7
蛍丘駅に降り立った僕は、駅前のバス停に小走りで向かった。市立病院経由。次は20分後。……バスで5分の距離なら歩いても大した距離じゃないだろう。待つ方がもどかしい。駅前の案内図を見ると、道なりに行けば病院は見えるはず。そのまま小走りで病院に向かう。暑い。汗がまた垂れて地面に落ちる。気にするもんか。
病院の入口の自動ドアで一度立ち止まって、息を整えてから、中に入る。
「ユキナ――門倉悠樹奈さんの病室は、どこですか?」
本当にここにいるんだろうか。僕は受付に訊く。
「門倉さんですね、ちょっと待って下さい――308号室です」
――実はこの期に及んでも半信半疑だった。でも、受付の女の人は、ごく当たり前のように、ユキナのいる病室の番号を告げた。
だから僕は、階段を一段飛ばしで上がる。病院で騒いじゃいけないけど、騒がしくないぎりぎりで急いで病室に向かう。
扉を開けると。
ユキナはそこに眠っていた。
さっき会った時より、日に当たってないせいか色白で、痩せた感じがして。布団の奥からは何本か管が出ていて、ベッドの横の機械に繋がっていた。
ぴっ、ぴっ、と電子音だけが響いている。
「ゆーちゃん」
枕元で、僕は呼びかけた。
夢の世界で会えるような奇跡があるのなら。現実にだって、このくらいの出来過ぎた話はあっていいはずだから。
眠っていたユキナのまぶたがゆっくりと開いて、僕の方を見た。
「――アキくん?」
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