Epilogue



「俺は強くなりたい、色々出来るようになりたい」


クリスティアの家で、ブランはそう言った。

何故か、理由を問われると


「俺は何も出来てないから。俺より強い奴には勝てないし、でも何かを手伝えるほど賢くない」


ブランは、自身の無力を嘆いた。

群れから出て得られた自由と引き換えに、その環境で生き抜く力が必要になる。

それがブランには何も無い。


「それに、クリスティアが目指すものを俺も手伝わせてほしいから」

「・・・ありがとう」


そんな風に言ってくれる誰かは今までクリスティアには居なかった。

案外近くに、同士はいたのだろう。

散々な目にはあったが、しかしこの出会いは運命的という他ない。


そして─────


「やっほー!お邪魔しまーす!!」

「邪魔するなら帰れー」

「はーい」

「いや帰ろうとするな」


騒がしく音を立ててやってきた、蒼空鈴。

その付き添いで来たのは紅士郎。

鈴はクリスティアがちゃんと健康に暮らせているか押しかける。

なにせクリスティアは大変ズボラなため、定期的に訪れないと食事もまともにとろうとしないのだ。


ただ、彼女らはそれはそれとして友人である。

用事もなく押しかける、というのも有り得なくはない。


・・・蒼空鈴、紅士郎。

二人共に、戦場から離れた者たち。

片方は癒しを、片方は平穏を。

どちらも戦いを良しとしない者たち。


ジャイロは言った。

"同志はいる。賭けてもいい"と。

内心クリスティアは苦笑する。何が賭けだ、片峰夫妻から話を聞いて確証を得ていただけだろう、と。


「ああそうだ。ちょうど良かった」

「どうした」

「気になるものがあったんだ」


星屑の国は、あくまで中立国。

戦いを止めるための国ではない。

だから飽くまで、これは彼女らの我儘。

いつか戦争が止まる、その一手を打ち次世代に繋ぐために考え続けるものたち。


「この国、これは─────」


クリスティアが拾った情報。

それを他のもの達が見る。


「最果ての星・・・気にならない?」


いつか、平和な日々が訪れるのを願い行動する。

そんな彼女らの一日は、この場所で始まるのだった。

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宝石と狼と逃避行 @axlglint_josyou

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