人質…。

傷だらけのラブを……

小川はフェラーリの助手席へと…ゆっくり座らせた。

鈴木が、

『頼んだぞ!小川…。』

と一言かけた。そのまま鈴木は、会長との会食の為に…白いベンツを飛ばした。

小川が、ラブちゃん?と声をかけると……

『俺、運転荒いから……シートベルト付けるよ』

小川が、ラブのシートベルトをカチャカチャと締め出すと……


ラブは急に……涙を流した。小川は見て見ぬ降りをしていたが……

(こりゃ、アイツ……大変な女性をモノにしたな…)


小川が、『ラブちゃん?何か飲むか?遠慮は要らないよ!鈴木とは…昔からの腐れ縁なんだし…俺も、ラブちゃんの顔見たかったし…。こんな時だけど、アイツを信じてやってくれるかな…?』


『いざというときのアイツ、すげーから。(笑)

だから…大丈夫としか、言えないけど……俺ら、経営陣はね?こう喧嘩を売られると…叩き潰したくなるんだよな…? 』


任せろ!なっ。

小川は、鈴木の用意したマンションまで、足取りが掴めない様に、

複雑な道を使っていた。


マンションまで着くと…俺、着いててやろうか?と小川が気を配った。

ラブは、鈴木を待つから…大丈夫。

助けてくれて…ありがとう。と…


まだショック状態だと…言う事に…小川はラブちゃん一人じゃ、また危険な目に合うだろう。


念には念のため…か。

小川は、ラブに飲みモノを買って来るから…先に部屋に入ってて。


絶対に鍵を開けちゃダメだから…。 と言い残して真っ赤なフェラーリは、走り去って行った。


小川が、鈴木に電話を入れると…『どうだ?』と返事がきた。


『うん……ちょっと俺見てられねーな。正直言うとさ。まぁ会食済んだら、こっちのマンションへ直帰してくれや、やっぱ心配だわ。さすがの俺でも…。』

『…………そっか、』


『今、ラブちゃんの好きそうな飲みモノを買いに来てる途中だ。お前も……黙ってるなんて、たいがいだぞ!まぁ真面目になれよ?まがりなりにも経営者って立場があんだからよ?数千いや、数万人のトップだろ?』


『…………悪かったよ…小川、すまんな……』


じゃあまたな…?と電話を切った小川は、

近場のコンビニに真っ赤なフェラーリをドンと…止めて…店内に入って行った。

小川は値段も見ずに、ラブが好みそうなチョコレート等も…カゴに

ポイポイいれていた。


会計をカードで終わらすと…荷物片手に…フェラーリに乗った。

『おし!いくか。』

ブォンブォンっとエンジンを吹かすと…鈴木のマンションに逆戻りした。


小川は気を抜いていた。さすがに…もう逮捕されてるよな…?

ラジオ番組を流してみると…ラブの事件が、


少したってから流れていた。『犯人逃走中…。』

と…。

ん?小川は聞き間違いかと思い、さらに他局へとラジオを変えた。


小川は、鈴木とすれ違った住人が、タイミング良く…車で出払ったのを…警官と話をしながら顔を見ようとした時の事を…思い出していた。


あの住人……無駄にイライラしてたな…。小川の予感が、嫌な方へと…

思考がよぎる………

何かを思い出したかの様に、小川はスピードをあげた。


鈴木のマンションに着き部屋へと向かう途中…嫌な予感が確実に変わった。

ほんの5分の留守中に、ラブは、人質にされているってのか?


『アイツはヤバイ!』ととっさにドアノブに、ゆっくりと手をかけた。

数分の間に……例の野郎に連れ出されたのか?


または違う人間を使ったか?小川は思いきって…部屋を開けると……


ラブは居なくなっていた。部屋の中を荒らされた形跡もあり……クソッ!と小川は鈴木が接待中という事態もあり…。


クソッ!ブタ野郎!と

温厚な小川でさえも…

八方塞がりの状況にイラつき始めた。

『ラブちゃんを一人にするんじゃなかった。』


と突然考えが小川によぎる…。あそこのマンションに執着があるとすれば、立てこもりかよ?


マジか?小川はちょっと信じれない位、驚いていた。と同時に……鈴木が羨ましくなった。


そこまで惚れてんのな?と思いつつフェラーリはマンション目指して…飛ばしていた。


一階に着くと…真っ赤なフェラーリを見付けるなり、誰かが叫んでいた。


良く耳を澄ますと……

『小川さんっ!小川さんっ!助けて…』

と女性の叫び声がする。上を向いて…小川は固まった。


無人になった無警備の状態で…誰か分からない部屋に和希がラブを人質に立てこもっていた。


パトカーが数台下に着くと…小川は警官に、

『一体…どうなってんですか!?』と…聞く前に…映像をユーチューブに流したそうだ。


止めても無駄だと…先ほど、署に脅迫電話が、

『嘘だろ?………』


小川は鈴木からのタイミングの良い着信を取るなり、ヤバイぞ!お前!


と直帰の予定が変わったいきさつを聞いた鈴木は、会長を目の前にして身動きが、

取れなかったのである。

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