第26話:生まれたまんまの姿を見られてもかまいません

***


 放課後の文芸部室で堅田かただと二人っきり。


御堂みどう君になら、生まれたまんまの姿を見られてもかまいません。恥ずかしいですけど……」


 堅田かただは頬がほんのり上気した顔で俺を見上げた。

 心なしか息が荒い。


「ホントにいいのか?」

「はい……」


 真面目女子にこんな恥ずかしいことをさせようとして、ホントにいいのだろうか。

 俺の心に迷いが生じる。


 だけど心の中から湧きあがる欲望が叫ぶ。

 『見たい。見たい。見せてくれっ!』


 そして堅田は、丸いモノが二つ繋がっているそれ・・に両手をかけ──すっと外した

 顏は真っ赤に紅潮し、興奮状態で「ふぅっ、ふぅっ」と、さっきより更に荒い息使い。


 よっぽど恥ずかしいのだろう。

 でも、堅田が見せるそんな羞恥の姿が、彼女を一層可愛く見せる。


 ──堅田って……やっぱめっちゃ綺麗だ。可愛い。


 いくら言葉を紡いでも言い尽くせない、そんなもどかしさが俺を包む。



***


 それは、今日の教室でのできごとがきっかけだった。

 堅田のメガネが吹っ飛んで、クラスメイト全員に素顔を晒してしまったこと。


 放課後になって文芸部室に来ると、堅田は中央のテーブルで頬杖をついて座っていた。


「はぁ……」


 落ち込んだ顔でため息をついてる。


「どうした?」

「あ、御堂君。今日、みんなに顔を見られちゃいましたから……」


 自習時間での出来事を、まだ気に病んでるのか。


「そんなに素顔を見られるのが恥ずかしいのか?」

「はい」

「なんで?」

「だって地味でブスだから」

「そんなことないよ。みんなだってめちゃくちゃ可愛いって言ってたじゃん」

「でも……鼻はちっちゃいし目の形は変だし」


 客観的に見たら全然そんなことはないのに。

 めちゃくちゃ可愛いのに。

 堅田ってえらいネガティブだな。


「小学生の頃にクラスの男子に『変な顔』って言われてから、ずっと顔を隠すようになったのです」

「そっか。でもそれは、その男子に見る目がなかった、ってことだな」

「ずっとメガネで顔を隠して生活してきたから、今ではメガネを外した顔を見られるのがすごく恥ずかしいのです。生まれたまんまの姿を見られる気分って言うか……」

「そっか……」


 それはなんとなく、わからないでもない。

 でもこんなに可愛い女の子が顔を隠してるなんて、それはもう社会的損失だ。

 俺だって何度でも見たい。可愛い女の子の顔は、何度見たっていいものだ。

 俺を眼福に浸らせてくれ。


「もったいないな……」

「なにがですか?」

「いや、堅田ってそんなに可愛いのに、それを見れないのは世の男子にとってかなりの損失だ」

「そんなことありませんって」

「いや、GDPに換算すると約5兆円の経済的損失だな」

「へ?」


 堅田がきょとんとしてる。

 やらかしてしまった。

 やっぱ俺はボケるべきじゃない。

 自分でもレベルの低いボケだとわかる。

 ツッコミに専念すべきなのだ。


 従姉弟いとこの名言『ボケるな。ツッコめ』を守らなかったせいだ。激しく反省。


 だけどきょとんとしてた堅田は、突然プッと吹き出した。


「ありがとうございます。御堂君は私を励まそうとしてくれてるのですね」


 あ、堅田がいい方に誤解してくれた。


「いや、そうじゃなくて、ホントにもったいないと思ってるんだよ」

「ごまかさなくていいですよ」

「ごまかしてなんかないって」

「じゃあ御堂君は、ホントに私の素顔なんか見たいですか?」

「もちろんんっっっ!」

「ふぇっ……」


 しまった。気持ちが激しくダダ洩れした。

 堅田は俺の勢いに驚いてのけぞってる。


「あ、ごめん」

「わかりました。御堂君がそこまで言ってくれるなら……お見せしましょうか?」

「いいのかっ!?」

「はい」


 でも堅田は真っ赤になってる。

 素顔を見せるのがよっぽど恥ずかしいんだな。


「あ、堅田。恥ずかしいなら無理すんな」

「いえ……御堂みどう君になら、生まれたまんまの姿を見られてもかまいません。恥ずかしいですけど……」


 堅田かただは頬がほんのり上気した顔で俺を見上げた。

 心なしか息が荒い。


「ホントにいいのか?」

「はい……」


 そして堅田は、丸いモノが二つ繋がっているモノ──メガネに両手をかけ、すっと外した

 顏は真っ赤に紅潮し、興奮状態で「ふぅっ、ふぅっ」と、さっきより更に荒い息使い。


 よっぽど恥ずかしいのだろう。

 でも、堅田が見せるそんな羞恥の姿が、彼女を一層可愛く見せる。


 ──堅田って……やっぱめっちゃ綺麗だ。可愛い。


 ぱっちりした目。鼻筋が通った小顔。

 美人というより可愛い美少女系。


「御堂君……そんなにじっと見つめないでください……恥ずかしい……です」

「だってめっちゃ可愛いんだもん」

「あふぅ……羞恥プレイですか?」

「違うし」


 事実と違うことはきっぱりと否定するに限る。

 でも可愛いな。

 いつまでも見ていられる。


 あ……堅田の顔をずっと見ていたら、白い百合の髪飾りが目に入った。

 お姉さんからプレゼントされたという髪飾り。

 盗聴器疑惑のヤツだ。


 手を伸ばしてそれに触れる。

 掴んで軽く引っ張ると、付け方が甘かったのか、するりと髪から抜けた。堅田の前髪がはらりとほどける。


 以前触れた時も感じたけど、この髪飾りは思ったよりも厚みがある。

 裏返してみると、マイクの集音部分のような穴がポツポツとあった。普通の髪飾りにしては違和感がある。

 本物の盗聴器なんて見たことはないし、こういうタイプの物が存在するのかは知らない。

 だけど極めて怪しいということはわかった。


「御堂君のエッチ……」

「え?」

「髪飾りを外されてドキッとしました」


 乱れ髪が堅田の火照った顔にかかっている。


 なにこれ?

 いつもピチッとまとめた髪の堅田しか見たことないから。

 髪が乱れた美少女の表情ってすっげえエロい。


「御堂君って、こうやって女の子を少しずつ乱していくのですね」

「あ、いや……」

「さすがテクニシャンです」

「いや違うし!」

「いいのですよ。もっと私を……乱してください」


 やば。

 堅田のエロスイッチを入れてしまったようだ。

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