第153話 傲慢の欠片
魔力が膨れ上がるのを感じ取って咄嗟に魔法を使ったけど悪手だったかもしれないね。
カトレアちゃんの決闘を見届けた私ことサクラ・トレイルは様子のおかしいローレルと対峙している。私の
「サクラ? 何が起きてるの?」
近くから警戒した様子のカトレアちゃんの声が聞こえる。
「
「!」
さっきまでのダークノヴァよりも桁違いに威力が増した今の魔法、そして急激に高まった魔力。これらから導き出される結論はずばり!
「ローレンの意識が傲慢の残滓に取り込まれたか」
「私のセリフを奪わないで!?」
「は? 何言ってるんだ?」
空気の読めないライアスに良いところを持っていかれたけどそういうことだろう。カトレアちゃんに吹き飛ばされて気を失ったせいなのか一定の時間が経ったからなのか、多分前者が理由かな。
「
「あっ、
傲慢の欠片が私の魔法を模倣してきたのに慌てて対処する。そうだよね、意識の主導権が傲慢の欠片に変わったのなら
「ダークノヴァ、焔、狐火」
「げ。カトレア!」
「全部は無理よ! 狐火」
「狐火」
傲慢の欠片がカトレアちゃんの使った狐火を唯のファイアボールではなく小さなダークノヴァと焔魔法で作って攻撃してきた。カトレアちゃんの狐火と私が複製した狐火で対抗する。
「危ねぇ!」
相殺されなかった幻影や本物のファイアボールが降り注ぐ。躱せる物量まで減ったおかげで問題ないけど油断は出来ないね。
「サクラ! あまり魔法を使うなよ!」
「ダメなの? もう全ての枠埋まったでしょ?」
元々模倣していた四つに今使った三つの魔法で
「七つストックできるってだけだ。より良い魔法を見たら使える魔法を一つ捨てて上書きしてくる」
「おおぅ」
それは厄介な。こちらの切れる手札は狐火、焔魔法、
炎の雨で蒸気が吹き飛び視界がクリアになったため一度集まる。
「サクラ。絶対に
「もう遅いよ」
カトレアちゃんの言葉に苦笑する。さっき狐火使うために
「手がつけられなくなるじゃない!」
「大丈夫そうだよ? 絶対とは言わないけどさ」
私の
「ライアス。どうやって傲慢の欠片を倒したの?」
「…………だ」
「何?」
「ゴリ押しだよ! 魔法使わずに力だけで制圧したんだ」
「うっわ脳筋ここに極まれり」
「それが最善だったんだよ」
声が小さかったから聞き返したら力こそパワーな解決方法を言われた。考え方も間違ってないと思うし恥ずかしがること無いと思うんだけどな。
「恥ずかしがってない。バカにされると思っただけだ」
「そんなことしないよ!?」
「してたわよ」
むぅ、バカにしたんじゃなくておちょくっただけなのに。
「どうする? 脳筋戦法で行くか?」
襲いかかる植物や炎を迎撃しつつライアスが聞いてくる。
「どうしようかな。……ライアスかレオン、あいつが魔法を模倣するまでの時間って分かる?」
「どうだろうな。即模倣だとは思わないが……」
「じゃあ、
「どうだろうな。俺らが
ふむ、それもそうか。でも気付いてない私の魔法を模倣してないことを考えるとセレスの過程を飛ばして答えを得る権能に気付かなかったせいで真似出来なかった可能性が高いと思うんだよね。
魔法を誤認させれば模倣されない? ……可能性は高いと思う。
「一つ考えがあるんだけど……」
―――
私が一人飛び出して力押しをする。氷華で斬りかかり、いつもより鈍い体を気合いで動かす。ローレンが飛ばしてきた羽根も全て叩き落とす事はできず身体に傷が付く。回復魔法を模倣させる訳にはいかないため光魔法を使うこともせずに攻撃の手を止めない。
少しして劣勢になり防御に比重を置いたカウンター戦法に変えていく。これならわざわざ私のステータスを奪おうと考えないだろう。
「ウゴキガにぶってイルぞ。サッサとシンダラどうダ?」
「うるさいよ。まだまだ戦えるからね!」
コイツ話せたのか……。そういえば嫉妬の欠片も話をしていたね。
途中途中で混ぜてくる焔魔法や氷魔法を相殺して重症を負わないように追い詰められていく。……そろそろ限界が近いけどまだかな?
「サクラ! 避けろ」
「待ってました!!」
ライアスの合図で横に避ける。
「ガッ!」
カトレアちゃんとライアスが作った特大のファイアボールが傲慢の欠片に直撃して辺り一帯が熱気に包まれる。レオンが回復してくれるのを確認しつつ宣言する。
「今のは炎魔法ではない! 火魔法だ!」
「「…………」」
「ご、ごめん」
三人に何言ってるんだコイツって目で見られた……。ぐすん。
煙が晴れてきたね。あ! そうだ。
「やったか? あたっ」
「わざわざフラグ立てるんじゃない!」
いやいやあの爆発に巻き込まれて無事なわけがないでしょう。なんて心の中でフラグを積み上げつつ煙が晴れるのを待つとボロボロになりつつも生き延びた傲慢の欠片が私のことを呆れたような目で見ていた。
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