第3話「香奈姉」
12月1日 日曜日 曇り。
時刻は9:30になろうといていた頃、僕は眠い目をこすりながら階段を下っていた。
「あら、やっと起きたのね。なぁに?また朝までゲーム?」
「あぁ…あいつらがなかなか…放してくれなくて…ふあぁぁ…」
あくびをしながらダイニングの椅子に座ると、温かいご飯の入った茶碗が目の前に置かれた。
「あ…ありがと…」
半分程度しか開いていない目で、僕は目の前に用意された朝食を少しづつ口に運んだ。
母はシンクで洗い物の続きを始めると、背中越しに僕に話しかけてきた。
「そうそう。あんた、明日ちょっとお願いされてくれる?」
「ん…なに?」
半分聞いていないような返事を背後から聞いた母は、エプロンでその手を拭いて僕の対面に座った。
「明日の月曜の午後にね、伯父さんの病院に行って欲しいのよ」
「ん~…この間行ったばかりじゃん…なんで?」
そう言って僕は味噌汁をすすった。
「お隣の香奈ちゃんが会いたいと言っててね。なら、あんたに病院案内させるって言っといたのよ」
食事を進める手がピタっと止まり、僕は少し目が覚めた。
「なんで僕が。つうか香奈姉だって一人で行けるだろ、子供じゃないんだから」
香奈姉とは隣に住んでいた幼馴染のお姉さんだ。
年齢は4つ上で、小さい頃はよく面倒を見てもらっていた。
”住んでいた”というのは、今年の初めに結婚して、旦那さんと新しい家で新婚生活を始めたためだ。
春先に妊娠したとのことで、数カ月前から実家の方にいるらしい。
「香奈ちゃんが妊婦なのは知ってるでしょ?身重なんだから誰かが一緒に付いててあげなきゃ」
「だからって、なんで僕が?」
「昔ずいぶんと香奈ちゃんにはお世話になってるんだから、こういったところでしっかりと御礼をしておきな」
「そんな昔のこと覚えてねぇよ」
「あんた…この間、限定ガチャだか何だかのためにお小遣い前借りさせてあげたの忘れたの?」
「ぐ…わかったよ…」
「じゃ、お願いね」
弱みをチラつかせられいまいち納得ができなかったが、よくよく考えれば別にそんなに嫌がることでもないか、
と思い直し、僕は再び残りの朝食を食べ始めた。
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