第2話 ペット会議の行方

 季節は秋に入り、月日は10月に入る……


 夏の暑さもすっかり落ち着いて、朝晩が過ごしやすく成った。

 仕事にも精が出ると言いたいが、俺は仕事が大好き人間では無い。

 今晩も、仕事帰りに立ち寄ったスーパーで買った惣菜品や、冷凍食品で晩酌を1人で楽しんで居ると“ふっと”思い出す。


(……そう言えば、あれからペットの進展は聞かないな)

(聞かないと言う事は、まだペットの話は、纏まっていないのかも知れないな?)


 先月里帰りをした時、ペットを飼う為の話し合いが家族会議で行われた。

 母さん(小春)が勝手に名称を付けて『真田家ペット会議』の名称で行われた。


 宮子は小鳥、咲子はうさぎ、真央はネコと、本当に三者三様で自分が飼いたい候補を出した。

 案の定、話は纏まらず、最後は宮子の提案で、小鳥・うさぎ・ネコが見る事が出来るペットショップ巡りをして、最終的な答えを出す流れに成った。


(母さんはペットを飼うのは内心反対だったし、立ち消えにさせたのかも知れんな……)


 母さんは金銭面の関係で、ペットを飼うのは反対の立場で有った。

 もし飼う事に成ったら、俺の酒の量を減らすと、脅しまで母さんは掛けて来た。


(近況を聞いて見たい気はするが、決まって無かったら無意味だしな…)

(まぁ、今月の里帰りの時までには進展が有るだろう…)


 俺はそう思いながら、1人での晩酌を続けた……


 ……


 しばらく時が経ったある日。


 今日も1人で、単身赴任先のアパートで晩酌をしていると、電話の着信音が鳴る。


『♪~~~』


「?」

「母さんからか」


 この時間に電話を掛けてくるのは、母さんしか居ない。

 咲子の場合だったら、SNSで連絡が来るし、それに電話を掛けられても困る。


 俺の中では咲子とは、健全な親子関係を保ちたいからだ。

 それに近況を話し合っても、意味が無い訳では無いが、俺と話す位なら早く異性を見付けて欲しい……

 仕事の電話も、この時間帯にはまず掛かって来ない。


『ピッ』


「はい。もし、もし、……」


「あっ、お父さん!」

「私だよ~~。こんばんは~~♪」


 陽気な声で、相手は直ぐに母さんと分かる。


「こんばんは。母さん!」

「ペットの候補でも決まったか!」


 母さんとも普段は、SNSで連絡を取り合っているので、母さんが電話を掛ける来る時は大事な話や連絡事が中心に成る。

 俺は流れ的にペット関連だと感じ、そう母さんに話す。


「あっ、うん……。その事なんだけど……」


 先程まで陽気だった母さんのトーンが急に下がる!

 これは、何か有ったに違いない。


「どうした、母さん!?」

「また、咲子が真央に“いちゃもん”でも付けたか?」


 俺は咲子絡みだと思い、そう母さんに話すが……


「ううん。咲子は真央に“いちゃもん”は付けてないよ…」

「週末を中心に、みんなでペットショップ巡りをして、みんなの意見を擦り合わせていたけど……」


「いたけど……?」


 電話向こう母さんの様子が“あからさま”におかしい!

 普段なら言いにくい事でも“ずばずば”話す母さんなのに。


「宮子も実際にうさぎやネコを見て、飼いたそうな表情をしていたし、あれだけ“うさぎ”を飼いたがっていた咲子も、小鳥やネコに興味が移り掛けていたの!」

「それで、今出ている3つの候補を、2つにしようかなとみんなと話していたの」


「ふん、ふん」

「話を聞く限りでは順調そうだね」


「でね……ここからが本題なの」

「真央の場合は、小鳥やうさぎを見ても、ネコを飼いたい気持ちは変わらなかった。一辺倒と言うのかな?」


「真央のネコの対する情熱は凄いからな!」

「あの宮子が、真央のネコプレゼンに拍手する位だからな」


「そうなのよ!」

「特に最近に成ってからは、ネコを飼って居る、友達の菜子ちゃんの家に“しょっちゅう”行っているのよ」


「私は少し注意したのだけど、真央は『今度、お父さんが帰ってきた時、ネコの魅力を更に伝える為に、菜子ちゃんの家のネコを色々な場面から撮らせて貰っている!』と言って、言う事聞かないんだよ!」


「今までに、見た事無い行動力だな…。真央の奴…」


「えぇ……」

「引っ込み思案だった真央が、菜子ちゃんと友達に成ってからは、凄く活発に成ってお母さんとしても嬉しかったのだけど、その活発さが原因で、約1週間前に事件が起きてしまったの……」


「事件!?」


 母さんの口調から、真央が何かの問題に巻き込まれたのは間違いない。

 一体、何が起きたのだ!!


 ……

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