。そもそもこの人なのかどうかも……遠目では判断出来ないかも知れません」
明かりが乏しい上に、それなりに距離があれば、よっぽど目立つ格好でない限りその人物と特製するのは難しいだろう。
「それに、どうやらこのイラストレーターは表立って活動をしていたワケじゃねぇみてぇだしな」
「? どういう事?」
「簡単に言うと、顔出ししてねぇって事だ」
「ああ、つまり。作品は有名だけど、どんな人が書いているのかって言う事は分からないって事ね」
シスターは納得した様に頷く。
「仮に事件だったとしたら、顔見知りか誰でも良かったって言う無差別か」
「事故かって聞かれたら、この場所は正直微妙ね。如月ちゃんで胸の辺りまで手すりがあるから」
そう言いながらシスターは如月の方を見て確認する。
「おい、なんで俺の方を見てちょっと残念そうな顔をしたんだ。姉貴」
しかし、ここでそれに反応したのは瑞樹だ。
「え?」
「え? じゃねぇよ。明らかに俺と如月を比べていたじゃねぇか!」
「そんな、比べてなんていないわよ。ただ、あ。その靴がなかったら如月ちゃんより小さいのねって思っただけで」
「やっぱり比べてんじゃねぇか!」
瑞樹はシスターの素直な感想に憤慨した。
ただ、瑞樹の名誉のために言うと、如月と瑞樹の身長の差はほぼない。しかも、如月は一般的な女子高生の身長より高い。
そして、明日香は如月よりも頭一個分高いのだが……それをまたシスターに指摘されて瑞樹が怒るのは……また別の話だ。
「そもそも、あなたがそんな厚底の靴を履くからでしょ? 自分の身長が低いですよってアピールしているモノじゃない」
「俺はコレを気に入っているだけだ!」
まさかこんなところで
「はぁ。でもまぁ、確かにこの状況なら確かに事故として処理するにはいささか強引になるな」
「お酒にでも酔っていたのかしら?」
「どうだろうな。そこら辺はおやっさんが調べてくれているゲーム会社の人間とか交流関係で分かる事だろうけど。これなら、自殺の線の方が怪しくなるな」
「……」
亡くなったとされているイラストレーターが関わったゲームのサービスが終わったのはつい最近の話。だからこそ、今回の一件が自殺の可能性が色濃くなった。
「何にせよ。慎重且つ迅速に……だな。もしかすると他に犠牲者が出るかも知れねぇし」
「そうね。あ、そのゲームってキャラクターデザインはその人だけなの?」
シスターが思い出したように尋ねる。
「どうやらそうみてぇだな。しかも、評判も良かっただけに、サービス終了には疑問の声が上がっていたらしい」
アイパッドを見ながら説明をする瑞樹に、如月もゲーム終了が発表された後に悲しんだり憤っていたりしていた人たちが塾にいた光景を思い出していた――。
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